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1-18 月の光に激しく昂る③

20万PV突破しました!

ペースがとても早くてちょっとビビっておりますが←


 1時間後、再度『ToY』の世界にログインしたレイは見慣れたベッドの上にいた。


「増えて――ないよね……」


 真っ先にメニューより〈アイテム〉を開くも、何度スクロールしても新しいアイテムを入手している様子はない。どうやらラビカポネから受け渡される予定だったクエストクリア報酬は、入手できなかったようだった。


 なんとなくそうなった原因を理解しつつも、やはり納得できないレイはすぐにGMコールを飛ばす。


『すいません、クエストクリア直前に強制ログアウトしたため報酬が受け取れなかったのですが、どうにかして貰えないですか?』


 それからものの数分でGMからの返信が届く。その対応の早さに嫌な予感を抱きつつも、レイは急いで中身を確認する。


『いつも『ToY』を遊んでいただき誠にありがとうございます。お問い合わせいただいた件ですが、不正な動作は確認できず、あくまでもお客様自身の問題となりますので残念ながら対応致しかねます。誠に申し訳ございません』


 そこには『お前が悪いんだから諦めろ(笑)』と言う、運営からのありがたいお言葉が記載されていた。


「ちょっとくらい融通利かせてくれもいいじゃん……!!!」


 その文面を目にしたレイは怒りのあまり打ち震えだす。ただ自業自得だということを理解しているのか、レイは諦めたようにガックシと肩を下ろした。


「まぁ、ログインして外が明るかった時点で嫌な予感してたけどさぁ……」


 レイが窓の外を見るとそこは満月に照らされた夜ではなく、これでもかと言わんばかりの日光が降り注ぐ朝となっており、雲一つない空が目に入ってきた。


「ってかそもそもどうやってここに帰ってきたんだろう?……あ、じゃしんは?」


 そういえばとあたりを見渡せば、ワインボトルを胸に抱いた状態で眠りこけているじゃしんの姿が目に入る。そのとても幸せそうな顔にむかついたレイは思いっきりその頬を引っ張った。


「ぎゃう!?」


「おはよう。よく眠れたかな?」


「ぎゃ、ぎゃうぅ……」


 その痛みに飛び起きたじゃしんは眠そうな目を擦りきょろきょろとあたりを見渡していたが、やがてレイの圧を感じる微笑みを目に入れると、引き攣った笑みを浮かべる。


「……はぁ、まぁいいや。じゃしんはあの後どうなったか分かる?」


「ぎゃう!」


 レイの質問に大きく頷くと、ほぼ空となったワインボトルを使いながらパントマイムのように昨日の出来事を再現し始める。


「え~と、ボトルが私ね?で、私が倒れてから消えた、のかな?それでみんな驚いてて、ツリ目……あぁ、レドか。あいつがじゃしんをここに運んだのね」


 じゃしんの寸劇にも似た動きを見ながら、レイは状況を理解していく。


「意外と分かるもんだね……で、ラビカポネが渡そうとしてたやつってどうなった?」


「ぎゃう!」


 レイの問いかけにじゃしんは自信満々の笑顔を見せると、右手を掲げる。


「まさかその顔は……じゃしんが受け取ってくれたの!?」


「ぎゃう~!」


「本当に!?やるじゃん!!」


 まさかの展開にレイは拍手しながらじゃしんを讃える。それに対してじゃしんは『もっと褒めてもいいんだぞ』と言わんばかりにふふんと鼻を鳴らした。


「やっぱユニークは違うなぁ!よっ天才!神様、仏様、じゃしん様!」


「ぎゃうぎゃう!」


 レイのよいしょに満更でもない笑みを返すじゃしん。ひとしきり笑いあった後、レイは本題を切り出した。


「で、そのアイテムはどこにあるの?」


「ぎゃう!」


「いやぎゃうじゃなくて」


 レイの問いかけにじゃしんは右手を掲げるだけだった。その右手には先ほどまで抱いて寝ていたワインボトルがあるだけであり――そこまで考えたレイは急にとてつもない不安に襲われた。


「じゃ、じゃしんくん?そういえばその右手にあるの、何?」


「ぎゃう!」


「まさかとは思うけど、それが報酬って言わないよね?」


「ぎゃう!」


 じゃしんは嬉しそうに右手を掲げるだけで、ほかに何かを持っている様子もない。レイは恐る恐るワインボトルを受け取ると、勘違いであってくれと願いながらアイテムを確認した。


ITEM:【満月印の養命酒】

希少食材が使用され、ボトルにはオリハルコンを使用するなど細部までこだわられている至高の逸品。一口飲めば体中に気力が溢れ、疲れが吹き飛ぶことだろう。

効果①:HP、MPを最大値まで回復

効果②:1時間以内に3口以上飲むと状態異常『酩酊』を付与

残使用回数:1/30


「終わった……」


 レイはそれを見て膝から崩れ落ちる。その様子を見てケタケタ笑うじゃしんの頬は、言われてみれば確かに赤くなっており、その様子と合わせて酔っ払っていることが窺えた。


「めちゃつよアイテムじゃん……そりゃ運営もお客様自身の問題って言うよ……だってちゃんと受け取れてるんだもん……」


 あまりのショックに立ち直れないレイは、残り回数1回となった【満月印の養命酒】を抱えてぐちぐちと文句を言う。


「ぎゃう~」


 そんなレイにじゃしんはやれやれと首を振ると、『そんなに落ち込むなって!』と励ますようにその手を肩に置く。


「……君のせいでこうなってるんだけど」


「ぎゃう!w」


 『まじ?ワリ!w』と言いたげな表情で手を前にやってすまんのポーズをしながら、じゃしんはへらへらと笑っている。その様子に、レイは自身の理性というものが崩れ去っていくのを感じた。


「ぎゃう!」


 それだけに留まらず、じゃしんは『美味しかったぞ』と言わんばかりの満面な笑みを受かべて、レイに向かってサムズアップをする。それを見た瞬間、レイの中で何かが完全に壊れた。


「ははは」


「ぎゃ、ぎゃう?」


 ユラリと立ち上がったレイからブチッと何かが切れる音がして――数秒後にじゃしんの悲鳴が外まで響き渡るのだった。


[TOPIC]

STATE【酩酊】

効果①:軽度の行動阻害

効果②:軽度の視界阻害

効果③:MOBの識別不可

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 26ページだとドレ、27ページだとレドとなっている兎幹部の名前はどちらが正しいのでしょう?
[気になる点] 召喚獣がレアアイテムを勝手に使う、という状況がゲーム的には少し引っ掛かりました。 あと、主人公がそれを当たり前のように受け入れていることも。 ですので、前もってそういう事が起こり得る…
[一言] レイ、ドンマイやな
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