前を見つめる横顔
僕はその日の夜、布団に寝転がりながら考えていた。
破魔の仕組みを知った今、浅田を倒す事は簡単なんじゃないだろうか。
能力に熱意を込めて、感情を乗せて発動させれば、浅田はそれを無効化する事はできないはずだ。
しかし、2日一緒に居ただけなのに、もう浅田の事を殴りたいとか、肉を抉りたいとか、そういう事を思わなくなっている。
浅田は嫌味のない、真っ直ぐな人間だ。
少し一緒に居ただけでそれを明確に感じ取る事ができた。
浅田の実直さは本物だ。
僕をここへ連れてきたのも何か、仕方が無い理由があったんじゃないかと思う。
正直者の浅田には楽しく生きていてほしい。
そんな事を考えながら、いつのまにか僕は眠りに落ちていた。
次の日、僕が目を覚ますと、少し開いた雨戸の向こうで、浅田が木刀を握って素振りをしていた。
一歩進んで、力強く一振り。一歩下がって力強く一振り。
また一歩進んで一振り。
甚平の半ズボンに、生地が薄くて明らかに透けているランニングを着て、一心に素振りをしている。
正面を見つめる真っ直ぐな横顔がとても綺麗で、流れる汗が輝いて見えた。
身のこなしが若干、鈍く、能力を使っていない事が分かる。
浅田は真っ直ぐに、自分の弱さと向き合っていた。
疲労して体が動かなくなってしまう肉体的な弱さと、早く素振りを終わらせてしまいたいという精神的な弱さの両方と戦い、そして浅田は二つに精神力で勝り続けていた。
僕はその様子を見て、やはり、浅田を悪い人間だとは思えなかった。
浅田はどう考えても、誠実な良い人間だ。
僕は自分の中で確信した。




