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第三話

おはようございます。第三話のお届けです。今回はマイヌンバーカード偽造作戦に挑戦します。果たして上手くいくのか?お楽しみに!


 「悪のアジトの片隅で」

         (第三話)


          堀川士朗



喜多区寂尊きたくじゃくそんの奥深くの地下施設。

ここは悪の組織ギラギラゾルゲーのアジト。

悪の首領、邪神ハチマン様が巨大なソファーに鎮座している。

その周りを幹部のシャイナル将軍、ザコシュ博士、王女ジャイマンデル、デクスター卿が囲んでいる。

ハチマン様が地獄の底から沸き立つような低い声で言う。


「此度、我がギラギラゾルゲーが遂行する作戦はマイヌンバーカード偽造作戦!これにより喜多区寂尊の全く学習しないアホな老人どもを恐怖と不安に貶めてやるわ!ぬははははははっ!」


デクスター卿が進言する。


「それでは我が配下、カラスゾルゲーをお使い下さいませ。必ずやご期待に沿わせましょうぞ!」


すると今度は王女ジャイマンデルが言った。


「フン。何よ、役立たずの馬鹿ガラスのくせに。あたしのかわいいかわいいイカゾルゲーを向かわせるわ!あんたなんかに負けないわよ。イカゾルゲー、これへ!」


作戦室にイカゾルゲーが登場する。


「おんまえに!」


二人の様子を眺めていたザコシュ博士が言い放つ。


「いえいえ今回は私の天才的頭脳が産んだ新怪人、アリゾルゲーで勝負をかけようかと。アリゾルゲー、カモ~ン!」


作戦室にアリゾルゲーが登場する。


「まだ二回目です。よろしくお願いいたします」


ハチマン様がシャイナル将軍に言う。


「貴殿は怪人を向かわせないのか?フフフ……」

「わ、私は、えーと。そうですね、それじゃあ配下のオオカミゾルゲーとカメムシゾルゲー、そしてゴキゾルゲーを向かわせましょうね」


シャイナル将軍はシャイなので声がとても小さい。

邪神ハチマン様は声を聞き取るのに少し苦労して、ん?ん?ん?となった。


「前回と全く同じ流れで我々はいつもと変わらない学園祭の前日のような永遠の日常を繰り返しているのかなあーって少し不安になっちゃった。だがこれで決まった!ギラギラゾルゲーの全兵力、オール怪人総攻撃で作戦を遂行しよう!ぬは。ぬははははははっ!」



マイヌンバーカード偽造作戦……!


喜多区寂尊団地に住む老人に次々と声をかける怪人たち。

老人たちの部屋からはすえた匂いがしている。


「おじいちゃ~ん。どうも~。こんにちは~。お宅にあるマイヌンバーカード、古くなっていませんか?今なら無料で更新出来ますよ!この機械でパパッとすぐに更新出来ます。おまけに今なら特別に国のキャンペーンとして5000ポイントのマイヌンポイントもお付け致しますよ!」

「わあ、それはとても良いね。ぜひ頼もうかな。どれマイヌンバーカードはどこにあったかな……」


そして集められた50枚のマイヌンバーカード。

その代わりとして団地の老人たちに渡されたのは、ギラギラゾルゲーが偽造した偽物のカードである。

カード情報は全く入っていない。

ただのプラスチックカード。



ハチマン様が高らかに笑って言う。


「ぬは。今回は上手くいった!これで個人情報抜き放題だ!誰が誰にお歳暮を贈ったとかが分かる!やはり老人相手の詐欺犯罪はいともたやすいわ!騙される方が悪いのだ!ぬは。ぬははははははっ!」


今回も敵の、正義の味方傍若無人戦隊ヤリタイヨーニヤルンジャーの出番はなかった。

港区麻布十番の夜の街で遊んでいるのかもしれない。



日暮れ時。

喜多区寂尊商店街の中にあるやきとん居酒屋、てっちゃん。

ギラギラゾルゲーの怪人たちが奥座敷で飲み会中である。

オオカミゾルゲーはいない。


「あたりめ、七味マヨネーズつけるとたまらん」

「うん。美味いっ!」

「イカゾルゲーは共食いだね」

「そこは深く考えないようにしているよ」

「そうか」

「居酒屋鐵ちゃんは表面張力ギリギリまでグラスにお酒を入れてくれるから嬉しいよな」

「うん。普通350円でここまでやってくんないよね。焼酎も濃いしね」

「やっぱ酒は惰性で飲んじゃダメだよね」

「うん。ぷはー」

「あー。体力落ちたなあー。もうシャワー浴びてコンビニ行くだけでクタクタだよ」

「ありゃ」

「更年期障害」

「産まれたばっかりなのにな、怪人として」

「♪頭の横、耳から加齢臭~」

「ご機嫌だな。マア飲め飲め」

「そうだよ。飲まなきゃやってらんないよ、こんな世の中。おい、誰かギター持ってねえか?」

「え。誰も持ってないよそんなの」

「そうか……」

「弾く気だったのかよ、カラスゾルゲー。迷惑な話だな」

「弾き語りを……」

「いらないよ」

「ブルースなど一席」

「いらないよ、ブルース嫌い、迷惑」

「そんな……」

「カラスゾルゲー、お前の本名何?」

「雄二~!サファリパークスッ!」

「ははは ( ´∀`)」

「話変わるけど、うちのハチマン様はこのツマミのあたりめと同じだな。噛めば噛むほど味が出る」

「お」

「最後の一口まで美味い。一生ついてくよ」

「ヨイショするね~ゴキゾルゲー。どうした?」

「いやさー、どうしようもないボンクラだった俺たちを改造して怪人にしてくれて、おまけに作戦まで任せてくれて。生き甲斐を与えられている感じがする。ほんと邪神ハチマン様には感謝だよ。大感謝」

「そうだよねー」

「俺なんか、掘れば拭いきれないトラウマばっかり湧いてくるさえない中年だったからな」

「うん。俺も」

「鐵ちゃんのやきとん美味しいなあー。モグモグ」

「ほんとここんちのやきとん好きだなイカゾルゲーは」

「ハチマン様も、この毎回の楽しい怪人飲み会に参加してくれると良いんだけどなあー」

「そうだよねー。でもあの人肝臓やられてるからなー」

「そうかー。残念だなー」

「これ以上メンバー増やさない方が良いよ。俺はそう思う。たとえハチマン様でも」



           つづく



ご覧頂きありがとうございました。また来週土曜日にお会いしましょう。

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