第一話
おはようございます。新作第一話のお届けです。悪の組織の怪人たちが織り成す悲喜劇。作戦が終わった後は怪人飲み会!お楽しみに!
「悪のアジトの片隅で」
(第一話)
堀川士朗
登場人物
オオカミゾルゲー。
悪の組織、ギラギラゾルゲーの怪人たちのリーダー。プライドが高い。
カラスゾルゲー。
うるさいから嫌われている。
イカゾルゲー。
エロくてイカ臭いから嫌われている。
ゴキゾルゲー。
不潔だから嫌われている。
カメムシゾルゲー。
カメムシ臭いから嫌われている。
アリゾルゲー。
新人。小柄でかわいい。みんなのマスコットキャラ。
シャイナル将軍。
シャイで声が小さい。バズリーチで転職してきた。
ザコシュ博士。
ギラギラゾルゲーの専属博士。
怪人たちを開発する。
王女ジャイマンデル。
綺麗。実はグラビアアイドル篠咲あいん。
デクスター卿。
幹部。内職が上手い。
邪神ハチマン様。
悪の組織ギラギラゾルゲーの首領。肝臓が悪い。
音羽ちゃん。
木曜日のジョー・ヴァンニーのボーカル。悪の組織ギラギラゾルゲーに誘拐される。
傍若無人戦隊ヤリタイヨーニヤルンジャー。
正義の味方。敵。やりたい放題。
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喜多区寂尊の奥深くの地下施設。
ここは悪の組織ギラギラゾルゲーのアジト。
悪の首領ハチマン様が巨大なソファーに鎮座している。
その周りを幹部のシャイナル将軍、ザコシュ博士、王女ジャイマンデル、デクスター卿が囲んでいる。
ハチマン様が地獄の底から沸き立つような低い声で言う。
「此度、我がギラギラゾルゲーが遂行する作戦は高級腕時計強奪作戦!これをもって喜多区寂尊の街を恐怖に貶めてやるわ!ぬは。ぬははははははっ!」
デクスター卿が進言する。
「それでは我が配下、カラスゾルゲーをお使い下さい。必ずやご期待に沿わせましょうぞ!」
カラスゾルゲーが登場する。
「アー!アー!」
すると今度は王女ジャイマンデルが言った。
「フン。何よ、役立たずのアホガラスのくせに。あたしのイカゾルゲーを向かわせるわ!あんたなんかに負けないわよ。イカゾルゲー、これへ!」
作戦室にイカゾルゲーが登場する。
「おんまえに!」
二人の様子を眺めていたザコシュ博士が言い放つ。
「いえいえ今回は私の天才的頭脳が産んだ新怪人、アリゾルゲーで勝負をかけようかと。アリゾルゲー、カモン!」
作戦室にアリゾルゲーが登場して言った。
「新人です。よろしくお願いいたします」
ハチマン様がシャイナル将軍に言う。
「貴殿は怪人を向かわせないのか?フフフ……」
「わ、私は、そうですね、配下のオオカミゾルゲーとカメムシゾルゲー、そして戦線に復帰したばかりのゴキゾルゲーを向かわせましょうぞ」
シャイナル将軍はシャイなので声がとても小さい。
邪神ハチマン様は声を聞き取るのに少し苦労して、ん?ん?ん?となった。
耳の良い怪人たちのリーダー、オオカミゾルゲーが現れて言った。
「フフフ。百戦錬磨の俺を呼んだかい?」
ハチマン様が錫杖をブンブンと振った。
「これで決まった!ギラギラゾルゲーの全兵力、オール怪人総攻撃で作戦を遂行しよう!ぬは。ぬははははははっ!」
高級腕時計強奪作戦……!
喜多区寂尊の時計店、白白堂を訪れた怪人たち。
ガラスを割るのは忍びないので、店員にガラスケースを開けさせる紳士ぶり。
次々と時計をバッグに詰めていく怪人たち。
アリゾルゲーは一人、納得のいかない表情。
「これって、これって要するに闇バイトじゃないか」
「そうだよ。みんな納得してやってんだよ」
オオカミゾルゲーがアリゾルゲーに厳しく優しく言う。
「言ってねーでそこのローラックスも運べよ新人君」
アリゾルゲーは恥ずかしくなって顔を赤らめながらローラックスの腕時計をバッグに入れた。
アジトに強奪品を持ち帰った怪人たち。
ザコシュ博士が腕時計を鑑定すると、それら全てはコピー品だった。
「何ということよ。客にコピー品を売り付けていけしゃあしゃあと暴利をむさぼっていたとは!白白堂、あなどれん。ギラギラゾルゲー以上の悪の時計店ではないか!ぬは。ぬははははははっ!」
ハチマン様は悔しいのを全面的に隠して大笑いした。
今回は敵の、正義の味方傍若無人戦隊ヤリタイヨーニヤルンジャーの出番はなかった。
敵の妨害行為はなく、ただただ自爆しただけに終わった……。
夕暮れ。
喜多区寂尊商店街の中にあるやきとん居酒屋、鐵ちゃん。
ギラギラゾルゲーの怪人たちが奥座敷で飲み会中である。
オオカミゾルゲーはいない。
「カンパーイ」
「今日はアリゾルゲーの新歓コンパも兼ねてるから楽しく飲もう」
「ありがとう」
「コンパ?女いねーけどな」
「またそれかよイカゾルゲー」
「アリゾルゲーはちっちゃくてかわいいな」
「何だよ急に」
「お酒を飲んでも良いのか?」
「これでも僕はハタチを過ぎてるんだからね」
「それは前の、人間だった頃の記憶だろ。産まれたばかりじゃねえかお前は」
「そうだけど。ああ、僕学生だったんだ。人間だった頃」
「そうか。令和の学生は大変だな、色々あって。奨学金問題とか」
「あー。今日の作戦も失敗したな。何でこうも上手くいかないんだろ」
「おいおいやめろよゴキゾルゲー、仕事の話は。しょぼくれたサラリーマンみたいだぜ」
「酒が不味くなる。もう終わった事は良いじゃねえか」
「そうだな。ごめん」
「卵をいーれて帯しめてー。今日はアタシの晴れ姿ー。イチジク浣腸ちょっちょっちょっー。好き好きのシャーツ。ボヤからもんじゃ。素敵なサムスィング~。三寒四温シオン。しっこでぃっこ中秋、しっこでぃっこ朝昇」
「どした?カラスゾルゲー。また狂ったか?」
「ああ、ちょっと狂ってみた」
「正気に戻れよ」
「戻ってるよ」
「そうかな」
「うん」
「ドラッグダメ!絶対!」
「やってねーよ」
「狂うのはたまににしとけ」
「酒飲んで全て忘れろ」
「どうせこの世は酔生夢死だから」
「そうだな。ありがとう」
「肉豆腐も美味しいね」
「チルに過ごしたいよね、チルに」
「言いたいだけだろ」
「いてー。腰いてー」
「大丈夫?ゴキゾルゲー」
「お前まだ病み上がりなんだから無理すんなよ」
「うん……」
「今夜の主役はアリゾルゲーだ」
「カラスゾルゲー、帰りは何時?」
「9時~!サファリパークスッ!」
「ははは ( ´∀`)」
「鐵ちゃんのやきとん美味しいなあー。モグモグ」
「オオカミゾルゲーさんも参加すれば良いのにな。飲み会」
「ああ、あの人はプライドが高いからこういう場には来ないんよ。独り、部屋でコニャックとか飲んでるタイプだから」
「……コニャック。カッコいい!」
「いや、鐵ちゃんのハイボールやチューハイの方がはるかに美味いと思うぜ、俺は」
つづく
ご覧頂きありがとうございました。また来週土曜日にお会いしましょう。