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6-41 頂上決戦

今年も一年、誠にありがとうございました。

まだまだ、レイ達の物語は終わりません。来年もお付き合いのほど、よろしくお願い致します。

皆様、良いお年を!


「ぎゃう~!?」


 スケルトンに追いかけられるじゃしんから情けない悲鳴が聞こえる。ただ、レイはそれを助けられる状況ではなかった。


「おめかしして、随分と気合入ってんだな?」


「こっちが本来の姿ですよ!」


 目の前にいるトーカに向けて、レイは手にある銃のトリガーを引く。


 今までとは異なる感触から放たれた銃は、以前に比べ確実に威力が上昇している。


「へぇ、銃か。かっこいいじゃん」


 だがやはりというべきか、大幅に強化された彼女に届くことはない。まるで欠伸をするかのように、余裕綽々といった様子で銃を避けるトーカにレイは思わず歯噛みする。


「なんとか当てる方法を考えないと――」


「おいおい、僕も混ぜてよ」


 二人の会話にセブンが割り込むと、【灼熱の巨人骨】がレイに向かって進撃を開始する。


「グオォォォォォォォォ!」


「トーカさん!良いんですか(・・・・・・)!」


「チッ、強かだなおい!」


 地面を焦がしながら迫る【灼熱の巨人骨】に対し、レイは避ける素振りを見せない。代わりにトーカの名前を呼ぶと、【灼熱の巨人骨】を横から蹴り飛ばす。


「どういうこと?」


「私が倒れると、強化がきれるみたいです。だからトーカさんは私を倒せないんですよね?」


「……レイなら分かってるだろうと思ったが。やっぱ賢過ぎるのも面倒だな」


 トーカが口にした『デスポーンされると困る』という情報から、レイはそれを逆手に取ることを決めており、その賭けに勝ったことで、トーカからの攻撃を封じたことを確信する。


「なぁ、このままじゃじり貧だろ?いったん協力して――」


「隙あり!」


「おい、容赦ねぇな!」


 困った様子で頭を掻いたトーカ。その提案をレイは一蹴する。


「組むわけないでしょ!私はトーカさん倒してからじゃないと勝ち目がないんですから!」


「ん?それって、僕相手なら勝ち目があるって言いたいのかな?」


「え?いやそういう訳じゃ……」


 そしてあっかんベーをしながら返した一言。それが今度は『魔王』の逆鱗に触れる。


「随分と舐めてくれるんだね!そりゃあれだけの啖呵切ったんだもんね~!」


「え、えっとセブンさん?」


「あーあ」


 満面の笑みを浮かべているものの、その言葉の端々にどこか棘がある。やってしまったとレイが後悔しようも、吐いた唾を飲み込む事は出来ないようで、セブンは仄暗い瞳をレイへと向けた。


「じゃ、この子達の相手よろしくね!レイちゃんなら余裕なんだもんね!」


「グオォォォォ!」


「……」


「マ、マジ?」


 そうして、二体のユニークがレイの前へと立ち塞がる。


 片や氷を纏う痩躯の死体。もう一体は灼熱を纏う巨大な人骨。対称とも言えるその二体の圧を受け、レイは額に冷や汗が浮かぶ。


「おいおい、何して――ッ!?」


「こっちはこっちで、直接対決と行こうか?」


 フォローに入ろうとしたトーカには、巨大な鎌を持ったセブンが肉薄しており、その背後にみえる赤色の旗――【英雄の旗印】を目にしたトーカが目を見開く。


「その旗元々うちのだろっ!」


「でも弟君はくれるっていったよ?」


「絶対言ってねぇ!それに、弟のモンは姉のモンって相場が決まってるんだよ!」


 その効果によって強化を受けたトーカにも負けず劣らずの力を発揮するセブン。その一方で口では怒りを表現しているものの、トーカの表情はこれを待っていたんだと言わんばかりの笑みを浮かべていた。


「やばい、おいてかれる……!」


「ぎゃ、ぎゃう~」


 二人のやり取りを見て焦りを覚えたレイの元へ、【スケルトン】から追われなくなったじゃしんがとぼとぼと戻ってくる。


「じゃしん、ひとまず片方の相手は任せたよ!あっちね?」


「ぎゃう……?」


 だがひと段落する暇すらないようだった。じゃしんが疲れた様子でレイの指さす方を見上げれば、そこにはこちらを睨みつける【極寒の凍死体】の姿。


「ぎゃう?」


「うん、時間稼いでくれるだけでいいから!よろしく!」


「ぎゃ……ぎゃう」


 二度見してレイに問い返すも、もはや決定事項だと言わんばかりにレイは【灼熱の巨人骨】に向けて駆け出していく。その背に手を伸ばしたじゃしんは、現実から目を背けたのか、カメラ目線で『やれやれ』と肩を竦めていた。


「グオォォォォ!」


「あぶっ!?でも、これくらいなら……ッ!」


 勇猛果敢に距離を詰めるレイに対して、【灼熱の巨人骨】は腕を振るう。想像以上の速度で迫る一撃を何とか躱しつつも、レイは反撃に打ってでた。


「これでも喰らえ!」


 【RAY-VEN】から放たれた弾丸は、【属性付与】によって水を纏う。


 その効果は『速度低下』。雷属性の持つ特性『行動制限』とは異なり、移動、攻撃を含めた全てのモーションがワンテンポ遅れる性質を持つ。ただ、レイの狙いはそれだけではなかった。


「グオォ!?」


 着弾地点の炎が蒸気へと変わり、【灼熱の巨人骨】は苦し気に唸る。


 属性はほとんどのモンスターが内部的に持っている情報の一つである。その中でも有利属性と不利属性が存在しており、より多くのダメージを与えられる、という特性があった。


「よし、やっぱり水属性弱点か!これなら――」 


「【赫灼骨(かくしゃくこつ)】」


 手ごたえを感じたレイが笑顔を浮かべようとした瞬間、『魔王』から絶望の一言が下される。


「――グォォォォォォォォォォォォ!」


「うっそでしょ……!?」


「はっ、容赦ねぇな」


「私達に挑むなら、これくらいは乗り越えてもらわないとね?」


「違いねぇ。おい!こんな所でくたばるなよ!」


 瞬間、【灼熱の巨人骨】が更に赤く、マグマをも超える高温へと姿を変える。


 トーカとセブンが何やら話をしているのは分かったが、レイはそれに構っている余裕がなく、必死で思考を目の前の脅威へと廻らせる。


「水属性なら通る……なら可能性があるのは……」


 身を焦がしながら進む【灼熱の巨人骨】を躱すのは困難であると悟ったレイは、立ち向かう事を選択する。


「イブル!【簡易召喚】!触媒は【辰の紋章】!」


「意外とフィット……え、あ、呼ばれた?あいあいさァ!」


 台座に乗りかかって遊んでいたイブルの名前を呼び、目の前に魔法陣を出現させる。投げた銀のエムブレムがイブルに吸い込まれるのと同時に紫電が走ると、魔法陣からはエメラルドブルーのタツノオトシゴが出現した。


『おや、またかな?』


「リヴァイ!前見て!」


『前?……おっと』


 2回目の登場なこともあってか少し余裕そうなリヴァイは、レイの指の先を見てスッと目を細める。


「あれに水属性の弾を打ち込む!それにリヴァイの力を乗せる事ってできる!?」


『あぁ、無理だね』


「無っ……そんなっ!?」


 賭けた可能性がバッサリと切り捨てられ、レイは絶望に打ちひしがれそうになる……が、リヴァイの言葉はそこで終わらなかった。


『ごめんね。海の中だったらどうにかしてあげるんだけど』


「……海の中?」


 その一言に、レイはかつて月を出現させた時のことを思い出す。すぐさまやってみる価値はあると判断すると、スキル名を口にした。


「【じゃしん結界】!えーっと、海のあるところ!」


「ぎゃう!?ぎゃう~!」


 流石に技名を考えている余裕がないのか、必要な情報だけ伝えれば、吹雪の真っただ中にいるじゃしんが『そんな余裕ないぞ!?』と言いたげにしながらも、しっかりとスキルを発動させる。


「あ?なんだ?」


「これは……」


 瞬間、世界が変わる。


 塔の中だった光景は、南国の孤島へ。天から降り注ぐ強烈な日光と一定のリズムで響くさざ波の音に、セブンとトーカは思わず手を止め、レイはリヴァイへと詰め寄る。


「これならどう!?」


『うーん、不思議な感覚だ。出来そうな出来なさそうな……。試してみる?』


「よろしく!」


 リヴァイは半々といった困惑した様子を浮かべていたが、レイはダメ元で銃を構える。


「行くよ、【属性付与】!」


『えーっと、あ、いけるかも。【海神龍牙】!』


 そして発射された水を纏う弾丸は、ツヴァイの手によって周囲の海からさらなる力を纏い、やがて龍を形作る。


「グオォォォォォォ!?!?」


「うわ――」


「おいっ――」


 その龍は【灼熱の巨人骨】を容易く飲み込み、その勢いのまま奥にいた二人へとその牙を突き立てた。


[TOPIC]

SKILL【赫灼骨】

白き体を焚べる最後の煌めきは、命を賭して敵を灰と化す。

CT:300sec

効果①:炎属性極大ダメージ(残HP * 100)

効果②:HPを0にする

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! 装い新たにさぁ勝負!ですね 銃を撃っても軽々とよけられるのは…うん、まぁ、そりゃあ見切ってきますよね… そして強化を逆手に取った人質戦術…今回はそれが裏目に出ましたねトー…
[一言] あけましておめでとうございます! いいぞーやったれー!
[一言] はからずも意趣返しできそう
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