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3-9 麻雀は実力ゲー


「これまた随分と世界観の変わる場所だね……」


 そこにはものの見事に男アバターしか存在せず、パチパチと一心不乱に打牌を続ける様はもはや狂気を感じられるほどだった。


「嬢ちゃん、そんなところで突っ立ってないで席についたらどうだい?」


「あぁ、はい」


 まるで監視するような鋭い視線で店の隅にあるパイプ椅子に座っている鼻の赤らんだ男性がそう声をかけると、レイは言われるがまま空いた席に腰を下ろす。


「は?子どもじゃん」


「ルール分かんのかよ」


「ん?こいつどこかで……」


 その卓に先に座っていたのは先程レイが追い掛けていた怪しい3人組だった。顔はゲームらしく美化されているが、体格だけで考えるのであれば、レイよりも年上のように思える。


「あっ!こいつアレだ!レイとかいうやつじゃん!」


「え?あっ本当だ!」


 目を細めてレイのことを見ていた男の一人がレイのことを指差しながら叫ぶと、もう一人の男も驚いたように目を見開かせる。


「おい、何しにきたんだ!」


「ここがどこか分かってんのか?【JackPots】の――」


「うるせぇぞ!」


 気づいた瞬間レイに捲し立てようとしていた男達だったが、先程の鼻の赤い男性が大声を出して近付いてくる。


「ダークレさん!でも!」


「でももクソもねぇよ。お前らここに何しにきてんだ?」


 尚も食い下がろうとする男をダークレが鋭く睨みつけながら黙らせると、その目のままレイの方を見る。


「お前さんの事は知っている。だがここでは関係ねぇ、大事なのは麻雀が打てるかどうかだ。違うか?」


「そ、そうですけど……」


 ダークレの有無を言わさぬ一言に、三人組が悔しそうに歯噛みする。


一方でレイは全く怯えた様子もなく、コロコロと感触を確かめるように牌を転がしながら他のメンツへと声を掛けた。


「ねぇ、まだ?早く始めようよ」


「ほう、中々のタマじゃねぇか。ルールは1本5000Gのハイレート。それ以外は基本的に何でもあり、分かったか?」


何でもあり(・・・・・)ね。悪くないかな」


 簡単な説明を聞いて少しだけ影を帯びた笑いを浮かべたレイはジャラジャラと牌を混ぜ始める。


その行為に卓についているその他3人も渋々と言った表情で牌を混ぜ始めた。


「ふふっ」


「あ?何笑ってんだよ」


 その最中に何故か含み笑いをするレイに対し、不快そうに眉を顰めながら対面の男が尋ねる。


「あぁいや、可愛いなぁと思ってね。私にもそんな時があったよ」


「はぁ?何言ってんだコイツ……」


 よく分からない受け答えをするレイを気味悪く思ったのかそれ以上関わることをやめる。ただ視聴者も普段と異なる様子に首を傾げていた。


・レイちゃんどうしたの?

・それ何キャラ?

・ちょっと怖い……


「え?だって麻雀強い人ってこう闇を背負ったみたいな感じじゃないの?私の見た漫画(バイブル)にはそうあったけど」


 視聴者の疑問に至極真面目な様子でそう答えるレイ。闇を背負うというよりかはただ電波な人だけの気がしないでもない視聴者だったが、それを指摘する前に牌のセットが完了してゲームが始まる。


「とりあえず半荘でいいか?」


「構わないけど、そんなに必要ないと思うよ」


「……よし、親を決めるぞ」


 謎の煽りを見せるレイにこれ以上関わっても仕方がないと判断した男は無視してサイコロを振る。その結果、レイの左側にいるプレイヤーが最初の親になるようだった。


「お前、大口叩いているって事は相当自信があるんだろうな?」


 パチンと親となったプレイヤーが牌を切ると、レイに向かって敵意を向けながら話しかける。それに対して新しくとった牌を確認して不敵な笑みを浮かべた。


「ご期待には添えると思うよ?その証拠に――リーチ」


「なっ!?」


・ダブルリーチだ!

・え?え?なにそれ?

・ダブリー最初の一手でリーチを入れること

・めっちゃすごいよ


 レイが牌を点棒を卓に投げながらリーチを宣言すると他プレイヤーと視聴者から驚愕の声が上がる。ただダークレだけは別のことについて驚いていた。


「お前、まさか……」


何でもあり(・・・・・)、でしょ?」


 ダークレが思わずと言った顔で驚いたように声をかけるとレイはそれにウィンクをしながら返す。それを見たダーグレは愉快そうに笑った。


「そうだな。すまん、邪魔した」


「いや、大丈夫。ほら次は君の番だよ?」


「うるせぇなぁ!分かってるよ!」


 煽るような声をかけられた左側の男は悩んだ挙句に乱暴に牌を叩きつける。そしてひとまずそれが通ったことにホッと胸を撫で下ろしていた。


 そうして5巡目のレイの順番が回ってきたタイミングでレイは牌を全員に向けてオープンした。


「ツモ。裏は乗ってないから2000/1000かな」


「チッ!」


 レイが上がりの宣言をすると、舌打ちをしながらも点棒をレイに渡す他プレイヤー達。そうして親がレイへと移り、次の局の準備へと入る。


「そういえばここは自動卓じゃないんだね」


 ジャラジャラと牌を混ぜている中、ふと世間話をするような調子でレイはダークレへと話しかける。


「あぁ、それは俺の完全な好みだな。そっちの方がお前さんも好き(・・)だろう?」


「そうだね、こっちの方が私は慣れてる(・・・・)かな」


「おい、喋ってないで早くしてくれや」


 楽しそうに会話するレイに痺れを切らした男が話しかける。それに対して呆れたようにやれやれと首を横に振った。


「こういう会話も楽しんでいかないとさぁ。だから君はいつまで経っても半人前なんだよ」


「うるせぇよ、運だけで上がったくせして調子に乗りやがって」


「運だけ……ねぇ」


 意味深に呟いたレイに対して少し不審な目を向けるものの、そのまま山を積み始めると次の局に移る準備が完了した。


「ちなみに言っておくと、私は運だけのゲームって嫌いでさ。ギャンブル系のゲームなんかもあんまりしないんだよね」


「あ?なんだよ急に」


 牌を取って自分の前に並べる最中、急に自分語りを始めたレイに対して眉を顰めるプレイヤー達。


「いやいや、大事な話だから。じゃあなんで麻雀やってるのかって気にならない?」


 逆に問いかけられた質問に対して言葉を噤んだ男達を肯定したと受け取ったレイはさらに言葉を続ける。


「うちの母曰く麻雀って実力のゲームらしくてさ。最初は半信半疑だったんだけど経験したら価値観が変わったんだよね」


「さっきから……意味不明なこと言ってんじゃねぇよ」


 どこか要領を得ない話に対面の男が改めて問い返すと、薄く笑いつつ並べ終わった牌を手前に引いて台の縁に当て、綺麗に整えるレイ。


「だから、実力ゲーなら負ける事はないってこと。このままなら天地がひっくり返ったって君達に負ける事はないよ」


 そして目の前に並んだ14枚の牌を、全員に見えるようにおもむろに倒し始める。


「嘘、だろ……!?」


「天和。16000オール」


 驚愕のあまり立ち上がってレイの手牌を確認する3人組。その視界には33万分の1の奇跡が広がっていた。


[TOPIC]

PLAYER【ダークレ】

身長:162cm

体重:73kg

好きなもの:酒、賭博、ギャンブル


クラン【Jackpots】の幹部で裏カジノの管理人。

現実でもギャンブルを好み、その中でも特に麻雀を愛している。

常にお酒を飲んでいるためか、最初のキャラメイク時から鼻が赤らんだ状態だったが、これはこれでトレードマークとなっているため案外気に入っている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2020年から2021年にかけて読んだ中で1番面白いです! デンドロを見つけた時とおんなじ気持ちで読めるので更新楽しみにしてます! [気になる点] もし通常ルールで麻雀をプレイされてるので…
[一言] ダークレのキャラ 嫌いじゃないぜ
[一言] 更新お疲れ様です! なんでもあり、、、 イカサマはばれなきゃイカサマじゃないんだよなぁ、、 いい性格してることで。 更新お待ちしています!
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