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6-42 一か八か、丁か半か、表か裏か


『うん、上手く行ったみたいだね』


「そう、だね……」


 戦闘を繰り広げていた二人に直撃した水の龍。確実に意識外から一撃を与えたため、もしかしたらという気持ちがレイに湧き上がるが、そこまで甘い世界ではなかった。


「――あっぶねぇな」


「急に攻撃してくるなんて、怖いなぁ」


「お前もしれっとアタシを盾にしてるんじゃねぇよ」


 トーカの突き出した右手へと、急激に水龍が吸い込まれていく。その背後ではトーカの影に隠れるようにして立っていた。


「昔は逃げ回るしかなかったのに、レイちゃんが強くなって僕はとっても嬉しいよ!」


「あ、ありがとうございます」


「こんな状況じゃなければハグでもしてあげるんだけど、残念ながらこれで終わりじゃないんだよねぇ」


 後ろから喜色を前面に押し出した声でそう告げるセブン。それにレイは少し嬉しそうな表情をしたが、目の前に再び現れた赤い魔法陣を目にして凍り付く。


「グオォォォォォォォ!」


「はい、おかわりどうぞ」


 咆哮を上げ、再び顕現した灼熱の巨人。その視線は先程と何ら変わらず、真っすぐとレイに向けられていた。


「そ、そんな……!」


「あはは、そういえば後ろは大丈夫?」


「う、後ろ?」


「ぎゃ……」


 その圧に後退ったレイがその言葉に振り返ると、その先には【極寒の凍死体】の手に掴まったじゃしんの姿。それと同時に、【じゃしん結界】の効果がなくなり、南国の島から塔の中へと景色が戻る。


「じゃ、じゃしん!?」


「お前、何でもアリかよ……。流石にレイに同情するぜ」


「大丈夫、あれくらいじゃへこたれないから。じゃ、続きしよっか!」


 セブンへと呆れた視線を向けつつも、トーカは再び拳を構える。そうして再開した戦闘も十分レイの気にはなったが、それ以上に目の前に立ち塞ぐ【灼熱の巨人骨】に目がいった。


『ねぇ、どうする?』


「どうするも、一旦じゃしんを助けなきゃでしょ!」


「グオォォォォォォ!」


 そう答えたレイは【極寒の凍死体】へと向けて走り出す。


 背後からは怪物が追い縋る音が聞こえてくるが、それに構うことなく〈アイテムポーチ〉から【時限草】を取り出して口に含む。


「ぎゃうっ」


「……!?」


 3カウント後、じゃしんの身体が爆発する。それによって凍りかけていたじゃしんの身体は爆炎に包まれ、それによって【極寒の凍死体】の手からじゃしんは解放された。


「グォォォ!!」


「そのまま潰し合ってよ!」


「グォ!?」


「……!?」


 爆炎で視界の遮られた中で、じゃしんの声を頼りにその体を掴んだレイは、そのまま【極寒の凍死体】の横を通り過ぎると、彼女を追っていた【灼熱の巨人骨】がそこへと殺到する。


「じゃしん、大丈夫?」


「ぎゃ、ぎゃう~」


 少し離れた場所で腕の中に眠るじゃしんの様子を見れば、目を回しているだけで、特に変化はないようだった。


 そのことにほっとしつつも、レイは未だ晴れぬ爆炎へと視線を向ける。


「これで倒れてくれればいいんだけど……」


『残念ながら、ダメみたいだね』


「……」


「グオォォォ……」


 いつの間にか隣に来たリヴァイが、レイの声に答えを返す。その言葉通り、視界の先には横に並んだ二体のモンスターが爆炎の中からレイに向けてゆっくりと歩き始めていた。


『おっと、時間みたいだ。じゃあ頑張って』


「さて、どうするかな……ん?あー、ありがとね!」


 次の策を考えている最中、リヴァイの身体が紫電に包まれ消えていく。それに返事をしつつも、レイはこの状況を打破するために思考のリソースを割いた。


「ここでアレ(・・)を使っても、もう一回出されたら無駄になる……。かといって使わずに勝てるかと言うと……」


「ぎゃうぎゃう!」


 最終的な目標はセブンとトーカを倒すことにあり、ここがゴールではない。そのため切り札をきる決断が中々できない。そんな中、じゃしんがくいっとレイの服を引っ張った。


「ん?どうしたの?」


「ぎゃう~!」


「これって……【じゃしん硬貨】?」


 その手に握られていたのはこのエリアに降り立った際に見た一枚の硬貨。じゃしんの顔と羽が裏表に描かれたその効果を見てレイは首を捻る。


「えっと、使えってこと?」


「ぎゃう!」


「おぉ!流石じゃしん様!それはすんばらしいアイデアですぜ!」


 自信満々に頷くじゃしんに同調するように、イブルがレイの頭上で頷くように体を上下に揺らす。


「イブル?このスキルの効果知ってるの?」


「えぇ!この状況を一変させてくれるのは間違いないでさァ!」


「それって具体的には――」


 詳細を聞こうとイブルに尋ねるも、前方から飛来した氷塊によって遮られる。


 慌ててそれを避けて前方を見れば、【極寒の凍死体】と【灼熱の巨人骨】が今にも襲い掛からんと行動を開始していた。


「そんな暇はないか……!じゃしん、じゃあよろしく!」


「ぎゃうっ!」


 一刻の猶予もない事に気が付いたレイは、すぐさまスキルの発動をじゃしんへとお願いする。


 それを受けてじゃしんは手に持ったコインを親指に乗せて、勢いよく弾いた。


「ぎゃうっ……ぎゃうっ……!」


「こい……ッ!こい……ッ!」


「神のくせに神頼み……?いや、それよりもどっちが出て欲しいの……!?」


 宙を舞うコインを見て、じゃしんとイブルが何かを願うように祈りをささげる。その尋常じゃない熱量に、レイだけが付いて行けなかった。


「ぎゃう~!」


「頼む~!」


 そしてコインは地面に当たり、くるくると回転する。


 次第にコインの回転量が弱まっていき、その表面に描かれていたのは――。

[TOPIC]

MONSTER【灼熱の巨人骨】

地獄の業火にその身を焦がし、怒りの炎は勢いを増す。

不死種/獄炎系統。固有スキル【業火不滅】/【赫灼骨】


《召喚条件》

一定時間炎属性で【スケルトン】を攻撃で進化(8h)

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! あの攻撃からでも余裕で生き残るお二人、うん、知ってた!! そして…うん、召喚士の頂点に立っている人はそりゃあこうもなりますよねぇ… ってあああ!じゃしーん!? >背後から…
[一言] 裏が出てレイちゃんに猫耳が生えるに一票
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