鍋
地面に夥しい量のイノシシの血が流れ出す。
しかし、浅田はそれをまったく気にかけない。
浅田自身のズボンにも血が大量に染み込んでいた。
「ちょ、ちょっと!!」
「なんだ?」
浅田は立ち止まって、イノシシを持ち直しながら答える。
「これ、血がすごく垂れてるんだけど、いいの?」
浅田は何て事は無いように答える。
「いいんだ、血なら土に返る」
「そ、そうなの?」
僕はまったく納得できなかった。
浅田が歩いた後が、殺人現場のようになっている。
しかし、浅田が良いというのなら良いのだろうと僕は考えてそれ以上は聞かなかった。
家に帰ると、浅田は庭でイノシシを手早く解体する。
前足と後ろ足を、強化した刀技で切り落とし、短刀で地道に皮を剥いで行く。
そして腹を割いて内臓を取り出し、そのあとブロック毎の肉に分けた。
浅田の綺麗な顔には、血が塗りたくられたようにこびり付いていた。
しかし浅田はそれも気にしない。
「今日は鍋だぞ~♪ 鍋だ~♪ 鍋だ♪」
と自作の歌を歌っている。
浅田は外にある流しで顔と手と足を洗って、血のこびりついた作務衣をそこにつけて、そして下着姿で家の中に入ってきた。
完全に血や泥の汚れが落ちては居なかったが、浅田はそれも気にしていない。
壁にかけてあった淡緑色の浴衣を羽織り、手早く腰紐だけ締めた。
浅田は台所で野菜をちょうど良い大きさに切って、鍋に詰める。
イノシシの肉と、骨も入れて、そして薪で火をくべて長時間煮た。




