表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
378/399

8-28 雷公の首を狙う者達

書籍三巻の発売日は11月30日!もう一度言います!明日!明日ですよ!


「はぁっ!」


「グルァ!」


 凛々しくも勇ましい一声が、雄々しい咆哮と共に戦場へと木霊する。


 声の主たる白銀の竜騎士は、天高く君臨する【シャクラ】にも怯むことなく立ち向かい、携えた長尺のランスを容赦なく突き出していく。


 その一撃は灼熱の如く熱を持ち、決して少なくないダメージを与えていく。それは身じろぎした【シャクラ】の姿からも伝わるものがあるようで、レイは二重の意味で驚いた声を漏らした。


「あれって、アポロとイッカク……!?どうしてここに……」


「レイ、あれ」


 イッカクの一騎当千の活躍をレイが目を見開いて見つめていれば、隣にいたウサが新たな乱入者を指さす。


 さきほどイッカクが現れた時と同様、黒雲を切り裂いて現れたのは二十の騎兵。全員が翼竜に跨って【シャクラ】へと攻撃を繰り返す姿に、今度はスラミンから注釈が入った。


「どうやら【聖龍騎士団】も参戦するみたいですね~」


「【聖龍騎士団】……」


・あれが【聖龍騎士団】なんだ

・かっくいい

・初めて見た


 ポツリと呟いたレイの気持ちを代弁するかのようにコメント欄が感想で埋まっていく。彼女自身、噂には聞いたことがあったものの、実際にその目で見るのは初めてなようであった。


「みんな、落ち着いてね。いつも通りに行こう!」


「「「了解!」」」


 先陣を切るイッカクの口から鼓舞を含んだ指示がとべば、周囲を飛ぶ【聖龍騎士団】が速度を上げて展開する。


 彼等の動きは、圧倒的な個を生かすためのモノ。イッカクとアポロの邪魔にならぬような位置を取り、その上でヘイトが一極化しないようにヒットアンドアウェイを繰り返していく。


 おそらくこれが彼等の集団戦の形なのだろう、【シャクラ】が周囲を飛び回る彼等に狙いを絞り切れず、翻弄されつつあった。


・すごい

・かっこよすぎんか?

・空飛べるのいいな


「うん……でもどうしてここに?」


 その姿に視聴者が羨望の声をあげれば、レイもまた同意するように舌を巻く。ただ、その中で一つ気になった点をぽつりと呟いた。


「簡単な話だ。俺達にも打診が来た、ただそれだけだ」


「えっ、ギーク!?それにまさか後ろにいるのは……」


 それに答えたのは、もはや見知った顔となった軍服を纏う青年の姿。ただその背後には、同様の服装をしたプレイヤーが十数人、綺麗に整列した姿で立っている。


「俺のクランメンバー達だ。もっとも、数は随分と減ってしまったがな」


・【WokerS】ってこと?

・随分と数が減ったんだな

・まぁ色々あったし……


「なんだ、意外と人望あったんだね」


「……本当にな」


 レイが軽口を唱えれば、ジャックは否定することなく微笑みながら呟く。その様子と、背後に控えるプレイヤー達の自信満々な姿に、彼等の信頼関係が見え隠れしている。


「これは……もしかして敵に塩を送っちゃったかな」


・ありそう

・前より強そうだもんね

・まぁ【じゃしん教】も負けてないよ


 少数にはなったものの、精鋭が集まったことで以前よりも強力となった【WorkerS】の姿に、たまらずレイが視聴者に小声で弱気を漏らす。


ただ、その表情は不安よりも愉快な感情の方が色濃く出ており、励ましのコメントに感謝の言葉を述べつつも、改めてギークへと視線を合わせた。


「それで、打診があったって?どういうこと?」


「そこにいる男から一緒に討伐しないかという話を持ち掛けられたんだ」


「え?」


 ギークが指さした先には、ジャックの姿があった。目を閉じ、座禅を組んだ状態でじっとしており、それに対しても疑問を覚えたレイだったが、それ以上に何故わざわざギークの説明にある行動の意図が理解できない。


「どういうこと……?」


「恐らくイッカク達も同じだろう。どう考えても裏があるが、乗らない理由もないからな」


 茫然と呟いたレイに、ギークの説明が続く。確かにそれであれば、イッカクだけでなく【聖龍騎士団】がこの場に現れた説明が付く。だがジャックという人間をよく知っているレイにとって、あまりにも府に落ちない。


「わざわざ手に入れた情報を公開するなんて、ジャックらしくない……ねぇ、ギークはどう考えてる?」


「そうだな……個人では削り切れないと判断した、と考えるのが妥当だろう」


「まぁ、それしかないか……」


 問いかけに対してギークが返答すれば、レイは思考しながらも曖昧に頷く。


想像した中でも一番現実味があった内容だったが、わざわざトッププレイヤーを呼ぶというのは相当なリスクを孕んでいる筈。それでもあえて声をかけたということは、必勝法とやらに相当な自信があるのだろうとレイは結論付けた。


「でも良く来たね。化身がいるから余計なリスクは取らないんじゃなかったの?」


「は?」


 これ以上考えても答えが見いだせないだろうと感じたレイが、ふと雑談混じりに話を変えれば、心底呆れた声がギークの口から漏れる。


「ベースキャンプに置いてきたに決まっているだろう?……ってお前まさか」


「……そうなの?」


「どうかしましたかご主人?」


 至極当然ともいわんばかりの一言に、レイがゆっくりと視線をずらす。その先にいたニャルが不思議そうに首を傾げれば、ギークの口からそれはそれは大きなため息が零れた。


「まぁお前の自由だからいいんだが……危機感は持った方が良いとだけ言っておく」


「うん……肝に銘じるよ……」


 怒りというよりは憐みの籠った言葉に、レイは恥ずかしそうに俯く。そこへ、複数のプレイヤーの声と共に向かってくる足音が聞こえてきた。


「こんだけいれば……!お、おい俺達も行こうぜ!」


「そうだよな!もしかしたらワンチャン……!」


「だれか!即席でパーティ組んでくれない!?」


「野次馬が集まって来たか……。『きょうじん』、俺達も好きに動かせてもらうぞ」


「オッケー。誰がとっても恨みっこなしだよ」


 騒ぎを聞きつけてきたのだろう、賑わいを増す周囲の状況にギークがレイに向けて一言入れれば、続いて自身のクランメンバーに語り掛ける。


「総員に告ぐ、削りは基本的にアイテムを使って行う。狙うはラストヒットだ、そのために大技は残しておけ。いいな?」


「「「はっ!」」」


「それから一つ、俺へのお膳立ては不要だ。自分が必ず手に入れるくらいの気概で臨むように。以上、質問がなければ作戦に取り掛かれ」


 イッカクとは対照的な指示を受け、【WorkerS】の面々は懐から銀色に輝く筒状のアイテムを取り出す。


「総員構え……発射!」


 そのまま肩に担ぐと、ギークの号令と共にトリガーを引く。それと同時に爆音が鳴り響けば、人の頭ほどの弾が一直線に【シャクラ】へと向かっていき、そのまま頭部へと炸裂する。


・すごい

・ものすごい勢いで削れてるな

・レイドボスってこんなにも柔らかいんだ……


「……これはうかうかしてられないね」


 その一回で、僅かながらも【シャクラ】のHPを減らしてみせた【WorkerS】の姿に、レイもすぐさまスラミンの元に向かっていく。


 閑静な渓谷にて始まったレイドボスの争奪戦が、はやくも激しさを増そうとしていた。


[TOPIC]

CLAN【聖龍騎士団】

クランメンバー全員が【竜騎士】の職を持つ、少数精鋭クラン。クランリーダーは【イッカク】。

元々は先駆者たるイッカクの姿に憧れ、人柄に惹かれた者が集まって設立されたファンクラブのようなものだった。そのうち、現副リーダーによる熱心な勧誘によって、イッカクが折れる形で加入する。そのため、トップはイッカクだが、実際の運営は副リーダーが行っており、体制としては【じゃしん教】と相違ない。

加入条件は【竜騎士】であること。ユニーク職ではないものの、かなり取得条件の厳しいジョブのため、クランメンバー自体は少ないが、それに見合った実力を備えた他にないクランであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] そえば書籍のイラストみたけどギークって大学生かそれより少し上ぐらいだっけ? いやなんかもっと老けてるようなイメージがあったん・・・ 必勝法・・・確実にトドメを刺せる手段かなー そのた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ