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2-【公式ストーリー】


『この世に神など存在しない』


 それが科学者である私の信条であり、根幹とも言えるべき座右の銘であった。その言葉は幾度として私を救い、また彼の行動理念の重大なパーソンをも担っていた。


「私はこの世の真理を見つけます」


 この言葉は私が学び舎に入った際、自己紹介で用いた言葉だ。30名程の同級生が見つめる中、少しの疾しい気持ちもなくそう宣言した私を全員が笑ったが、それでも私は自分に誇りを持っていたのだ。


 そもそも彼らと私では立っているステージが違えば見えてる景色も違う。生まれながらの天才である私の考えを彼らにも理解しろというのは酷というものであろう。


 そして私はすぐに才能を発揮し笑った馬鹿どもを黙らせることに成功する。当然と言えば当然だ、何度も言うがそもそもの下地が違う。有象無象の塵芥どもと同じ空間にいることが間違っているのだ。


 そのまま私は一年も経たずに首席へと上り詰めた後、歴代最年少で卒業を果たすと、とんとん拍子で1番有名なアトラス研究所での研究を許されるという、まさに選ばれし者の輝かしいルートを歩む。


 そこから5年の月日を要して、集大成とも言える研究を完成させたのだったが、そこからだった。私の歯車が狂い始めたのは。


「研究の打ち切りが決定した。これ以上、君の支援はできない」


 寝耳に水だった。突如所長に言われた言葉が理解出来ずに、思わず問い返す。


「どういう……ことでしょうか?」


「言葉通りの意味だよ」


 私の問いかけに、目の前で豚のように肥え太った男はため息を吐きながら鳴き始める。その態度が私を余計イラつかせた。


「君の研究レポートを見せてもらったが……余りにも危険過ぎる。あんな物、世の中に出してはいけない」


「お言葉ですが、私はそうは思いません。一見危険に見えますがその応用性は今後の発展にも――」


「言い訳はいいよ。もう決定事項なんだ」


 私の言うことを理解しようともしない目の前の豚は、そのだらしない体を醜く揺らしながら優越感のこもった瞳で高説を垂れ続ける。


「君は優秀なのだからもっと真っ当な研究をしなさい。ほら、確かギルフォード君が助手を探していただろう?今からでも遅くない、それに志願して――」


 そしてあろうことか私が1番嫌いな人種である、親の力でしかその立ち位置を勝ち取れない無能の下につけと、そうのたまったのだ。それが何よりも屈辱で堪らなく許せなかった。


「――だかガッ……」


 気づいた時には目の前で豚が血を流して倒れていた。私の右手には普段モルモットに使うメスが血塗れで握られている。どうやら私がやったようだった。


「くくっ……くくくっ、あはははは!!!」


 豚を処分した。そのことを理解した瞬間、どうにもならないほどの開放感を覚え、思わず心からの笑みが漏れる。


 そうだ、私は間違っていないのだ。私の崇高な考えを理解出来ないその他大勢など生きている価値はなく、故に私がやった事は正しい。そう思いながらも私は部屋を出て外に向かう。


 しかし、街を歩く私に襲ってきたのはどうしようもない恐怖だった。アドレナリンが切れたのかとんでもないことをしでかした事に今更気付き、体が震え始める。


「やめろ、そんな目で見るな……」


 それに加えて周りの人間が責めるように此方を見ているように感じ、それが殺した事だけでなく私の研究すらも責めているように思えて仕方がなかった。


「何故だッ!何故私を認めようとしないッ!」


 恐怖と怒りでごちゃ混ぜになった私が思わずその思いを吐き出すと、周りが視線を外しながら避けていく。その様子に少しだけ心が救われたのを覚えている。


 そうしてあてもなく彷徨って、ようやく行き着いた場所が――なんと教会であった。


「ははっ……」


 乾いた笑いが出る。何故かはわからないが、あれだけ嫌っていた神に縋ろうとしている自分に絶望してほとほと呆れてしまっている事は確かだった。


「ようこそ、お待ちしておりました」


 雨の中呆然と立ちすくむ私に、中から神父が現れると意味深な笑顔で声をかけた。


「……誰だ」


「落ち着いて下さい。こんな雨です、まずは中に入ったらどうでしょう?」


 私の問いかけに全てを見透かしたような目をしながら中へと招き入れる神父。その声があまりにも穏やかで、一瞬のうちに心を許してしまった自分がいることに驚いた。


「それで、お前は何者なんだ」


 まんまと誘いに乗った私は改めて神父を視界に収める。真っ白な背表紙に金色のベルトのような留め具を付けた本を胸に携えており、声と同じような穏やかな笑みを浮かべてはいたが、その姿は何処か悪魔のような存在に見えた。


「私は、神の代弁者です」


「代弁者……?」


「はいそうです、ニエンテ様」


 笑顔のままの神父が不意に私の名前を呼んだ。ただでさえ信用できない人間に素性が知られていることに警戒心を強める。


「何故、私の名を?」


「当然ですよ。アトラス史上最高の研究者なのですから」


 神父の一言に胸がすいたような思いを感じる。見えすいたおべっかだったが、今の私にとっては救いの言葉でもあった。


「当然、先程貴方が行った事も知っていますよ」


「それは……」


「あぁ、責めるつもりはありません。アレは必要のない人間です。むしろ貴方は正しいことをしたんですよ」


「なっ」


 まさか肯定されるとは思っても見なかった私は驚愕の声を漏らす。それと同時に何か許されたような感覚になり、心の重荷が少し軽くなった気がした。


「そんな貴方に協力して欲しいことがあります」


 相変わらず私の全てを見透かしているような目をして、警戒心を与えない穏やかな声を発する神父が、笑みを深めながらそう口にした。


「協力?」


「えぇ」


 頷いた神父は目の前まで歩いてくるとその右手を私の眼前へとかざす。


「今から神の力を見せます。説明するよりも早いですから」


「何を……」


 そう言った神父の右手から淡い光が出ると私の脳内にイメージが流れ出す。それはこの世の真理であり、この世の全てと言っても過言ではないもので――気づいた時にはその両の目から涙が溢れ出していた。


「そうか、私はこのために生きていたのか……」


 全てを理解した私はポツリと呟く。私に与えられた役割と使命を再認識すると、先ほど豚を殺した事どころか、今までの人生がとても粗末でくだらない物のように思えた。


「それで、協力いただけますでしょうか?」


「あぁもちろんだ」


 神父の言葉に私は頷きながら返す。そうして私の信条はこう塗り替えられた。


『すべては、神の御心のままに』


[TOPIC]

QUEST【死を孕む病の群れ】

[攻略チャート]

1.【料理人職】を持つプレイヤーがいる状態で虹リスに遭遇

2.その後ろを着いていくとグリムリーパーと遭遇

3.グリムリーパー撃破後、虹リスが同行するように

4.虹リスの好感度を上昇させる

(主に料理アイテムを与えるなど。マイナスに振りきれると虹リスは居なくなる)

5.一定数好感度が上がっている状態で『ハカアラシ』と戦闘

(『ハカアラシ』との遭遇は基本低確率だが、【セル爺のお願い】ではイベント戦のため100%遭遇可能)

6.『ハカアラシ』を撃破すると【感染】状態で復活。再戦闘

7.プレイヤー側の誰かが状態異常【感染】になると虹リスが援護のため戦闘参加し【聖域】を張る

(想定ではここで【感染】の効果が公になる予定だった)

8.街に戻ってしばらくすると虹リス誘拐イベントが発生 ※分岐地点

(阻止できた場合⇒9へ/できなかった場合⇒クエスト失敗)

9.キーロのNPC8割が中央に集合することをトリガーにレイドクエスト発生

(今回は運営主導のため達成したが、本来であれば領主とのイベントを実施する必要があった)

10.虹リスの【聖域】の力で感染の力を抑える

(シナリオ的には好感度を上げていたプレイヤーが感染した後に虹リスが覚醒して【聖域】の範囲が広がる予定であった。※今回はシャボン玉で無理やり範囲を広げた)

11.黒い影が虹リスを襲う。

(阻止できた場合⇒次戦闘にて虹リス参加なし/できなかった場合⇒虹リス参加)

12.逃げた黒い影を追うと白衣の男ニエンテを見つける。

13.『ハカアラシ・ミュータント』と戦闘

14.【DDD-448】を打つものの聖獣には効果がない

(※誘拐を阻止しなかった場合)

15.撃破後、激怒したニエンテが『ミュータント』化→戦闘

16.撃破してクリア


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 先程確認ししました 確かにサブタイは【セル爺のお願い】だけど、正式のクエスト名は【頑固爺の雑用係】のはず
[一言] これからも死んでも巻き戻るならNPCの命がどんどん軽くなってくな 運営泣いていいよ
[一言] 神がいないと証明するのならば、神のことを誰よりも理解しなければならない。 ____多分矛盾点が無かったんだろうね。だってそれをした者は今は敬遠な信徒なんだから。
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