初めての狩猟
「ん? 不思議そうな顔してるな、なぁに、初めてで1キロ走れれば十分さ」
とても嬉しそうに優しく笑って、座り込む僕の頭を掌で軽く叩いてくる。
まるで僕があやされる子供のようだった。
「よし今日はイノシシを食うぞ、猟に出よう」
僕はその言葉を聞いて背筋が凍った。
この疲弊した体でイノシシ狩りに行くのは相当辛い。
死んでしまうかも知れない。
今日はもう一日中寝転がって居たかった。
「大丈夫だ、お前は見てるだけで良い、私が獲る所を見てろ」
僕はそう言われて、仕方なく頷いた。
僕と浅田は一度家に帰って装備を整える。
僕はどうすれば良いのか分からないのでとりあえず普段着に着替えた。
実家から着て来た一張羅だ。
浅田は濃い紺色の作務衣のような服を着て、腰に帯を巻き、刀を差す。
どうやら浅田は刀でイノシシを狩るようだ。
考えてみれば能力で狩猟をするのは楽しいのかもしれない。
今までまったくそんな事は考えなかった。
しかし、今日は著しく体力が消耗しているので大人しく見ているだけにする。
心の中で決めると、浅田の声がした。
「行くぞ」
里を出て、少し歩いてやってきたのは、登山道も何も無い藪の斜面。
浅田はそこを慣れた手つきで上って行く。
僕も何とか浅田を見失わないように付いて行くが、徐々に距離を離されて行った。
もう少しで浅田がどこにいるか分からなくなる、という所で浅田は動きを止める。




