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目的を見失わない瞳

肉と骨の出汁が野菜にも染みて、とても美味しい鍋になった。

その日の夜は僕と浅田二人でその鍋を腹いっぱい食べて、そして、五右衛門風呂を沸かした。

僕は五右衛門風呂などテレビでしか見た事がなかった。

浅田は手際よく薪を焚いて僕にやり方を教えくれた。

しかし、この五右衛門風呂が厄介だった。

最初に浅田が火の番をして僕を風呂に入れてくれたが、その後僕が風呂を上がってから浅田が風呂に入る為に僕が火の番をする事になる。

風呂に入って体を綺麗にして、そして汗臭い臭いも取れたのに、火の番をするとまたと煤の濃い臭気が体にこびり付いてしまった。

浅田はそれを見越して、最初に火の番を買って出たのだ。

 僕が風呂から出てきた浅田を睨むと、浅田は悪そうな顔で笑う。

僕はそれが無性に腹立たしかった。

 夜は、互いに以前よりも布団を近く敷いた。

浅田も僕も 互いに心を許し始めている。

開いた襖を隔てて、およそ50センチ程度の距離離れている。

初日は3メートルぐらい開いていた気がする。

「お前、ずっとここに居ないか」

浅田がそんな事を言った。

「ずっとって、どうせ僕はもう帰れないんでしょ?」

「あ、そ、そうだな、あっはっはっは」

浅田は誤魔化すようにわざとらしく笑って、布団を引っ被って向こうを向いてしまった。

僕は少し不審に思いながらも、布団を被って眠りに付いた。

 朝、目を覚ますと、浅田が庭に立って洗濯物の干している。

見ているとそれは昨日のイノシシ狩りで血染めになった作務衣だった。

血は綺麗に洗い落とされて、すっきりとしている。

浅田は僕が目を覚ました事に気が付いて優しい声をかけて来た。

「お前、筋肉痛で辛いだろ、今日は一日のんびりしよう、昨日の肉もまだ沢山あるしな」

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