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2-41 死を孕む病の群れ⑤


「フハハハハハッ!遅い遅い!」


「%#ァ&ギ!?」


 正面から突っ込んでくる【ハカアラシ】を闘牛士のように修道服をひらりとはためかせながら避けると、その脇腹に蹴りを入れる。


「おまけにこいつもプレゼント!」


「%&#"'Qギ#%'ャ"!?」


 続けてバランスを崩した【ハカアラシ】の顔の側面に弾丸を2発入れこむと、【ハカアラシ】は声にならない悲鳴を上げて大きくのけぞった。


「アハハッ!めちゃくちゃ動きやすい!重りを外した気分だね!」


 ぺけ丸から貰った【星空の修道女】による効果を実感して、レイは笑いが止まらない。それくらい今の彼女にはなんでもできる全能感があった。


「……何故貴様は【感染】しない?」


「あ?何急に?」


 そんな縦横無尽に駆け巡る様子にニエンテは心底不思議そうな顔をしながらレイに問いかける。一方で楽しい時間を邪魔されたような気分になったレイは露骨に嫌な顔をした。


「今回使用した【DDD-448】は普通のものよりも何倍もの濃度で作った。普通の人間ならば近付いただけで感染するはずだが……」


「あぁ、私には『神』の加護がついてるから。ね、じゃしん?」


「ぎゃ、ぎゃう」


 ニエンテの問いかけにドヤ顔で返したレイが振り向くと、そこには寒気を感じるのか腕を交差させて震えているじゃしんがいた。


「あ、結構辛そう。だめだったかぁ」


「なるほど、ソイツが……腐っても鯛というわけか。面白い」


 やはりどこか締まらない様子にレイは若干肩を落とす。一方で研究者魂に火が付いたのかニエンテはおもちゃを見るような目でじゃしんを見つめた。


「そんな余裕ぶってるけど自分の心配はしなくて良いの?見た所この子あんまり戦闘向きじゃあなさそうだけど?」


「ほう?」


 思考に耽るニエンテに対してレイは挑発的な笑みを浮かべながら【ハカアラシ】を指さす。いくら装備によって強化されたとはいえ、あまりの手応えの無さに違和感を覚えていたレイはとある仮説を立てていた。


「その【ハカアラシ】ってどちらかというとギミック特化でしょ。さっきの話を聞くに近接は圧倒的不利で遠距離から対処してくださいねって奴。特性が厄介な代わりにモーションは単純だから、私みたいに効かないのが相手だと大変なんじゃない?」


「ふむ、悪くない考察だ」


 レイの指摘にニエンテは否定をしない。ただ余裕の表情が崩れる様子もなかった。


「ならこれはどうだ?」


「|$ギ%TWュ%#ラ&#!」


 ニエンテがぱちんと指を鳴らすと【ハカアラシ】が吠える。すると地面の影がグジュグジュと動き出し、やがてもう一体の【ハカアラシ】を形成した。


「……そういえばそんな能力あったね。その状態でも使えるのか」


「ぎゃう!ぎゃう~!」


 敵が増えたことにじゃしんが『調子に乗るから!』と言いたげにレイの肩を揺らす。


「いやー悪かったって。だって余裕だと思うじゃん……ほら、くるよ!」


「ギ%$ァ!」


「%+#&”ギ&ィ!」


 じゃしんを宥めながらも視線を前から離さなかったレイは、肉薄する【ハカアラシ】に弾丸をそれぞれ一発ずつ打ち込む。だが、その弾丸は片方が庇うように二発体で受け止めたことで、もう片方が勢いを殺さずにレイへと距離を詰めてきた。


「ちょっ、連携取ってくるのはずるいでしょ!」


初撃をかろうじて躱したレイだったが、そこへ遅れてきたもう一体の【ハカアラシ】が、再びレイへと突撃する。


「ッ!」


 予想外の連携に一瞬体を硬直させたレイは、止まった体を跳ね上げて無理やり横向きにすると、【ハカアラシ】の上を転がるように滑り、ふらつきながらもなんとか着地して息を吐いた。


「くっそ、もっと速さがあれば……そうだ!じゃしん、あれを!」


「ぎゃう?ぎゃう!」


 何とか距離を離したレイは舌打ちする。そこでとある能力を思い出してじゃしんに声をかけた。声をかけられたじゃしんは最初首を傾げていたものの、心当たりにピンときたのか右手の握りこぶしを左手で作った掌にのせた。


「いくよ!『じゃしん結界・月満(filled)ちた時(moon)』」


「ぎゃう~!」


「ほう…」


 じゃしんが両手を高々と上げると景色が一変する。


 場所は【ヘイラー墓地】から【スーゼ草原】へ。濃い霧で包まれた墓場は満月が浮かぶ草原へと移り変わり、その光景にニエンテは感心したように息を漏らした。


「これで全ステータス2倍!速さも2倍!」


 形勢逆転と言わんばかりにニヤリと笑ったレイが確認のためその場で少し動いて――そこでふと気付いた。


「あれ、なんか思ったより……?」


 想定していたよりも動きやすさが変わっていないことに疑問を持ったレイはステータス画面を開く。


========================

NAME レイ

MAIN 【邪教徒Lv.2】

SUB 【召喚士Lv.1】

HP 20/20

MP 120/120(20+100)

腕力 20(10*2)

耐久 20(10*2)

敏捷 70((10*2)+50)

知性 20(10*2)

技量 20(10*2)

信仰 780((120*2*2)+100+200)

SKILL 【邪ナル教典】【懐柔】

SP【敬虔ナル信徒】【自己犠牲】【両利き】

BP 0pt

称号 【月光組織の一員】

========================


「あ、これ装備の分は二倍されないんだ……っておわっとぉ!?」


 そこに記載されていた数値を見て初めて知った情報に驚きつつも感心していると、そこに容赦なく【ハカアラシ】達が突っ込んでくる。


 そのうちの一体の背中を踏みつけて宙を舞うと、その勢いのまま大きく距離をとる。ごろごろと転がりながら着地して急いで立ち上がるとニエンテに銃を突きつけた。


「ちょっとずるいでしょ!」


「お前の事情など知らんが?」


「矜持ってあるでしょうが!変身中は攻撃しないのがお約束……ってん?」


 面倒そうに答えるニエンテに対してレイが文句を言おうとした時、レイの腰辺り――正確には腰に携えた本が光り輝いていた。


「何これ?」


[信仰が666を超えました。スキルを解除(アンロック)します]


 その光り輝く本をレイが手に取ると普段とは違う聞きなれない機械音声と共に、本の隙間から黒い光が漏れだしていく。


「え?」


「何っ!?」


 突如と発生した異常事態(イレギュラー)にそこにいるすべての者が眉根を寄せる中、世界の声(アナウンス)はさらに鳴り響いていく。


[【邪ナル教典】が開かれます……]


[TOPIC]

MONSTER【溺れ狂うハカアラシ】

墓荒らしは罰として生涯の苦痛を与えられ、傀儡となって眼に入ったものを破壊する。

獣魔種 固有スキル【増殖】


《召喚条件》

【ハカアラシ】に【DDD-448】を使用。

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― 新着の感想 ―
[一言] ステータスに【両利き】が無いですが取ってますよね?
[一言] アンロック条件がバフ込みでおkってそれでいいのか【邪ナル教典】
[一言] あの、すみません 続けてバランスを崩したハカアラシの顔の側面に弾丸を2発入れこむと、声にならない悲鳴を上がりハカアラシが大きくのけぞった。 「悲鳴を上がり」では少し変だと思うのですが 「悲鳴…
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