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8-29 不穏な空気を感じて

本  日  発  売!

書籍三巻、本日発売です!めちゃくちゃ内容ゲストその他諸々豪華に仕上がってますので、ぜひ買ってください!!!


「【ソーラーストライク】!」


「グラァ!」


 上空では、人龍一体の騎士達が華麗に舞う。迸る雷撃を踊るように躱しつつ、一際強い輝きを放つ龍に乗った騎士が灼熱の突きを繰り出していく。


「総員、うち続けろ!反撃の隙を与えるな!」


 一方地上では、統率の取れた軍隊の姿があった。現代兵器を担ぎあげ、休む暇なく繰り出していけば、絶え間ない爆撃が【シャクラ】の体に襲い掛かった。


・やっぱトップクランって凄いんだな

・これ倒すのも時間の問題では?

・見てるだけでいいのか?


 それ以外にも多くのプレイヤーから降りかかる攻撃の雨霰。それに対し【シャクラ】はただでさえ鋭い視線を更に険しくさせる。


 確実に削れていくHPゲージにコメント欄では焦ったようなコメントが流れ始め、それに同調するようにニャルとじゃしんがあたふたとし始めた。


「にゃにゃにゃ……我々もそろそろ戦いに出るべきでは!?」


「ぎゃうぎゃーう!」


「初めて意見が一致したにゃね!よし、じゃあ早速――」


「気を付け!」


「にゃっ!?」


「ぎゃ、ぎゃう!」


 そうして二人が飛び出していこうとした瞬間、レイによる鋭い一喝の声が響き渡る。それによって背筋を伸ばした二人は、その場で膠着したまま冷や汗を垂らした。


「誰が動いていいって言った?それに、まだ半分も切ってないんだから焦りは禁物だよ」


・鬼教官のいう事は~?

・ぜった~い!

・体に沁み込んでて草


「何言ってんの?君達にも言ってんだよ?」


・アッハイ

・すんません……

・調子乗ってました……


 そこへ、ゆっくりとやってくる教官(レイ)。スラミンとの会話を途中で切り上げた彼女は、二人だけでなく視聴者にも睨みを聞かせながらため息を吐く。


「まったく……じゃしんはともかくニャルは一撃でも貰ったら終わりなんだからね?分かってる?」


「は、はいですにゃ……」


「ぎゃうぅ……」


 心底反省しているのを示すように、へたりと耳を閉じるじゃしんとニャル。悪気がないのも理解しているのか、レイは腕を組みながら悩ましげな声を出す。


「まぁ正直な話、気持ちは分からなくもないけどね。ただ今行ったってなにも出来ずに終わりそうだし、それにジャックがまだ動いてないしさ」


・あーそう言えば

・何してんだろ?

・ずっと座禅組んでるな


 ふとレイがジャック達の方を見れば、相変わらずジャックが座禅を組んだままじっと固まっていた。


戦闘が始まっても動きを見せない彼等に対して流石に不審に思ったのか、レイはその意図を探るために聞き耳を立てる。


「――どう――?行け――か?」


「――まだ――。――足りねぇ」


「――なに、焦る必要は――。アレが来る――少し先に――そう――」


 ミナト、ジャック、ミオン……彼等の会話から聞こえてきた断片を繋ぎ合わせながら、レイは自身の記憶からその内容の候補を探る。


「アレ……ねぇ、前に【WorkerS】がレイドボスに挑戦した時の事を覚えている人っている?」


・【WorkerS】?

・トーカが取った時のこと?

・あの猿みたいな奴か


 レイが提示したのは、以前【アポロ荒野】にてあったレイドボス戦のこと。それこそジャックの配信にて知ることとなった情報の為か、多くの視聴者が何を指しているのか理解する。


「あの時ってさ、なんか鼬の最後っ屁みたいなことしてたよね?」


・してたか?

・あったあった!

・あれのお陰で【WorkerS】の一人勝ちだったんだよな


 その上で、レイは確認の意味を込めてその中にあるワンシーンについて問いかける。


脳裏に浮かぶのは【天照大君 魃】が削れ、あと一息というところで放った一撃で、記憶が正しければ超広範囲に及ぶ、文字通りの必殺技。


それによって多くのプレイヤーがデスポーンすることとなったのだが、もしかしたら彼らが待ち望んでいるものがその一撃の可能性があることに辿り着く。


「ねぇ、誰かもう一体の討伐されたレイドボスについて情報持っていない?」


・持ってないなぁ

・映像もないしね

・誰も持ってないんじゃない?

・分かってるの名前だけだと思う


「そうだよね……」


 確信を得ようと更なる情報を求めるが、残念ながら欲しい情報を得ることが出来ないようだった。その答えをレイはある程度想定していながらも、深刻そうに眉間に皺を寄せる。


「……でも、一回起きたのなら今回起きてもおかしくない……これはちょっとまずいかも」


「にゃ?」


 目線を下に移せば、視線の合ったニャルが不思議そうな声を上げて首を傾げる。


レイの考えている懸念は、まさしくそのニャルに対しての事。もし仮に、その一撃が発動してしまえば、当然ニャルもその被害を被ることになるだろう。


そうなった場合、十中八九、ニャルは消滅してしまう……そんな最悪の結末が容易に想像できてしまい、レイは顔を顰めた。


「ウサ、スラミン。ちょっといい?」


「ん」


「どうされました~?」


 現段階ではどうなるか分からない。ジャック達が待っているのが実は別のものかもしれないし、【シャクラ】の一撃が全体攻撃とも限らない。だが、嫌な予感を払拭できないレイは、先手を打つために頼れる仲間の名前を呼ぶ。


 快く返事をしてくれた二人に感謝の言葉を述べつつも、胸中に渦巻く不安を、思い至った経緯と共に伝える。すると、それを聞いた二人も同様の感情となったのか、眉間に深い皺を作った。


「なるほど。それは確かに危ういかもしれませんね~」


「そうなんだよ。だから私はここで離脱しようかなって思ってる」


・え?

・マジか

・もったいなくね?


 万が一を考えたレイが安全策を口にすれば、視聴者から残念がる声が上がる。それに後ろ髪を引かれつつも、ニャルの元へ歩き出そうとすると、その肩をウサが止めた。


「待って。私がニャルを連れていく」


「えっ、いいの?」


「うん。個人的にはユエの方が大事」


「にゃお」


 レイと同様に化身を連れてきていたウサが肩に乗るユエの顎を撫でれば、可愛らしい鳴き声が聞こえてくる。


 そんな彼女の提案に一瞬ためらいを見せたものの、レイは申し訳なさそうに頬をかいてそれに乗っかることに決めたようだった。


「ごめん……じゃなくて、ありがとうかな。ニャルのことよろしくね」


「ん。シフォンにも声を掛けてくる――」


 レイの言葉に力強く頷いたウサが、同じく化身を連れたシフォンの元へ歩き出す――その時だった。


「ウサ?どうしたの?」


「……あれは誰?」


「え?」


 ふと足を止めたウサが、何かに気付く。その指が辿る先をレイが追えば、そこには。


「あぁ、良い眺めだ……」


「……」


全身黒づくめの人間が二人、宙に浮かんで戦場を見下ろしていた。



[TOPIC]

SKILL【ソーラーストライク】

陽を浴びて、火を灯し、非を穿て。

効果①:光属性の斬撃ダメージ(<腕力>+<信仰>*3)

効果②:相手に付属された特殊効果を無視

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 完結なんですか?これで
[一言] いい最終回でした。 私たちの冒険はこれからだ! って感じがよく出ています
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