表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

15 地下空間

「くそ! なんてこった!」

 タダノバは悪態を吐きながら駐車場の奥に向かった。

 鉄の扉を開けようとするが、鍵がかかっているのかびくともしない。


 パパン!

 と銃で鍵のあたりを撃つ。

 ‥‥が、やはり扉は動かなかった。


「くそ! なんでだ?」

 いまいましげに扉を蹴飛ばしてから崩れ落ちた入口の方を見る。とても人力では取り除けそうにない。

「くそ!」

 もう一度鉄扉(てっぴ)を足で蹴飛ばす。


「攻撃で枠が歪んじゃったんだと思います‥‥。」

 タクーマがおどおどしながらも初めて口を開いた。


 タダノバがタクーマをじろりと睨む。

 タクーマはびくっとして視線を床に落とした。

「新兵。おまえ頭いいな。」


 タダノバは人質の方に銃を向けた。

「おい! おまえら。1人1つずつ石を持ってきてこの扉を叩いて壊せ。この先に上に出られる階段がある。」


 石というのは、崩れ落ちた建物の瓦礫のことだろう。

 そんなもので叩いたところで、この鉄の扉が壊れるとは思えなかった。その先の階段だって、爆撃を受けたのなら崩れているかもしれない。


 パン!


 という脅しの銃声で、人質たちは小さな悲鳴をあげながらも動き出した。

 ほとんどが女性だから、そんな力で壊せるわけがない。アクバルはそう思ったが、黙っている。

 こいつは、普段から威張り散らすだけで頭が悪い。


「アクバル! 新兵! おまえらもだ!」

 タダノバはタクーマの名前すら、ちゃんと覚えていないらしい。

 アクバルとタクーマは互いに顔を見合わせ、その指示に大人しく従った。

 こいつは怒らせると何をやらかすかわかったもんじゃない。


 アクバルはAJU☆の隣へ行き、小声の英語で話しかける。

「AJU☆さん。叩いているフリだけでいいです。あなたの華奢(きゃしゃ)な手が壊れてしまう。音は俺が出しますから。」


 AJU☆は怪訝な顔でアクバルを見てくる。

 アクバルは恥ずかしさで目を合わせられず、手元の石だけを見てガンガンと扉を叩き続けた。


 皆でさんざん叩いたが、扉は凹みができるだけで開きはしなかった。

 よけい歪むから当たり前だ。

 とアクバルは思うが、口には出さない。


「くそ!」

 ボコボコになった鉄扉をまた蹴飛ばして、タダノバがいまいましげに悪態を吐いた。


「大人しく救助を待った方がいいと思います。上ではたぶん瓦礫の撤去をやってるはずですから。」

 アクバルがそう言うと、またタダノバはじろりとアクバルを睨んだ。

 が、それだけで「ふん!」と鼻を鳴らして壁にもたれて座り込む。


「おい、新兵。エンジンをかけろ。バッテリーが上がったら真っ暗になる。」


「それはダメです!」

 アクバルは慌ててタクーマを止める。

「閉じられた空間でエンジンなんかかけたら、みんな排ガスで死んでしまいます! この状態では空気は貴重です。」


 タダノバは見るからに機嫌を損ねた、という感じでアクバルを睨んだ。


「ふん。そうか。」


 タダノバはしばらく黙って座っていたが、やがてつと立ち上がった。

「空気が貴重なら、少し人数を減らした方がいいな。必要なのはミア・イーダだけだ。」


 片手に銃を持ったまま、つかつかと人質たちの方の歩み寄り、むんずとAJU☆の髪の毛をつかんだ。

「ひっ!」

 とAJU☆が悲鳴をあげる。


 パァン!


 と地下駐車場に銃声が響いて、血しぶきが飛び散った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ