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6-27 聖剣と魔剣


「えっと、それで武器を見てくれとか言ってましたけど……」


 何故だか固い友情で結ばれたレイとツヴァイに呆気に取られていた一同だったが、何とかぺけ丸が正気を取り戻し、話を本筋へと戻す。


「あぁ、我が剣を見てくれないか」


「これが【聖剣】と【魔剣】……」


「違う、『栄光に続(ザ・シャイニング)く閃光(グローリー)』と『暗闇に立ち(ジ・ダークネス)込める暗雲(クラウディア)』だ」


「……確かに、これは初めてみました」


・おっとぉ、ぺけ丸選手ここはスルーです!

・見ないことにしてるな

・英断ですね


「私もみていい?」


「ぎゃうっ」


 相変わらず自分の世界基準で話すツヴァイを見ることすらしなくなったぺけ丸。そこへじゃしんとレイが覗き込むように、テーブルへと置かれた【聖剣】と【魔剣】に目を向ける。


WEAPON【聖剣】

魔を打ち払う聖なる剣は、使用者の想いに呼応して輝きを増す。

要求値:-

変化値:【聖剣】のステータスを加算

効果①:第一形態(次の形態まで残り15)


=======================

NAME 聖剣

TRIBE -

HP 200/200

MP 200/200

腕力 200

耐久 200

敏捷 200

知性 200

技量 200

信仰 200

SKILL 【光魔法】

SP -

========================


WEAPON【魔剣】

聖を翳す魔なる剣は、使用者の想いを喰らって鋭さを増す。

要求値:-

変化値:【魔剣】のステータスを加算

効果①:第一形態(次の形態まで残り14)


=======================

NAME 魔剣

TRIBE -

HP 200/200

MP 200/200

腕力 200

耐久 200

敏捷 200

知性 200

技量 200

信仰 200

SKILL 【闇魔法】

SP -

========================


「本当だ、ステータスがある。でもこの効果って何だろう?」


「さぁ……。ここまでくると武器というよりはモンスターな気が……」


 性能を目にしたレイが疑問をぺけ丸にぶつけるも、答えの代わりに困惑するような声が返ってくる。


 一頻り唸ったぺけ丸はやがてお手上げというようにため息をこぼすと、改めてツヴァイを見た。


「一応見てみますけど、多分力になれないと思いますよ?」


「構わない。何か一つでも掴めるものがあれば……な」


「……はぁ」


 やけに鼻につくセリフに、ぺけ丸は疲れたようにため息を溢す。そんな中、コメント欄では別の疑問が上がっていた。


・そういえば武器は使えるようになったの?

・どういうこと?

・ほら、消えた理由が……


「そうじゃん、帰ってきたってことは両手で操れるようになったってことだよね?」


「ふっ、愚問だな」


 それを汲み取るようにレイが口を開けば、腕を組んでドヤ顔を浮かべるツヴァイの姿。そこへ、ウシワカとベンケイからも追撃が入る。


「確かに、気になるであります」


「ツヴァイ氏、修行の成果を見せてくれでござる!」


「よかろう、ならば刮目せよ。これが我が半年にも及ぶ修行の成果だ……!」


 期待の込持った言葉に気をよくしたのか、ツヴァイは両腰に携えた剣に手を添える。


「『聖魔魂魄十字斬』!」


 そのまま綺麗な所作で引き抜くと、自分で考えたと思われるスキル名と共に剣を交差して振り抜く。


 すると、剣からそれぞれ黒と白の斬撃が形を成して飛んでいき、標的となるゴーレムめがけて突き刺さった。


「す、すごい……!」


・何このダメージ!?

・えげつない……

・これが聖剣と魔剣の力なのか


 ゴーレムの頭上に現れた『3740』という数字にレイは目を輝かせ、視聴者も驚きのコメントを残す。


 その姿を見たツヴァイは更にドヤ顔を強めながらも、二つの剣を同時に鞘へと収めた。


「ふん、たわいない」


「凄いでござるツヴァイ氏!何の違和感もなかったでござるよ!」


「まさしく使いこなしていたであります!一体どんな修行を……?」


「ふっ、いいだろう。地獄の修練、その内容を教えてやる」


 ウシワカとベンケイが詰め寄れば、ツヴァイは懇切丁寧に、その期待に応えようとする。


「まず我が取り掛かったのは魂を取り込む所作において、異なる世界に身を置くことだった」


「えーっと……?」


「どういう意味でありますか?」


 だがその説明を理解できるかは別の問題のようだった。ツヴァイの言葉に首を傾げた二人だったが、そこへ同類である少女が言葉を割り込む。


「『ご飯を食べる時に利き手とは逆で箸を使う』だね」


「だから何で分かるんですか……!?」


「ぎゃう……!?」


 さも当然というように言葉を理解するレイを見て、ぺけ丸とじゃしんは驚きよりも恐怖の優った表情で彼女を見つめる。


 ただそれに対して特に気にすることなく、ツヴァイの言葉を翻訳していく。


「それと並行して、真理を刻む場合にも同様の修練を積んだ」


「えっと、『文字を書くのも逆の手で行って』」


「後はそうだな、己が魂を込めた一撃を、一刀の元に切り捨てる饗宴にも身を投じたり」


「『野球したり』」


「哀れな奴隷を鉄球を用いて薙ぎ倒す場で、敢えて枷をつけて行ったりもしたな」


「『ボウリングも練習した』、だって」


・文字書き…

・野球…

・ボウリング…


 仰々しく告げられた修練の内容も、蓋を開けてみればそこまでおかしなことではなく、視聴者含めたほぼ全員がなんとも言えない表情をしている。


 ただ、それを発した本人は得意げな表情を最後まで崩さなかった。


「とかく、様々な修練の果てに、我はこの力を手に入れたのだ」


「大変だったんだね……」


「ダメだ、ついていけない……!」


「ぎゃう〜」


 ビーッ


 感慨深そうに頷くツヴァイにレイが同意し、理解不能な事態に顔を覆ったぺけ丸をじゃしんが慰めたところで、突如アラームが鳴り響く。


「おっと、そろそろ時間だ。ねぇ、この辺でいい宿屋ないかな?」


「む?であれば我らがクランハウスを使っていいでござるよ」


「あそこの奥の部屋に仮眠室があるであります。少々散らかってはいますが……」


 それは何度か聞いた、ログアウトを推奨するものであった。


 すぐさまウシワカとベンケイに尋ねれば、二人は揃ってクラウンハウス内にある扉を指差す。


「本当に?じゃあお言葉に甘えて。じゃしん、いくよ」


「ぎゃう!」


 そうして指定の扉をレイが開けば、中はシングルサイズのベッドが3つだけ置かれた、文字通り仮眠室となっていた。


 そこの一つに腰を下ろしたレイは、改めて視聴者に対して話しかける。


「それじゃ、また30分後に」


・ほーい

・待ってる

・おつー


 労いの言葉を耳にしつつ、レイは横になって目を瞑る。すると数秒もしないうちに、現実世界で目を覚ました。


「ふぅ、喉乾いたな」


 『ToY』チェアから降りたレイは携帯を触りつつ、部屋から出る。


「……ん?何だろう、これ?」


 リビングにある冷蔵庫を目指すレイは、ふと開いたSNSの書き込みに首を捻る。


 それは憧れの人物による祭りの合図(・・・・・)だった。


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〇seven

 @7777777.net

セブンちゃんからの重大発表アリ!

詳しくは30分の配信から〜


午前16:05 · 20XX年12月5日

1402件の反応 2万件のイイネ!

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[TOPIC]

QUEST【運命の選択】

クエスト【天使と悪魔の像】から派生するユニーククエスト。聖剣と魔剣が飾られた室内で、どちらかを選択する。選択した方は入手できるが、しなかった方が敵対モンスターとなり、プレイヤーに襲いかかり、入手出来なくなるという仕様。

ただベータ版のせいか、それともわざとなのか、同時に抜かれた場合を考慮しておらず、とあるプレイヤーによって両方抜かれてしまったようだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! 確かにこんなふうに即興でやられたら自分だって唖然とする、誰だってそーなる。 聖剣と魔剣…なるほど、これは強い…っていうか意思がある感じなのですかね?…名前に関してはツッコ…
[一言] >哀れな奴隷を卓球を用いて薙ぎ倒す場 卓球???ってなって全くわからなかったわ… (ダークネスではtheの読みははザなんだよなぁ…)
[一言] そんなもう片方にも手が届く距離に置いてたら試すよなあ
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