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第六話

おはようございます。第六話のお届けです。今回は二本立て。夏祭り編と音羽ちゃん誘拐作戦編!お楽しみに!


 「悪のアジトの片隅で」

         (第六話)


          堀川士朗



喜多区寂尊きたくじゃくそんの奥深くの地下施設。

ここは悪の組織ギラギラゾルゲーのアジト。

悪の首領、邪神ハチマン様がソファーに鎮座している。

その周りを幹部のシャイナル将軍、ザコシュ博士、王女ジャイマンデル、デクスター卿が囲んでいる。

ハチマン様が地獄の底から沸き立つような低い声で言う。


「今月の作戦目標はない!て言うかもうカネがない!手書きポストカードとか手作りのオカリナなどを売るしかなくなってきよったわ!ぬは。ぬははははははっ!現在我がギラギラゾルゲーの家計は非常にマズい状況になっておる!ぬは。各員一層蓄財に励め!ギラギラゾルゲーは今ギリギリのギリギリゾルゲーなのだー!座布団一枚!ぬは。ぬははははははっ!」


みんなしてピッキングの検品の内職をする。

特にデクスター卿が手先が器用でノルマを次々こなしていく。

デクスター卿は悪の幹部よりも、こういった内職の作業の方が向いているのかもしれない。


宅配ピザ屋のバイトを始めたゴキゾルゲーが事故ってしまった。


「大丈夫か?」

「ああ何ともないよ。俺のからだは強化外骨格だったから助かったぜ。でもバイト、クビになっちまった……。ごめん」

「お前が無事ならそれで良いんだ」

「ありがとう。カラスゾルゲー」



金欠病の悪の組織、ギラギラゾルゲー。

自転車操業。

そこには悲哀しかない……!

今月の怪人たちへの給料。

半分以上は、ひえやアワや麦などの食品で現物支給される。


「おいこれ貧困ビジネスじゃねーのかよ」

「文句ばっかり言うな!」

「そうそう。ジンバブエドルで支払われるよりマシだろ!」

「うう……」

「貧しいって、僕らそれだけで罪だよねー」



八月。

寂尊銀座駅前夏祭り。

出店を出す悪の組織。

『ギラギラゾルゲー屋』。

オムソバとたこ焼きの店を出した。

ここでも持ち前の手先の器用さを発揮するデクスター卿だった。

彼は、手に職のある悪の幹部だ。


大人気で、三日間で150万円売り上げて大黒字となる。

オムソバ調理を担当したカラスゾルゲーがため息まじりに言う。


「何か。何か実際のところ、作戦するよりも普通に屋台やってた方がはるかに儲かるな……ああ、毎月夏祭り来ないかなー」



来月の作戦内容が決まった……!

checkcheckでヒット曲『テスラ』が二億回再生でバズってる木曜日のジョー・ヴァンニーのボーカルでインフルエンサーの音羽ちゃんを誘拐する。

それには車がいる。

『装甲車アストラルカー』という名をつけた、ただの普通のライトバンを購入する。

中古。

15万円で分割で買った。

オンボロである。

七怪人まで乗れる。

ザコシュ博士がちょっとした改造を行ったのだ。



喜多区寂尊きたくじゃくそんの奥深くの地下施設。

ここは悪の組織ギラギラゾルゲーのアジト。

悪の首領ハチマン様がソファーに鎮座している。

その周りを幹部のシャイナル将軍、ザコシュ博士、王女ジャイマンデル、デクスター卿が囲んでいる。

ハチマン様が地獄の底から沸き立つような低い声で言う。


「音羽ちゃんを誘拐してこい!オール怪人総攻撃だ!行け!」



音羽ちゃん誘拐作戦……!


中野坂上にある音羽ちゃんの自宅を襲撃する怪人メンバーたち。

人海戦術でなんとか成功する。

アジトに戻ってきた怪人たちはさらってきた音羽を取り囲んでいる。

音羽の両手は手錠で塞がれている。

カラスゾルゲーが言う。


「ヒマだな。音羽ちゃんに歌を歌ってもらおうぜ」

「テスラ歌って」

「ワンフレーズにつきギャラ200万出さないとあたし歌わないよ」

「くっ。生意気な女だぜ」

「そうだよ。あたし生意気だよ」

「この」

「とっかえひっかえ男も変えるよ」

「すげえ!」

「かわいい」

「キモい!お前ゴキブリのくせに近寄るな!」

「キモい言われた~!」

「ねえ、何で音羽ちゃん誘拐したのかな?身代金目的じゃないし」

「アリゾルゲー。ハチマン様の考えは分からないけど多分話題性じゃないか。インフルエンサー誘拐したら組織も有名になる。デカくなる。カネも入る」

「てめーらそんな事であたしを拉致ったのかよ!ったく、クズの集まりだな!」

「うわ」

「口が悪いよこの子」



やきとん居酒屋のてっちゃん。

昼のランチ営業。

定食メニューがある。

カウンター席で食事をするカラスゾルゲーとイカゾルゲーとゴキゾルゲーの三人。店内に他の客の姿はない。

さすがに三人とも、昼の時間からお酒は飲んでいない。


「カラスゾルゲー。お前ミソスープ飲まないなら俺によこせよ」

「あげないよ、後でご飯にかけてねこまんまにするんだ。や、味噌汁の事をミソスープって言うなよイカゾルゲー」

「ここのコロッケ定食美味いな」

「うん」

「480円で庶民の味方だよな。グーだよ」

「そだね」

「……俺。ちょっと音羽ちゃんの事好きになっちゃったよ」

「えええ。イカゾルゲー、お前には王女ジャイマンデル様がいるじゃねえか」

「だって見飽きたんだもん。巨乳は見てて飽きるの早い。カッコいいよな、あの子。音羽ちゃん」

「そうかな」

「なあカラスゾルゲー。お前はどういう時に、ああ俺生きてるなあって感じる?」

「何だよ急に。そうだなぁ、俺はみんなと一緒に働いて、で、帰りにこういった安くて美味しいものを食べてる時にああ生きてるなあって感じる気がするよ」

「そうか」

「うん」

「俺たち、生きていこうな」

「うん」

「俺告白しようかな音羽ちゃんに」

「イカゾルゲー……。なんだかなぁ~」



           つづく



ご覧頂きありがとうございました。来週はいよいよ最終話!最後までお付き合い下さいませ。

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