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6-43 災いを転じて福とせよ


「あれは……裏?」


 制止したコインに映っていたのは、悪魔の羽根のような模様。以前とは異なるその姿に、レイがぽつりと呟けば、隣にいた二人が叫びだす。


「ぎゃうぁ!?」


「ガッテム!神は死んだ!」


「え!?なに悪い事なの!?」


 さも失敗したかのような口ぶりにレイは驚きに目を開く。そして襲い掛かるであろう何かに備えてぐっと身構え、じっとコインを眺める。


「あれ?何も起きない……?」


「ぎゃうぅぅぅぅ……」


「あわわわわわわ……」


 一向に待っていても、変化はない。そのことにレイが首を傾げるが、隣にいる二人は何かに怯えるようにアワアワしているため、余計に疑問が募っていく。


「ねぇ、そろそろ何が起きるかを教えてもらっても……」


「せ、説明するまでもないでさァ、ほら、始まった(・・・・)……!」


「始まっ――」


 ドガンッ!


 イブルの言葉と共に、【バベル】の上部にて轟音が鳴り響く。


 それは雷が落ちた時に聞こえる破壊音。何度も何度も聞こえるそれにレイが固唾を飲んだ時、【バベル】の上部が崩壊する。


「う、うわぁ!?」


「あぁ?ッ!?」


「うわ、凄いなこれ」


 天に立ち込めた暗雲から降り注ぐ無数の雷。それは【バベル】の中にいるレイのみならず、セブンやトーカ、他のモンスターにも襲い掛かる。


「な、なにこれ!?」


「じゃしん様の加護は、多大なる恩恵の背後に、大いなる天罰が待っているってことっす!」


「意味分かんないんだけどっ!?」


「その恩恵は一定時間何物にも傷つけられない、いわば無敵の加護!それに見合った天罰はただ一つ!使用者の命でさァ!」


「ちょ、噓でしょ!?」


「グオォォォォ!?」


「……!?」


 迫る雷から逃げ回りつつ、レイはイブルに詳細を尋ねる。返ってきた言葉は半ば信じられない者であったが、不幸にも雷がヒットした【灼熱の巨人骨】と【極寒の凍死体】が一撃でポリゴンへと変えられた事実が、これ以上なく証明している様だった。


「おいレイ!こりゃ一体なんだ!?」


「ごめんなさい!私も良く分からないんですけど!当たるとヤバいみたいです!」


「そんなの見たら分かるよっ!」


「これはまずいなぁ……早く決めないとね!」


「ッ!おい!」


 戦闘を一時中断していた二人だったが、それでもその手を完全に止めることはないようだった。器用に雷を躱しながら打ち合う二人を眺めていると、レイの元にも見えない刃が迫る。


「あぶなっ!?忘れてたよ……!」


 背後に向けて銃を発射すると、途端に姿を消していた【シニガミ】が姿を現す。


 降り注ぐ雷など気にも留めていないと言わんばかりに、レイへと鎌を向ける姿に、思わず舌打ちをする。


「申し訳ねぇ、あっしが余計なことを言ったばっかりに……」


「ぎゃうぎゃう!ぎゃう~」


「……いや、チャンスだ。ここしかないっ!」


 じゃしんとイブルが申し訳なさそうに謝罪する中、レイは周囲を駆けながらも、視点を変える事で勝機を見つけ出す。


「ぺけ丸、使わせてもらうよ!変……身!」


 そして発動する、残された切り札。


 装備に新しく追加されたスキル、【モードチェンジ】を使用すれば、たちまちレイの身体は光に包まれ、衣装を変化させていく。


 そうして光が収まった後には、安全靴のようなゴツイ黒いブーツに、かなり際どい位置まで上がったホットパンツを履き、上半身は白色のファーが付いた黒革のジャケットを羽織った、何とも動きやすそうな恰好で現れた。


「ぎゃう~!」


「か、カッケェっすご主人!」


「ありがとねっ!そうだ、じゃしんこれ持っててよ」


「ぎゃう?」


 褒める二人に手を上げて返しながらも、レイは〈アイテムポーチ〉から一つアイテムを取り出して、その片方をじゃしんへと手渡す。


 そのまま目の前で消えかかっている【シニガミ】に向けて発砲しつつ、レイはその距離を詰めた。


「体が軽い、これなら……!」


 先ほどとは比べ物にならないくらいに軽くなった体にレイが確かな実感を抱きつつも、目の前の【シニガミ】に向けて攻撃を仕掛ける。


 その速度で一方的に【シニガミ】を圧倒したレイは、とどめと言わんばかりにその足を撃ち抜くと、空から降る雷を確認してからその場を退く。


 その落雷は寸分の狂いもなく【シニガミ】へとヒットし、その姿をポリゴンへと変える。その姿を見届けたレイはその勢いのまま、壁の端に放置された『Re:Code』へと一直線で駆け出した。


「このまま……!」


「おいおい、勝手に賞品持ってくなよ!」


「くっ!?」


「そうだよ~?僕のものだから、それ」


 『Re:Code』を指の先に掠めた瞬間、首根っこをトーカに掴まれて後ろへと放り投げられる。


 その上、宙に浮いた体に対してセブンの振るった鎌がレイの首へと迫っており、それを拳銃で受け止めれば、レイの身体は勢いを増してさらに遠くへと弾き飛ばされる。


「ほら、みんな。レイちゃん捕まえちゃって」


「や、やめ――」


 飛ばされた場所は、【スカルキング】の足元。尻餅をついたレイに向けて、周囲にいた【スケルトン】が殺到し、レイの身体をみえない程に覆いかぶさる。


 そこへ、容赦なく降り注ぐ落雷。


「あーあ、これで終わりかな」


 轟音とともに発生した煙には、【スケルトン】だけでなく【スカルキング】さえも巻き込み、すべてを消し去ってしまう。


 こうして一人の脱落を確信したセブンは、再度トーカへと視線を向けた。


「さて、ようやく邪魔者が消えたね」


「鬱陶しい置き土産は残ってるけどな。ただこれでイーブン――」


 【スケルトン】もいなくなり、本来持てる力のみの戦いになったと判断したトーカの言葉。だが、自分で放ったその言葉に、強烈な違和感を覚える。


「待て、何でステータスアップ(・・・・・・・・)が残ってんだ(・・・・・・)?」


「え?」


「【属性付与】」


 その違和感を口にした瞬間、彼等から離れた場所から消えたはずの人物の声が聞こえ、一斉にそちらへと視線を向ける。


 そこには、二人の間に向けて銃を構える、レイの姿があった。


「【黒雲弾(ブラック・サンダー)】!」


 思考する隙も許さず放たれた黒い弾丸。普段の物とは異なり、バチバチと静電気のような物を纏ったそれは、彼女達の中心の床に着弾すると、一気に膨れ上がる。


「ッ……なっんだこれ!?」


「これはちょっとまずいかも……!」


 天を覆っている黒雲のようにバチバチと電気を纏うそれは、彼女達を急激に吸い込み、内部に取り込む。


「『気』が吐き出せねぇ!何か殴れるもの……!」


「あ~こりゃ負けかな」


 内部で発生する雷は、天から降り注ぐ必殺の落雷すらも吸って急速に成長していく。


 そんな無数の落雷をその身に受けた二人は――。


「――対戦、ありがとうございました!」


 発生した黒雲に飲み込まれ、それが消え去る頃には、同じように姿が見えなくなっていた。


[TOPIC]

MONSTER【極寒の凍死体】

白銀の世界にその身を埋め、死した心は凍てつきを増す。

不死種/極凍系統。固有スキル【永久凍土】/【銀世界】


《召喚条件》

一定時間氷属性で【グール】を攻撃で進化(8h)

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― 新着の感想 ―
[一言] これはスカッとするなあ
[一言] 更新お疲れ様です! まぁ、ここで綺麗に引くほうがレイちゃんらしくないですもんね!! そして…うわぁ!?天変地異みたいな感じですね…っていうか、(じゃ)神が雷を落として破壊するって…バベルの塔…
[一言] 下克上すご
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