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8-22 まだ見ぬ強敵の力


「ふはは、やはりポンコツだにゃ!我々の動きに全くついて来れてにゃいにゃよ!」


「ぎゃ、ぎゃう~……!!!」


 もはや聴き慣れた嘲笑の声と、それに対する不満そうな声がエリア一帯に響き渡る。


 どこから持ってきたか分からない青色のボールを持ったニャルが、地面に膝をつくじゃしんを見下しており、その両者の脇にはそれぞれ白と黒の猫が控えている。


「そもそも、基本の動きがにゃってないにゃ!そっちの子猫ちゃんが不憫でにゃらにゃいにゃ!」


「ぎゃ、ぎゃうっ!?ぎゃう……」


「にゃお」


 ニャルの言葉にじゃしんはガーンとショックを受け、膝をついたままがっくしと項垂れる。そこへ隣にいた黒猫が慰めるように頬を舐めた。


「ぎゃう……ぎゃうっ!」


「いいにゃ!何度(にゃんど)でも受けてたつにゃ!」


「可愛い」


「平和ですねぇ」


 そうして再び闘志を燃やしたじゃしんが、ニャルへと指先を突きつけて勝負を挑む。それを不敵に笑ったニャルがボールを地面において大きく蹴り飛ばす。


 そんな三体の化身とじゃしんの戯れをウサとシフォンが見守る中、レイはジャック、ミナト、ミオンの三名と円陣を組んでなにやら会議をしていた。


「それじゃあ早速。教えてくれる?【雷霆公主シャクラ】のこと」


「あぁ。つってもどこから話そうか……」


 先程までの渋っていた表情はすっかり鳴りを潜め、何から話し始めるか悩み始めたジャック。そこへレイが助け舟と言わんばかりに気になる事柄について訊ねる。


「じゃあまずはなんでここに来るって分かったのか教えてよ」


「ん?あぁ、それは簡単だ。レイドボスには移動する周期があるんだよ」


「周期?」


「レイドボスの出現する時間は1日3時間っていうのは知っていると思うが――え、知らない?お前何も知らないんだな……ゴホン、まぁそういう時間的制約があるんだ」


 説明の最中に首を大きく傾げたレイに呆れながらも、ジャックは調べ上げてきた情報を提示する。それによって頭の整理がついたのか、すらすらと説明を続けた。


「次に出現場所。レイドボスは十二個あるすべてのエリアで出現するんだが、一応出現位置が被らないように四体……まぁ今は二体だが、同時に移動するらしい」


「なるほど、それが周期ってことか。じゃあ次に【シャクラ】が来るのが【アーテナー渓谷】ってこと?」


「あぁ。ついでに言うと、出現位置はさっきの場所になると思われる」


 ジャックの解説を聞いて、このエリアにジャック達が訪れた理由を理解したレイは、続いて欲しい情報を要求する。


「なんでここにいるのかは分かったよ。次は【シャクラ】の性能についてよろしく」


「お前……いや、何でもない。【シャクラ】についてか、なんて言ったもんかね……」


 その圧倒的なまでの他力本願に呆れを通り越して恐怖すら覚えたジャックだったが、今更そこに言及することなく頭を悩ませる。


 恐らく説明するための言葉を選んでいるのだろう、腕を組みながらうーんと唸るジャックへと、ミオンが横から口を挟む。


「たしかレイちゃんは既にレイドボスと対峙しているんだよね?では、それと比較して説明したらどうだろうか?」


「あぁそっか、【ヨトゥン】と会ったんだっけか。じゃあ話が早いかもな」


 その助言によって比較対象を得たことで、ジャックにとっても説明がしやすくなったのか、先ほどとは打って変わって流暢に話し始めた。


「大きさは【ヨトゥン】とほぼ同じかそれより小さいくらい。一方で能力は全くの別物になってる。覚えているか、『環境耐性ゲージ』って言葉」


「うん、【極凍】だよね」


 かつて【ポセイディア海】で対峙したレイドボスの特徴を挙げれば、ジャックは頷きながら説明を続ける。


「【シャクラ】の場合、【帯雷】と呼ばれる状態異常に変わる。その効果は、いたってシンプル」


「どんな効果?」


「奴の攻撃が常時必中になる」


「……は?」


その効果にレイは思わず素っ頓狂な声をあげる。かつて出会った【ヨトゥン】の一撃必殺のような分かりやすさではなく、いまいちピンと来なかったため瞬時に強さを理解することができなかったが、対峙したことを想定すればするほどその厄介さに気付いていく。


「えっと、どっちみち喰らったらおしまいってこと?」


「そうだ。しかも【シャクラ】の攻撃が特殊でな、一人に当たると近くにいたプレイヤーに連鎖する形でヒットするらしい」


「えぇ、それは厄介……って、まさかその攻撃って……」


「もちろん。名前にもあるだろ、雷って」


 どうあがいても面倒な状況になることを想像して眉を顰めたレイは、ジャックの説明を聞いてさらに顔を苦々しく歪める。


「雨の代わりに雷が降ってくるんだ。当たったら痛いが、避けられないほどじゃない――ってどうした?」


「いや、ちょっと嫌なことを思い出しただけだから……」


「ぎゃう?」


 それは、自身の召喚獣の使ったとあるスキル。敵味方関係なく悉くを滅ぼした一撃が若干トラウマになっているのか、青い顔で頭を抱えれば、そんなレイの気持ちを知ってか知らずかじゃしんが小首を傾げながらレイの方を向いていた。


「なぁ、本当に大丈夫か?」


「あぁ、ごめん。大丈夫。でもちゃんと対策アイテムは用意してあるんだよね?」


「もちろん、対策アイテムは用意してる。後で教えてやるよ」


 心配そうに声をかけてきたジャックに慌てて顔を上げたレイは、全ての説明を理解しながらも、未だ懐疑的な目を向けて1番大事な部分について訊ねる。


「それは助かるけど……で、本当に勝てるの?勝率は?」


「あぁ、そこは安心しろ。見つけたのさ――」


 レイの問いかけに、今日初めて笑みを浮かべたジャック。そして自信満々に胸を張り、自慢するように勿体つけて言葉にする。


「――必勝法って奴を」


[TOPIC]

WORD【レイドボス】

『災害級の支配者達』イベントにて出現したモンスターの総称。【天照大君 魃】【雷霆公主 シャクラ】【砂塵嵐王 セテカー】【積乱霰帝 ヨトゥン】の4体が存在し、それぞれがフィールドを一定周期で移動する。彼らが出現すると天候が変わり、『環境耐性ゲージ』が出現する。

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