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6-17 魔法道術研究連盟


【レイちゃんねる】

【第16回 魔法研究所】


「ぎゃうっぎゃうっぎゃうっ!」


「ちょっとじゃしん、あんまり進みすぎないでよ」


 現実世界において一日が経過し、学校から帰宅したレイは再び『ToY』の世界へとログインしており、どうやら【叡智の書庫】を後にして【ブラウ】の街を徘徊しているようだった。


「えーっと確かこの辺だと思うんだけど……」


 レイは〈マップ〉を表示しながら入り組んだ道を歩き回っている。その理由はロックスに言われた一言にあった。


 曰く、『魔法に関してであれば専門家がこの街にいる』ということ。


 それはとあるクランのことを指しており、ロックスの知り合いということもあって、紹介してもらえる段取りとなっていた。


・前にみえるあれじゃね?

・オレンジ色の屋根だったっけ?

・確かにくねくねしたトンネルだな


「うん、それっぽいね」


 そうして今日、アポイントが取れたため、レイはそのクランがある場所へと向かっている。少し迷ったものの、視聴者の助けもあってか、無事目的地に辿り着いた。


「ごめんくださーい!」


「ぎゃう〜!」


 辿り着いたのは一軒の家屋。レンガで出来たこじんまりとした建物には少し形の悪い煙突がついており、現在進行形でもくもくと煙を排出している。


 教えてもらった特徴はぴったり合致するため、間違っていないだろうと思いつつも、少し遠慮がちにレイがその戸を叩いて中へと呼び掛ければ、数秒もしないうちに内側からガチャリと扉が開かれる。


「おぉ!お待ちしておりましたぞ!ささっ、どうぞ中へ!」


「あ、ありがとうございます」


「ぎゃう〜?」


 中から出てきたのは『ToY』では珍しく、ぽっちゃりとした体型にぐるぐる眼鏡をかけた、現実で見かけてもおかしくないような姿をしたプレイヤーだった。


 実にフレンドリーな態度でずいっと顔を寄せてきた男性に、レイが気圧されている横では、じゃしんが物珍しそうな目を向けている。


「さ、散らかっておりますが、遠慮なく!」


「お、お邪魔しまーす」


「ぎゃう〜!?」


 男性の人当たりの良い笑顔につられるように家の中へ入ると、そこは理科の実験室のような空間になっていた。


 大きな黒いテーブルにあるフラスコや試験管には、カラフルな液体が入っており、中にある人物が白衣をしていることもあって、怪しい実験をしているようにもみえる。


「ウシワカ氏!お客さんでござるよ!」


「ややっ!もうそんな時間でありますか?これは失敬!」


 レイに応対したぽっちゃり体型の男性が、室内にいた男性ーーウシワカへと声をかける。


 これまた『ToY』では珍しく、ひょろひょろで身長が高く、同じくぐるぐる模様の書かれた瓶底眼鏡をかけており、言ってしまえば想像上の『オタク』と言われる人種の恰好をしていた。


「こ、濃いね……」


・うわぁ……

・一昔前って感じが……

・凄い親近感ある……


 二人の言葉遣いややりとりから、もう既にお腹いっぱいになりつつあるレイと視聴者。だが、まだ目的を果たしていないため、気を取り直すように今回の目的を口にする。


「えっと、はじめまして、レイって言います。ロックスから話は聞いているってことでいいんですよね?」


「もちろんですぞ!ようこそ【魔法術導研究連盟】へ!」


「歓迎しますぞ、同志レイ氏!」


 【魔法術導研究連盟】――通称【魔研連】はその名の通り、『ToY』の世界のあらゆる魔法を調べることを目的としたクランである。


 たった二人しかいないにも関わらず、あのロックスをして『魔法の第一人者』と言わしめたクランであるため、少し緊張した面持ちで臨んだレイだったが、色々な意味で期待を裏切られる形となったようだった。


「我の名はベンケイでござる!そしてこっちがウシワカ氏ですぞ!」


「魔法のことについてはお任せあれ!レイ氏も大船に乗ったつもりで大丈夫であります!」


「あ、はは……ありがとうございます」


「ぎゃう~?」


・本当に大丈夫?

・騙された説あるよ

・申し訳ないけど凄そうに見えない


「なんとっ、そこまで言われたら実力を見せるしかないでありますな!ウシワカ氏!」


「えぇ、ベンケイ氏!あれですな!」


 ドンと胸を張る姿もどこか情けなく、じゃしんと視聴者から疑いの眼差しが上がる。


 それに対してレイが注意しようと口を開くも、それを遮るようにウシワカとベンケイが顔を見合わせると、部屋の奥に設置されたダメージ判定用のゴーレムへと手を翳す。


「『我ら七ノ属性を極めし者也。集いし魔力は混ざり、溶け合い、やがて一つとなる』」


「『従えるは破滅の閃光。重く、鈍く、鋭く、輝く。今ここに魔法の神髄を見せん』」


 突然詠唱を始めた二人の背後に無数の魔法陣が出現する。幾重にも張り巡らされた陣はグルグルと回転を始め、次第に金属がぶつかるような音を響かせ――そこで、レイは胸の内に感じていた既視感の正体へと辿り着く。


「「【七色の閃光(セブン・レイズ)】」」


 二人の声が重なると共に、魔法陣が静止した瞬間、そこから七色の閃光がゴーレムに向かって放たれる。 


 その余波によって机の上にあった紙は宙を舞い、フラスコが割れて中身をまき散らし、それすらも些細な事だと言わんばかりに閃光がゴーレムへと衝突し、轟音を轟かせた。


「これって【WorkerS】の……!」


「おや、懐かしい名前でござるな」


「いかにも、【七色の閃光(セブン・レイズ)】は我々が考案した魔法。彼らに伝えはしたのでありますが、どうやら七人でしか使えないようで」


「こら、ウシワカ氏。我々も一人じゃ使えないのでありますから、あまり大きな言葉を使うべきではないですぞ」


「おぉ、我としたことが。失敬失敬」


 その威力に息を飲み、茫然と呟くレイに対し、ウシワカとベンケイの二人はさも当然のことだと言わんばかりに軽い調子で対話している。

 

・なんだろう、かっこよく見えてきた

・分かる

・これが魔法……!


「ぎゃう~」


 その姿を見て、先ほどまで疑いの眼差しを向けていた視聴者とじゃしんの目の色が変わる。それを感じ取ったのか、二人は改めてレイに視線を向けると眼鏡の位置を調整しながら言葉を放つ。


「では、講義を始めますぞ?」


「準備はよろしいでありますかな?」


「は、はい先生!」


「ぎゃうっ!」


 思わず敬語になって姿勢を正すレイとじゃしん。先ほどまで感じていた不安はいとも簡単に消え去ったようだった。

[TOPIC]

CLAN【魔法術導研究連盟】

【ブラウ】を拠点とする魔術師クラン。クランリーダーは便宜上【ウシワカ】となっている。

その名の通り『ToY』に存在するあらゆる魔法、魔術、魔導を研究対象とし、少数ながら数ある魔術師クランの中でも特出した力を有している。

元々は別のとある人物が発端で出来たクランであるが、その人物はしばらく『ToY』にログインしていないようであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! 魔法関係の事を尋ねて町探索… なるほど、確かにこういう都市なら専門家の一人や二人いますよね。 …ギャグと言うか、またキャラの濃い方がたですね…? 口調が特徴的ですね…大丈…
[一言] なんかかっこいい
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