【一話 拙い一歩】
病院を退院した後、会社が倒産して無職になった。
まずするべき事はハローワークに行くことらしい。
そこで、失業給付金を受け取る手順を踏むらしい。
ハローワークの自動ドアを通り過ぎると淀んだ空気がそこにあった。
「次の方どうぞ。」
目にクマがあるが笑顔が素敵な女性に案内された。
「お名前をどうぞ」
「今沢 太郎です。」
母の苗字が今沢言うこともあり、後はとってつけたようにつけた。とても不思議なことだったのだが、名前を忘れた直後、身分証明書等名前の項目はなぜかモザイクがかかって読めなかった。
それが今、こうして今沢 太郎としてここに来たことでどうやら身分証明書の名前も変わったらしい。なんとも不可解だ。
「前職は営業職だったんですね。」
「インフラ関係の営業をやっておりました。」
「短い日は2ヶ月後になります。」
「承知しました。」
「他に質問ありますか。」
「ありません。」
そして、ハローワークの上、後にしたわけだが、今後どうすればいいか途方に暮れていた。
しばらくすると、ホームレスが気味の悪い笑を浮かべて話しかけに来た。
「あんたもいろいろ失ったようだけど、今後はそんなもんじゃないぞ。君は色々と失って無に帰るんだ。」
僕は固唾を飲んだ。
「お前は一体」
彼は自分の実体験を言ってるのか、それとも僕に向けての警告なのか、いずれにせよイカれているのは確かだ。