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生徒会へ集合っ!  作者: リレー小説家
10/26

<鈴木書記視点> お菓子と紅茶と爆弾とその3

うわあああ、ついに来てしまいました。時計堂です。

 とりあえず、椎名さんごめんなさい……。


「蓮うぅうう! 掃除をさぼってとんずらこきやがってんじゃねえよって……なに? この空気」

 ひょっこりと出てきた眼帯に、思わずため息をつく。なんだ……椿か、なんて言ったらなんだってなんだよ、なんてツッコミ役が突っ込まれるという驚異の状況に追い込まれるので自粛。疲れ切った体をふらふらとさせながら、部屋の端にあるパイプ椅子に腰かけた。再度ため息をつき、空中浮遊する糸くずのような埃を見上げた。呼吸に伴って埃が舞い、まるで風を操っているような気分になる。

 にこにこと嬉しそうな会長は、楽しそうに机に頬杖をついて周りを見渡す。

「安心して。涼太にはお茶をたしなむ趣味なんかないよ」

「は? 話の流れがぜんっぜん読めねえんだけど」

「実はですね……」

 そばにいた真崎が椿に説明を始める。ああ、それにしても体がだるい。

 ……昔は、こんなんじゃあなかったんだけどなあ。

 最近は『趣味』も我慢しているから、運動不足ぎみなのかもしれない。それとも、モリモリ食べてるから太った? ……いやいやいや、それは考えたくない。

 わずかに舌の上に残るほのかな甘みが跡形もなく消えた頃、椿が腰に手をあてて首をかしげ、言い放つ。

「んなもん、どうでもいいじゃねえか」

「よくねえ! 大いによくねえんだよ! おおらかにもほどがある!」

 何でそこで清流のごとく流す! 仮にも知り合いが食べてんだぞ!

 と、そこでその知り合いに目を向ける。雨粒が窓に叩き落ちては滑り落ちていく窓を背景に、うっすらとした微笑をうかべて扇子をあおぐ副会長。人の気配を察知できて、犬以上の嗅覚を保持する副会長。

 うん。こいつなら大丈夫だ。

 ふらっと無駄に長い手を持ち上げ、はいはーいといかにもやる気なさそうに二宮が手を上げる。とりあえず、「どうぞ」と意見を促してみる。仮にも教師だ。何かいい大人の見解を披露してくれるかもしれない。人は見た目じゃないしな、うん。

「あー、とりあえず生徒の安全を守る立場にいる顧問から言わせてもらうとだな……まあ、たぶん危ないけどいいじゃん。うまいし」

「いいじゃんって何だよ! たぶん危ないって、わかってんじゃん!」

「いや、うまいよこれ」

「うまいとかそういう問題じゃねえええええ! なんかおまえは何でもうまいって食べてそうな気がする!」

「何気に失礼だな、オイ」

 肺から酸素および二酸化炭素がすべて排泄、呼吸困難。つまりは息切れ。

 肩を上下に動かしつつも、だんだんと麻痺してくる頭。なんでわざわざ突っ込んでやってんだよ自分。答えは簡単。誰かが突っ込まないと、ボケ倒しになってしまう!

 苛々とする中、ふっと浮かんでは消えるのは、昔なら躊躇なくやっていたこと。

 ああ、殴りてえ。

「まあまあ、疲れた時にはレモンティーがいいですよ」

 真崎の足音とともに近寄る、高級茶葉のいい香り。鼻孔をくすぐるその香りに、思わず気が抜けた。

「どうも……って、例の危ない紅茶じゃん! しかもレモンはどこから出してきた!」

 しかもストレスにきくのはカルシウムだ! ビタミンCは関係ないぞ!

 そんな俺に向かって、会長がぐっと親指を突き出す。

「生徒会室に冷蔵庫は必須だよ!」

「いらねええええ! どこから持ってきたんだ!」

 部屋の隅で、鈍い銀色を光らせる箱こと冷蔵庫あり。高校生の身長をはるかにしのぐ巨体に、三人ぐらいなら冷凍保存できるぜって感じの横幅。……あれ、ぜってえ業者じぇねえと入らねえだろ。そもそもこの部屋のもうないけどより明らかにでかい。

「おい蓮。この前スタント部と交渉した時の、あれじゃねえのか?」

「なんでスタント部が冷蔵庫持ってんだよ、しかも業務用! どこまで引っ張られたら気が済むんだスタント部!」

「私と関わりが深いから5話くらい引っ張れるよ!」

「引っ張るな!」

 うう、目眩までしてきた。……季節の変わり目に具合が悪くなるから、あまりストレスは溜めたくない。のに。

 もう一度、ティーセットと茶葉の缶に視線を移す。どちらも言わずとも知れた、高級ブランドのラベル。真っ白な陶磁器を持ち上げて、まじまじと見つめて見た。

 俺の友人関係に、こんな物送ってくる奴はいないなあ。みんな、質より量ってやつらだし。もしも俺に恨みがあって送られたんなら……もうちょっとあからさまかな。その中身を口にした人間も、無事では済まないだろう。

「毒とかに耐性持ってそうだし、いいか……」

「何か言いました?」

「いえいえ」

 かちゃり、と小さな音を立てて机の上に置く。置かれたティーカップに注がれた薄茶色の液体は、蛍光灯の光を妖しく反射する。

 一瞬、外の景色に目がくらむ。それに続く、低い地鳴りの音。……雷が落ちるほど、外の雨はひどくなっているのか。

「それにしても、楠木さんの用事ってなんですかね」

「いいんじゃない? すぐに来るだろうしね」

 そうやって頬杖をつく会長の横顔を、一瞬の閃光が照らす。

 また、雷が落ちた。


 無駄に雷を落としてみました、時計堂です。

 助っ人として涼太を召喚しました。汐嵐さんにもごめんなさい。

 では、椎名瑞夏さん、お願いします!




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