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2-43 死を孕む病の群れ⑦


「コレハ一体……?トリアエズ邪魔ダ」


 状況を把握しようと辺りを見渡そうとしたレドは一先ず目の前でもがいている【ハカアラシ】をそれぞれ持ち上げると、まるで紙くずを投げるように軽々と放り投げる。


「んなっ!?」


「!’4%$”&(”#!?」


「#&(’W(Qン”%ギ!?」


 放り投げられた【ハカアラシ】はニエンテに向かって綺麗な放物線を描きながら飛んでいく。


それに気が付いたニエンテが慌てて飛び退くと、その場所に折り重なるように【ハカアラシ】が積みあがった。


「デ?ココハ何処ナンダ?」


 パンパンと汚れを落とすように手をはたいたレドは振り返ってレイに問う。


「確カ兄貴達ト晩酌シテイタハズダガ……トイウカ兄弟ハドウシテアソコデ寝テイルンダ?」


 腕を組みながら思い出すように話すレドは近くで倒れているじゃしんを指さして首を傾げる。ただ、レイにはそんな些細なことをこたえている余裕はなかった。


「え~と、悪いけど説明している時間はないんだ!あいつが敵だから倒して!」


「フム」


 慌てた様子でニエンテ達を指さすレイの姿に、レドは何となく状況を察して頷く。


「良イダロウ、お前達ニハ借リガアルカラナ」


「時間は3分くらいしかないんだけどいける!?」


 レイが焦ったように問いかけると、レドはそれを鼻で笑いながら答えた。


「フン、俺ヲ誰ダト思ッテイルンダ。オアツラエ向キニ満月モ出テイルシ余裕ダナ」


「くそっ!いけハカアラシ!」


 突如現れた強力な助っ人に対して、ニエンテは初めて焦ったような声を出す。その勢いに任せて【ハカアラシ】達を突撃するよう指示を飛ばした。


「&%$G")%"!!!」


「!ギ$)&(=~Q!!!」


「遅イ」


 思考もなくただ命令に従って真っすぐに突っ込んでくる【ハカアラシ】をつまらなそうに一瞥すると、レドの姿がその場から消える。


「ピ$=ギ!?」


「ギィA#&$!?」


 その後【ハカアラシ】の傍に赤い線が入ったかと思うと、横方面からの衝撃によって吹き飛ばされる。


「なっなっ!」


「コノ程度モ倒セナイナンテ、相変ワラズ弱ッチイママノヨウダナ」


 驚いて声も出ないニエンテを他所に、いつの間にかレイの隣に戻っていたレドがニヤニヤと馬鹿にするような眼でレイを見る。


ただレイはタイムリミットのせいでそれに構っている余裕を持てない。


「そういうの良いから!早く倒してよ!?」


「分カッテイル」


「ふ、ふはははは!」


 レイの催促にレドがやれやれと首を振っていると、何かに気付いたニエンテが高らかに笑いだす。


「何ガ可笑シイ?」


「貴様、今モルモット共に触れたなぁ!?じゃあお前は【感染】したというわけだ!」


「あっ!」


「【感染】?」


 勝ちを確信したように嬉々として話すニエンテにレイはしまったと顔を歪める。


「私の開発した【DDD-448】は媒体さえいれば空気からも感染する!この濃度なら触れた時点でお前はもうおしまいだ!」


「レド!大丈夫!?体に異変は!?」


「イヤ何トモナイガ?」


 この状態でレドまで敵に回った場合絶望的だと判断したレイが心配の声を上げるも、それにケロッとした様子で返すレド。


その瞬間ニエンテの表情は笑顔のままでピシリと石のように固まった。


「あれ?本当に何ともないの?」


「ナイ。お前等人間ト一緒ニスルナ。ソモソモコンナ子供騙シ、俺達ニ効クト本気デ思ッテイタノカ?」


「こ、子供騙しだと……!?この私の研究が……!?」


 その心底どうでもいいとでも言いたげに吐き捨てた言葉を聞いて、ニエンテは愕然とする。


何十年と心血を注いできたものが無駄だったと知った彼はこれ以上ないくらいに動揺していた。


「ソレデ?他ニ何カアルノカ?」


 それを無視するように首をぽきぽきとならすとゆっくりと歩きながらニエンテへと向かっていく。その後ろではレイがじゃあ早くしろとヤジを飛ばしていたが、レドはそれすらも無視した。


「お、おいモルモット共!もっと増殖を――」


「マァソレニ付キ合ウ気ハナイガナ」


 落ち込んでいる場合ではないと気づいたのか、怯えた目でレドを見据えながらも【ハカアラシ】に指示を飛ばすニエンテ。だが、目の前にいる怪物はそれを許す事すらしなかった。


 再度、一瞬だけ全員の視界から消えると、その両手に【ハカアラシ】2頭の首根っこを掴んだ状態で元の位置まで戻ってくる。


そしてそのまま自身の身長ほどもある【ハカアラシ】達を軽々と上空に放り投げた。


「「~~~~~~~!?!?!?」」


「終ワリダ」


 声にならない叫びをあげながら空中でもがく【ハカアラシ】達に対して、レドは爪をはやしながら跳躍する。そのまま交差する刹那にハカアラシ達をバラバラにしてポリゴン状態に変えた。


「サテ」


「ヒッ!?」


 華麗に着地したレドがくるりとニエンテの方を向くと、情けない悲鳴を上げながら後退る。


「次ハオ前ノ番ダナ?」


「く、来るな!化け物!」


 ゆっくりと歩くレドに対してさらに後退るニエンテだったが、腰が引けているのか上手く動けずに尻餅を搗いてしまい、レドはそれに容赦なく近づいて爪を研ぐ。


そして右手を振り上げて全てを終わらせようとしたまさにその時、その足元に黒い魔法陣が浮かんだ。


「ム?」


「あ、時間でーす!お疲れさまでしたァ!」


 突如現れた魔法陣にレドが眉をひそめるとレイの手の中にあるイブルの声が響く。


それと共に紫色の稲妻が発生すると土煙を上げて、それが晴れるころにはレドの姿は見えなくなっていた。


「た、助かった……?」


 目の前から化け物が消えたことにニエンテは茫然とした面持ちでぽつりと呟く。


「ふぅ……」


 それにレイはやれやれと首を振ってから大きく息を吸い込んだ。


「だから早くしろっていったじゃん!!!!!!」


 直後、レイの魂の叫びが【ヘイラー墓地】に木霊した。


[TOPIC]

ITEM【DDD-448】

正式名称『DEAD・DAY・DREAM-ダブルフォーエイト』。

試作品より大幅に濃度を増したその作品は、莫大な力を手に入れることが出来る。

その代わり、代償として失うものは計り知れない。

効果①:対象を【狂化感染】状態にする


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! うん、、、余裕噛まして退場、、 そして強いな、ホント、、、 うーん、、、次はどうするんだろう、、、
[一言] 誉めると言うか第三者的「事実」ですね(笑) あまり論理的に言語化しようとすると、評論家みたいな偉そうな文章(一度綴ったが自分でも鼻についたので削除)に成ってしまうので自粛しますが(苦笑) …
[一言] 余裕かましてダメだったらすごく恥ずかしい
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