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6-29 ゲーム開始

★書籍1巻発売まであと9日★

活動報告にてキャラデザやカバーイラスト公開中です


【れいちゃんねる】

【第17回 緊急事態】


「ぎゃうっ!」


「じゃしんおはよう!早速だけど出掛けるよ!」


「ぎゃうっ!?」


 仮眠室から跳び起きたレイは、首を傾げるじゃしんを捕まえて部屋から飛び出す。勢いよく開かれた扉にクランハウス内にいたメンバーが目を丸くしている中、それに声を掛ける余裕もなくクランハウスからも飛び出した。


・セブンの配信見た!?

・この感じはそうでしょ!

・普通に先こされたな


「だね!ちょっと予想外だけど、ひとまずロックスと情報共有するよ!」


 走りつつ、視聴者から届くコメントに答えを返したレイは、ロックスがいるであろう【英知の書庫】を目指す。


 ちらほらとセブンの配信を見たと思われるプレイヤーが集結する道を疾走し、【英知の書庫】に辿り着けば、まるで彼女を待っていたかのように、入り口に腕を組んで立つロックスの姿があった。


「ロックス!配信見た!?」


「あぁ、その様子だとレイも見たのか」


 第一声で状況を理解していると判断したレイは、すぐさま次の動きについて話を進めていく。


「これからどうする?【バベル】に行く?」


「それは大前提として、アイテムというのが気になるな。出来るのであれば、先に入手しておきたい」


「それはそう、だね。でもそのアイテムって一体?」


「分からん。ただ、ここが無関係とは考えにくいがな」


・ここ?

・なるほど、発生した場所だもんな

・一理ある


 ロックスの親指の先にあったのは背後に聳え立つ巨大な時計塔であり、それが【英知の書庫】を示している事に気が付くと、レイもなるほどと顎に手を添える。


「確かに……。じゃあちょっと待ってみる?」


「それが良いと思う……が、外れた場合のロスが気になるな」


「だよねぇ、じゃあ別れてみる?」


「あぁ、それが――」


 そうして話を詰めていく中で、ロックスの言葉が途切れる。


「ん?どうしたの?」


「……どうやら、当たりみたいだぞ」


「え?」


 それに首を傾げたレイがその行動について尋ねると、ロックスはスッと目を細める。どうやら彼女の背後を見ているらしく、それに従ってレイも振り返れば、そこにいた人物に思わず目を見開いた。


「やぁ、お久しぶりですねレイさん」


「……確か、いつぞやのPKクランのお偉いさんだっけ?」


 そこにいたのはかつて彼女と対立し、潰されたクラン【DA・RU・MA】のメンバーであった。


 服装は赤色の法被から黒いコートへと変わったものの、ちらほらと見覚えのある姿があり、中でも先頭に立つ金髪にピアスをした男――スカルを目にして、レイは不機嫌そうに目を細めた。


「いえ、今は【セブンと愉快な下僕達】の参謀をやらせてもらっています。どうぞよろしく」


「下僕って、そんな柄じゃないでしょ」


「やだなぁ、それはセブンさんに言ってくださいよ」


 肩を竦め、軽口を叩く姿に、レイは舌打ちを返す。本性を掴めない飄々とした態度に警戒を強めると、【アイアンダガー】を取り出して構える。


「で、なんのつもり?」


「そんな警戒しないでくださいよ。目的は貴方ではないので」


 対してスカルは、臨戦態勢のレイを一切警戒せず、連れて歩いていた多くのプレイヤーを置いて一人真っすぐ進む。そのままレイとロックスの脇を通り過ぎると、【英知の書庫】の中へと入っていった。


「ちょっと何処へ――!?」


 それを止めようと伸ばしたレイの手をひらりと躱すと、レイの唇に人差し指を当てて微笑む。


「この……ッ!」


「レイ、落ち着け!」


「ぎゃうぎゃう!」


 小馬鹿にするような態度にカッとなったレイは、手に持ったナイフを振るおうとするも、それを隣にいたロックスとじゃしんの二人がかりで止める。


 じたばたともがくレイへと微笑まし気な視線を送ったスカルは、やがて視線を外すと再び図書館内へと入っていく。


「何で止めるのさ!」


「止めろとは言っていない。あいつの目的が分かってからでも遅くない筈だ。違うか?」


「そうだけどさ……!」


 ロックスの論理的な説得を前に、レイは歯噛みする。頭では理解できているものの、煮え滾った感情は中々解消できるものではない。とはいえ、このまま暴れたとしても何の意味がないことも分かっているため、渋々レイは手に持ったダガーを降ろす。


・なぁこの先って…

・隠し扉、だよな?

・マジか


 そして、改めてスカルの背中を見つめれば、一直線でとある本棚の前へと向かっていく。


 視聴者も気づいている通り、そこはリブロに開けてもらった隠し部屋へと続く本棚の前であり、そこにスカルが手を翳すと、突如壁が爆発する。


「なっ、嘘でしょ……!?」


「……そういうことか」


 その光景に絶句したレイだったが、隣にいたロックスは何かに気が付いたのか一人したり顔で頷く。


 そんな中、スカルは目の前に階段を下っていき、しばらくして一冊の本を手にしながら地上へと戻ってくる。


・あれって『Re:Code』だっけ?

・ワールドクエスト関係なのは分かっていたけど使うのか

・じゃあやばいんじゃ…


 手に握られていたのはレイも手にしたことのある青色の冊子の本であった。


 見たことのあるその姿に困惑し、ゆっくりとレイの思考が動き出す中、スカルはその本を掲げて、以前ロックスが行ったように、周囲のプレイヤーへと喧伝する。


「これが、『魔王』の言うキーアイテムであり、皆様に奪い合って頂く景品になります。あぁ、そうだ。安心してください。こちらレンタルと言う形になりますので、誰の所有権でもありません。ですので【スティール】がなくとも、殺して奪い取って頂いて構いませんよ」


 未だ状況を掴めずにざわつく周囲の姿を見回しつつ、スカルは本を胸に抱いてゆっくりと歩き出す。


「それでは、ゲームスタートです。お気に入りとやらの力、是非見してくださいね」


「は?」


 そしてすれ違いざま、レイに聞こえるくらいの小さな声でぽつりと呟く。その顔は感情の読めない、不気味な笑顔を浮かべていた。


[TOPIC]

WORD【Re:Code】

デコードの記した【RECORD】よりもさらに深く、彼の魂を宿す本。世界を振り返る術は聖なる力を宿しており……。

ゲームシステムとしては、アイテム扱いではなく、あくまでもギミックとして用意されたものであり、一定期間経過すると、元の場所へと戻る。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! 魔王に挑むために塔を上るRTA、はーじまるよー!? ロックスさんと合流して…あ、キーアイテム。 何なのでしょうか…?と、思えば… あっ…そういえばセブンさんこの人と話して…
[一言] 今回もおもしろい一筋縄ではいかなそう
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