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3-3 ナーフには怒りを込めて


「ん~、私のスキルはそんなに変化がないかな……。これくらいか」


 恒常効果であるためかSPスキルについてはクールタイムの表記がなく、【邪ナル教典】も特殊な仕様な為か変更していないことが見て取れた。


一方で他のスキルに関しては変化が加わっていることを確認し、レイはため息を溢す。


SKILL【懐柔】

CT:30sec

魔物と心を通わせること。それが一流への第一歩。

効果①:ヒット時に判定を行い、成功すれば対象の『魂』を獲得


SKILL【じゃしん結界】

この世界は『尊キ御方』の遊び場である。そこに囚われた者は『尊キ御方』に尽くすしか未来はない。

CT:666sec

効果①:周囲に『箱庭』を創造する


SKILL【じゃしん賛歌】

『尊キ御方』の歌声に聞く者すべては立ち止まり涙を流すだろう。その感情が同一とは限らないが。

CT:666sec

効果①:観客を魅了し釘付けにする


・これは…

・うーん

・やってんねぇ!


「なるほどね~。まぁまぁ予想の範囲かな~」


 変更が加えられた箇所を確認したレイは満面の笑みで視聴者に話しかける。しかし、その額には青筋がくっきりと浮かんでいた。


「――なんて言うと思ったか!なにクールタイム666秒って!?馬鹿にしてんの!?じゃあ【自己犠牲】の仕様も元に戻してくれたっていいじゃん!」


「ぎゃ、ぎゃう」


・これは理不尽

・ナーフに次ぐナーフかよ、糞だな

・じゃしんにとってはラッキーだけどなw


 ハァハァと肩で息をしながら思いの丈をぶちまけるレイ。その魂の叫びに視聴者から同情の言葉が上がる中、どこか居た堪れない表情でじゃしんは顔を背ける。


「ご丁寧に縛りに関してはなーんにも変わってないしさぁ……!何?運営私のこと嫌ってる?」


・なんかレイちゃんに当たり強いよね

・狙い撃ちされてる?

・まぁ問題児なのは確か

・因果応報だわ、さっさと引退しろ


 心当たりがないわけではないが、あまりにも酷い対応にレイが頭を悩ませていると、心無いコメントがちらほらと流れてくる。それを見たレイからぷっつんと何かが切れる音がした。


「……決めた、絶対辞めてやるもんか。むしろ最初に全クリしてざまぁみろって言ってやるからな!運営にも!お前らにも!」


 カメラに向けて指をさしながら宣言するレイの表情は怒り一色に染まっている。


そのままため込んだ怒りを発散するようにうがー!と吠えながら枕をボスボスと殴ると、肩で息をし始めた。


「はぁはぁ…まぁ不毛な怒りはここまでにして。ここからは純粋に強化事項だね」


・お、おう

・配信者って大変なんやな

・あなた疲れてるのよ……

・強くあれ……


 視聴者からの労わるようなコメントを見たことで、少しすっきりしたのか気を取り直すようにレイは話題を変える。


SKILL【アポート】

来い、相棒!

CT:60sec

効果①:召喚獣をプレイヤーの目の前に転移する


「これは確か【召喚士】のスキルだよね?メイン盾召喚できるし便利そう」


「……ぎゃう!?」


・草

・草

・ナチュラルにメイン盾扱いwww


 しれっと言ったレイの言葉にじゃしんがワンテンポ遅れてレイを二度見する。それに対して一瞥すらくれずにレイは次の能力を確認していく。


称号【聖獣の良き隣人】

聖獣の友として共に危機を乗り越えた友情の証。

取得条件:ワールドクエスト【死を孕む病の群れ】をクリア

効果:状態異常時、低確率で自動解除(5%/10sec)


「うわぁ外れだ」


・レイちゃん状態異常にならんもんね

・思った

・普通なら当たりなんだけど


 称号を確認したレイは顔を顰めてぽつりと呟く。視聴者にも同じことを考えた人がいたようで、ぽつぽつとそのコメントが見え始めた。


「……まぁいいか、ある分には損しないし。そんなことよりも次の縛り(・・)はこれね」


 結局大きな影響はないと判断したレイは次のスキルに目を移す。そこにはレイにとっての新しい苦難が記載されていた。


SP【通過儀礼】

神による試練。それがたとえ気まぐれだろうと、信徒は涙を流して受け入れるだろう。

CT:-

効果①:経験値取得率2倍

効果②:回復アイテム及びスキルの使用不可


・経験値2倍!?

・は?つよくね?

・でも回復不可って辛くないか?


 その効果を前に視聴者の間で議論が巻き起こる。それを眺めながらレイはふと思いついたことを口にした。


「これさ、武器とか防具についているスキルって発動扱い(・・・・)なのかな?」


・ん?

・どゆこと?

・分からん


 その呟きに視聴者から疑問の声が上がったため、レイはさらに言葉を続ける。


「あぁそっか、説明してなかったかも。今装備している【星空の修道女】にさ、攻撃ヒット時MPとHPを回復って効果があるんだけど、これも使えなくなるのかなって話。確か【頭痛】の状態異常ってスキルだけ使用不可で効果は発動するよね?」


・するね

・なるほど

・え、じゃあデメリットにならなくない?


 レイの説明を聞いた視聴者は確かにと納得するようにコメントを打ち、レイはそれを見てにやりと笑いながら頷く。


「そう。私の考えが正しいなら回復なんてそれで賄えそうだしメリットしか残らない。私史上初めて有能スキルになるかも」


・おぉ!

・マジか!

・運営ザマァくる!?


 レイの言葉に興奮するように沸き立つ視聴者をまぁまぁと押さえるレイ。ただその表情から滲み出ている歓びを隠せていなかった。


「まぁ要検証だね。…それに調べたいのはもう一つあるし」


 しかし、レイはそのままじゃしんのスキルに目を滑らせると、先程と一転して困惑した表情を浮かべる。


SKILL【じゃしん捜査】

『尊キ御方』にはすべてを見通す力がある。その力で全知を得るのだ。

CT:666sec

効果①:神眼を用いて、すべてを暴く


「これは……何?どういうことなの?」


・分からん

・えぇ……

・神眼?暴く?


 当然、レイの言葉に答えられる視聴者など存在しない。


これ以上考えても仕方ないと判断したレイは使ってみたほうが早いと判断してステータスを閉じる。


「これもとりあえず検証かな。今度エリアに行ったとき試してみよう」


「ぎゃう!」


 そう決めたレイに横にいたじゃしんが『了解』と言うように凛々しい顔で敬礼していた。その顔を見て気が抜けたレイは少し笑うとその頭を一撫でする。


「お気楽だなぁ。よし、じゃあスキルについてはこんなもんにしてっと。次はアイテムでも――」


 ある程度の情報を把握したレイは続いて戦利品のアイテムを確認しようとウィンドウに手を伸ばす……が、とあるコメントを見てその手を止めた。 


・そう言えば『八傑同盟』についてどう思ってるの?

・あれか……

・確かにレイちゃんも含まれてたもんね


「……ごめん、何、それ?」


 コメント欄の文字を視界に収めたレイは一瞬固まった後、重い口調で問いかける。


視聴者の調子からどうせ良くないことなんだろうなと思うと、俯きながら目頭を押さえた。


[TOPIC]

STATE【頭痛】

効果①:<敏捷>-30

効果②:軽度の視界妨害エフェクト

効果③:SKILL使用不可

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― 新着の感想 ―
[気になる点] …はい?懐柔にクールタイム30はちょっと…。why?
[一言] なんとか6秒は短いのか長いのか
[一言] 更新お疲れ様です! 、、、まぁうん、狙って修正してますよね、、、 負けるなレイちゃん!頑張れレイちゃん! そしてメイン盾の扱いは変わらないじゃしん!ツヨクイキロ お?よさげなスキル、、、けど…
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