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全身メイクで何にでもなれる時代

 かつて漫画で語られた夢の機械が次々現実となった、今の時代。科学技術の進歩と人権意識の向上で、国民の多くは長時間働く必要がなくなった。


 総理大臣も、休日は全身メイク技術で女装など自分好みのおしゃれを楽しんでいた。


 しかし既に令和ではなくなった今の時代でも、昭和の価値観は一部で残っていた。



 とある女性が務める会社にも、その古い価値観の上司がいた。上司は女性と会うと必ず「美人でうらやましい」とか「彼氏いる?」としつこく聞いてくるのだ。


 当然、女性は真顔で「それ、相手が総理大臣だったら言いますか?」と返す。しかし上司は「まさか、こんな可愛い子が総理大臣だとか、そもそも総理大臣が女装なんてバカなことするわけないだろう」と聞かない。


 そこで女性は不快な言葉を聞かされないために、最新の技術を用いた全身メイクで毛深い男性風の見た目になる。翌日、その姿で会社に行ったところ、「美人」と言われなくなった代わりに今度は「汚い」と冷たく対応されたり無視されたりするようになった。


 困った女性はインターネットの質問投稿サイトで、その事を相談した。質問を投稿して一時間後、一件の回答が付いた。


「それは暴力です。総理大臣に電話で相談しましょう。総理大臣はいつでも待っているとのことです」


 回答には、総理大臣の電話番号も書かれており、女性は総理大臣に電話をかける。すると、すぐに電話に出てくれた。緊張する女性に対し、総理大臣はリラックスするように優しく声をかける。女性の相談を聞いた総理大臣は「辛かったですね。でも大丈夫です。その会社にはもう行かなくていいです。明日は私が代わりに会社に行きますからね」と答えた。


 翌日、その日も上司は女性に付きまとう。


「今日も美人だね。一緒に素敵なホテルにでも行かないかい」


 すると突然、女性がおじさんの姿に戻った。上司はびっくりして言葉を失った。おじさんの正体は総理大臣で、全身メイク技術で女性の姿に変身していたのだ。


「世の中はいつまでも昭和じゃない。今の時代は、全身メイクでどんな姿にもなれるし、そうじゃなくても何にでもなっていい!」


 その上司は、最新の科学技術も時代に合った新しい倫理観もまったく知らなかった。


 後日、上司は会社を辞めることになった。


 一方、総理大臣の言葉で自信を取り戻した女性は、全身メイクで自分の思うようにおしゃれを楽しむようになった。


「これからは人目を気にする必要はありません。思う存分、楽しんでくださいね」



おわり

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