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8-2 気付けば遠い所まで


「はぁ、疲れた……」


 尊い犠牲の果てに、命からがら、疲労困憊の様子で二人の追求から免れたレイは聖堂内にいた別の集団へと合流する。


「レイさんお疲れさまです~」


「人気者は大変だな」


 そこにいたのはスラミンを筆頭とした怪しい覆面集団【じゃしん教】の面々と、トリスの率いる元【清心の祈り】の騎士達。ただそこに敵意はなく、何とも和やかに談笑していた。


「羨ましいなら変わってあげるけど?」


「遠慮しておく。それは勝者の特権だ。もっとも、今回は責任ともいうがな」


 レイがジト目で返せば、にやりと笑いながら冗談を返してくるトリス。


 以前とは随分様子が違うことに困惑しつつも、もしかしたらこれが素なのかもしれないとレイは考えを改める。


「それで、話はまとまったの?」


「はい、大体は~。【清心の祈り】は我々に吸収されますが、実際は別動隊という扱いになります~」


「別動隊?」


「そうだ。我々は今後、『じゃしん教暗黒騎士団』として活動していく」


 スラミンの説明に怪訝そうに目を細めたレイへと、仁王立ちしたトリスがその説明を引き継ぐ。


「あぁ、だから黒色の甲冑になってるのね……」


「あぁそうだ。他の団員からも好評でな。格好いいだろう?」


「…………まぁ、確かに」


 トリスの見た目、というよりも【清心の祈り】のメンバー全員の見た目が、美しい銀色から禍々しい漆黒へと変化していた。


 どういう心境の変化かと勘ぐっていたレイだったが、見せびらかすようにドヤ顔を浮かべるトリスをわざわざ否定する気にはならないようだった。


「別に個人的には同盟って形でもいいんだけどね」


「それでは約束が違うだろう?それに、クランリーダーが一番ノリ気だからな」


「そうですよ~。それに、お互いメリットしかないんですよ~?」


 またしても自分の知らないところで話が大きくなっている事に、レイは少し日和るような言葉を呟く。だがそれを肯定する人物は存在しないようで、もはや決定事項のように笑う二人を見て面倒くさそうにため息を零す。


「はぁ、またなんか大事になってきたなぁ」


・自分で蒔いた種じゃないっけ?

・お前が始めた物語だろうが!

・そういえば、ステータスってどうなってるの?


「私が悪いのこれ?えっと、ステータスはっと……ちょっと待ってね……」


 何故か自分のせいになっている事に釈然としないレイであったが、それはそれと気分を切り替えて、メニューより自身のステータスを表示させる。


=======================

NAME レイ

MAIN 【邪教徒Lv.7】

SUB 【魔法使いLv.7】

HP 260/260

MP 560/560(260+300)

腕力 10

耐久 10

敏捷 110(10+100)

知性 10

技量 10

信仰 1140((370*2)+100+300)

SKILL 【邪ナル教典】【邪ナル封具《神隠》】【神ノ憑代】

【初級魔法】【いなし】

SP【敬虔ナル信徒】【自己犠牲】【通過儀礼】

【属性付与】【魔力錬成】【両利き】【深化ノ徳・非仁無礼】


BP 0pt

称号 【月光組織の一員】【聖獣の良き隣人】【世界樹に寄り添う者】

【闇を振り払う英雄】【海を統べる自由な一味】【歴史を創る探究者】

【聖なる想いの継承者】

=======================


=======================

NAME じゃしん

TRIBE【神種Lv.7】

HP 666/666

MP 666/666

腕力 666

耐久 666

敏捷 666

知性 666

技量 666

信仰 666

SKILL 【じゃしん結界】【じゃしん賛歌】【じゃしん捜査】

【じゃしん硬貨】【じゃしん拝火】【じゃしん巨影】

SP【別世界ノ住人】【摂理ノ外側】

=======================


・随分と増えたね~

・あれ、今回は追加無し?

・称号くらいか


「うん、そうだ――ってあれ?」


 視聴者と共にステータスを眺めたレイは、とあるスキルに違和感を覚えて詳細を確かめる。


SP【深化ノ徳・非仁無礼】

真の信仰とは、己との対話。余計な思考は削ぎ落し、すべてを没頭させる他ない。

効果①:経験値取得量低下(50%down)


「これ、名前変わってない?しかも効果が強くなっているような……」


・言われてみれば……

・そうか?

・気のせいじゃない?


「いや、絶対そうだって。マジか~……」


 視聴者の中には気づいていない者もいるが、レイの言う通り名前が僅かに変更されており、低下率も大きくなっている。


 その事に気が付いたレイは少し萎えるように肩を落としたが、それも今更かと思考を切り替えるように首を振る。


「まぁいいか、経験値が手に入りにくいだけなら。面倒なだけで致命的なわけじゃないし」


・そうそう、ポジティブにいこう!

・戦闘面では超強化されてるしな

・確かに。攻撃だけならわりと何でもできるんじゃ?


「何でもは無理だよ、出来ることだけ」


 どこかで聞いたようなセリフを返しながらも、レイは自分の能力について考察する。


 いくつか制約に縛られているものの、魔法という攻撃手段があり、ステータス大幅上昇という必殺技を持ち、防御面では【いなし】という配信映えする技や、回復封じというレアなデバフも使用できる。


・それにカッコいい変形武器もあるし

・何それ詳しく

・あぁ、現地組しか知らないのか


「あぁ、【武神機巧】のこと?いいでしょこれ。あの分厚い説明書に色々書いてあったんだけど、まだまだ変形先はあるみたいだからお楽しみに」


・え?

・今なんて?

・マジ……?


 加えて、トップクラスの【鍛冶師】であるぺけ丸の、最高傑作と言っても過言ではない装備も持っているのだ。しかも、まだまだ底を見せていないようで、そのことに視聴者が戦慄する――。


・アレ全部読んだのか……

・欲しいと思ったけどあれ読むのは流石に……

・製作者も大概だけど、レイちゃんもおかしいよ……


「あれ?」


 ――訳ではなく、どうやら別のベクトルで引いているらしい。なにやら思っていた反応と異なる声に、レイが不思議そうに首を傾げれば、話題はじゃしんへと移っていく。


・じゃしんもスキル盛りだくさんだな

・景色変更、行動不能、探索、無差別攻撃、発火、巨大化か

・ピーキーだけどかなり面白い性能になったのでは?


「確かに、言われてみればそうかも」


 視聴者の声にレイも同意するように頷く。初めはどうなるかと思っていたし、今も満足しているとは言い難いが、少なくとも戦える性能はしている。


・にしても、こんなにも強くなるとは

・あんなに辛そうだったレイちゃんがなぁ

・嬉しいような寂しいような……


「いやぁ、まだまだだと思うけど」


「いやいや、十分上位勢ですよ~」


「そうだ。少なくとも我々に勝っているんだぞ?」


「うぇ!?そ、そうかな?」


 感慨深そうにコメントを残す視聴者にレイが照れるように頭を掻けば、それに追従するようにスラミンとトリスがレイを持ち上げて、さらにレイは照れていく。


 そうして一通りレイに褒め地獄を味わわせた後で、ふとスラミンがある方向を指差す。


「そんなことより~、いいんですか、アレを放っておいて~」


「アレ?」


「じゃしんとは、私の方が仲が良い」


「そうですか。ではここは譲ってくれてもいいですよね?」


「ぎゃうぁ……ッ!?」


 指差した先にあったのは、レイが置いて行ったじゃしんが、左手をウサに、右手をシフォンに掴まれ、引き裂き刑のように左右に引っ張られている光景。


片や無表情、方やにこやかな笑顔ではあるが、込められている力は尋常ではないようで、その被害にあっているじゃしんの表情が雄弁にそのことを物語っていた。


「あー、そろそろ助けに行くかぁ……嫌だなぁ……」


・レイちゃんのせいでああなってるのに?

・じゃしん……

・ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!


「ん?ヤバいって、なにが?」


 憂鬱そうに言葉を漏らしたレイが一歩踏み出そうとした時、突如コメント欄に異色のコメントが流れて目を止める。


・ヤバいよヤバいよ?

・いったん落ち着けって

・ワールドクエストが発生したらしい!!!場所は【アーテナー渓谷】!

・え?


「……それはヤバいね」


 まさしく、寝耳に水。寸分の狂いもない言葉通りの状況に、レイは思わず乾いた笑みを浮かべていた。



[TOPIC]

WORD【じゃしん教暗黒騎士団】

かつて【清心の祈り】だったクランが、全てを一新して名乗った名前。一応ゲームシステム的に合併機能はなく、内部的には【清心の祈り】のまま変わっていないが、その活動は【じゃしん教】及びそのトップであるレイとじゃしんを中心としているため、実質同一の下部組織として吸収されたといっても過言ではない。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 章が7のままだから次はなんの干支生物かなー 渓谷・・・馬・・・かな・・・ [一言] よかったねじゃしん両手に花(物理)で
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