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7-46 聖者を継ぐ祭祀に偲ぶは④


「ん……?」


 ブラックアウトした視界に、再び光が灯る。


 最後の記憶はもちろん、大蛇に飲み込まれた瞬間。だが、目の前に広がる景色はその時の情報とは一つもリンクしなかった。


「なにここ……これが蛇のお腹の中?」


「ぎゃう……ぎゃうっ!?」


 一番に視界に入ってきたのは、暗いピンクの空に浮かぶ黒い太陽。


 まるで悪い夢を見ているかのような、そんな異質な空間を目で辿ると、どうやらドーム状になっているようで、空と同じ色をした壁と地面が続き、その地面からは壊れた脊柱と石のタイルが乱雑に配置されていた。


「やっと来たか……」


「あ、いた!」


 正面から聞こえた呟きにレイが焦点を合わせれば、そこには腰をくの字に曲げ杖を突く教皇の姿。


 感情のない冷めた瞳に怯むことなくレイが指を差せば、隣で正気を取り戻したミーアが犬歯を剥き出しにして叫ぶ。


「ラフィアを返せ!」


「返す? それはお門違いだろう。そもそも最初に奪ったのは貴様の方だ」


 ミーアの主張に、それはこっちのセリフだと言わんばかりに教皇は眉を顰めて返す。


「かつて我が神を貶めた者を信仰するなどという、この上ない大罪を犯してまでその亡骸を手にいれたというのに。それが伽藍洞だと知った時の怒りは今でも忘れられん」


「やっぱりあなた達は……!」


「だがそれも、もはや過去の事。我が神の力を奪った『聖獣』に、我が心血を賭して育て上げた『器』、そして憎くも神をも超える力を持つ英雄共の『魂』を経て、今度こそ我が神の悲願は叶う……」


 ミーアの見せる鋭い視線にも、教皇は怯んだ様子はない。それどころか、もはや興味を失ったように一度空を見上げた後、再び感情の読めない濁った視線をミーアに向ける。 


「さぁ、貴様の体を寄こせ。我が神への供物とせん」


 教皇が手をかざすと同時、ピンク色の壁から黒い影が滲み出たかと思うと、蛇の形となって四方八方からレイ達に向けて襲い掛かってくる。


「ッ、【白蛇の逆さ雨ホワイト・ストリーム・スネーク】!」


「ミーア、ここは任せるね! じゃしん、行くよ!」


「ぎゃ、ぎゃう!」


 それを見たミーアもすぐさまスキルを発動すれば、地面から無数の白い蛇が這い出て黒い蛇を迎撃する。


 白と黒、相反する蛇が絡み合い、その体を食い合う中、レイはターゲットを教皇ただ一人に絞ると、じゃしんを連れて一直線に距離を詰めた。


「貴様は誰だ。部外者は消えろ」


「お生憎様! 帰れって言われて帰るほど素直じゃないんでね!」


 少しイラついた様子の教皇が手を振れば、それと連動して黒い蛇の一部がレイとじゃしんに迫る。だがそれに一瞬たりとも足を止めることなく、確実に弾丸で撃ち落としていく。


「もらっ――」


「来い」


 そうしてあと数歩、目と鼻の先という位置まで迫ったタイミングで、その間を隔てるように地面から何かが突き出てくる。


「えっ、『聖女』!?」


 レイの目の前に現れたのは、肉塊のような地面に下半身と両手両足を囚われたシフォンの姿。白目をして気を失っている様子に一瞬レイの足が止まると、教皇が淡々とスキル名を口にする。


「【狡猾な堕天使(セデューサー)】」


「あぁぁぁぁぁ!」


「ちょ、ちょっと大丈夫!?」


 その言葉と共に、シフォンは白目のまま絶叫する。その明らかに正気ではない様子にレイが心配する中、ふとその視界の端に黒い羽根が降り注いだ。


「これって……ッ、じゃしん!下がって!」


「ぎゃう?ぎゃうぁ!?」


 その光景に酷く既視感を覚えたレイは、すぐさまその場から飛び退くように指示する。対して一瞬遅れを見せたじゃしんがその場で首を傾げれば、黒い羽根に紛れて漆黒のランスがすぐ隣の地面へと突き刺さった。


「ぎゃうっぎゃうっ」


「確か【聖女】のスキルの……」


 這う這うの体で逃げてくるじゃしんを一瞥しながら、レイは目の前に現れた黒い羽根のカーテンに目を細める。それはつい先ほど見た光景と酷似しており、その後の展開も完全に彼女の予想通りであった。


「神の遣いよ。我らが信仰を妨げる者に粛清を与え給え」


「神は神でも邪神でしょうが……!」


 黒い羽根のカーテンを振り払って現れたのは、全身を漆黒に染め上げた二体の甲冑の騎士。その腕には自身の背丈ほどの太いランスを持ち、表情の見えない顔がゆっくりとレイを捕らえる。


「ッ、来るよ!」


「ぎゃ、ぎゃう!?」


 じゃしんが『そんなこと言っても!?』とでも言いたげに慌てふためく中、レイの言葉通り黒い騎士達が動く。


 二体同時に左右に分かれてレイとの距離を詰めれば、それぞれ異なる手に持ったランスを目にも止まらぬ速さで突き出した。


「うわっと!? あの時と全然練度が……ッ!」


 以前とは異なり、確実に連携の取れた攻撃を前にレイは慌てて回避行動をとる。だが、生き物のように動く漆黒のランスは、次第に彼女の身体を捉え始めていく。


「ぎゃうっ――」


「じゃしん!」


 先に掴まったのは、レイに近寄ろうとしたじゃしん。レイを狙っていた片方が突如じゃしんに向き、その体に突き刺さる。胴体を捕らえた穂先はじゃしんに深くめり込み、スーパーボールのように彼の体を弾き飛ばす。


 それに気を取られ、レイが視線を外したほんの一瞬。その隙にもう一体の騎士による渾身の突きがレイめがけて放たれた。


「ぐっ、まず――」


 それを無理やり体を捻って回避したレイだったが、体勢を崩した所に今度は横薙ぎで振るわれる漆黒のランスを躱す術がなく、十字に交差した腕ごと体を吹き飛ばされる。


「終わったか」


「……まだ、だよ」


 石柱を巻き込みながら壁に激突したレイをみて、教皇が冷めた目を向けながら呟く。そして視線を外してミーアの方に目を向けた時、彼の耳が微かな呟きを拾う。


「じゃしん大丈夫?」


「ぎゃう~」


「しぶとい羽虫が……」


 そこにはゆっくりと体を起こしながらもこちらを睨みつけるレイの姿。もう一体のじゃしんもお腹をさすりながらも体をピンピンとさせており、教皇は腹立たしそうに悪態をつく。


「今のはちょっと危なかった、これは本気でやらないとまずいかも。こっちを使うのは初めてだけど……まぁ信じてるからね、ぺけ丸!」


 一方で評価を改めたレイは、ここにはいない装備の製作者に向かって呼びかけると、どこかワクワクしているような、不敵な笑みで高らかに宣言する。


「変……身!」


 掛け声とともに、レイの体は光輝く。そして光が収まった後、彼女の姿は――。


[TOPIC]

SKILL【狡猾な堕天使】

嗤え。他者に従い生きる者を、神に仇なす愚者を。

CT:-

効果①:操作可能のドールを召喚(MAX:2体)

=======================

NAME 狡猾な堕天使

HP 1000/1000

MP 0/0

腕力 1000

耐久 1000

敏捷 1000

知性 1000

技量 1000

信仰 1000

========================

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― 新着の感想 ―
[一言] は?何いってんだよ邪神に従ってる奴が本物のじゃしんに勝てるわけないだろ?
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