6-10 道中は持ち物確認の時間
本日も活動報告にて書籍情報を掲載しています。
今回はレイの憧れの人みたいですよ。
「ぎゃう~」
「ごめんって。でもあぁするしかなかったんだよ?」
【デテル砂漠】からの帰路にて、じゃしんは先ほどの戦闘が不満だったのか、レイの頭に乗っかりながらもぺしぺしと叩く。対するレイは表情だけはどこか申し訳なさそうにしたものの、さも仕方なかったのだと強調した。
「ぎゃう~?」
「本当だって。それくらい強敵だったんだってば」
・あれ?でもさっき……
・結構余裕ありそうじゃなかった?
・簡単だって聞こえた気が……
「……あ!そういえばじゃしんもレベルが上がったんだった!」
「ぎゃう!?」
疑いの眼差しを躱すようにごまかしの言葉を口にするも、視聴者達のコメントによって、あっという間に看破されてしまう。これ以上はぼろが出ると悟ったのか、レイはすぐさま話をずらすと、頭の上にいたじゃしんが『どういうことだ!』と言わんばかりにぺしぺしと叩くスピードを上げる。
=======================
NAME じゃしん
TRIBE【神種Lv.5】
HP 666/666
MP 666/666
腕力 666
耐久 666
敏捷 666
知性 666
技量 666
信仰 666
SKILL 【じゃしん結界】【じゃしん賛歌】【じゃしん捜査】【じゃしん硬貨】
SP【別世界ノ住人】【摂理ノ外側】
=======================
[TOPIC]
SKILL【じゃしん硬貨】
運命さえも司る『尊キ御方』の気まぐれは、周囲に幸福と災厄を振りまくだろう。
CT:666sec
効果①:周囲の事象を改変する
「【じゃしん硬貨】?ってか事象を改変ってなに……?」
・また変なの来たな
・おもてうら?
・全く想像できん
じゃしんを無視する形で〈ステータス〉を開けば、やはり見慣れないスキルの名前が記載されている。ただその効果を見ても全く見当がつかず、レイと視聴者は思わず首を捻った。
「まぁ見たほうが早いか。ねぇじゃしん」
「ぎゃうぎゃうぎゃう!」
「あぁもう、悪かったって」
相変わらず怒った様子のじゃしんをどうにか宥めながらも、レイはステータス画面にある文字を見せる。
「このスキル発動できる?」
「ぎゃう?」
少し怪しむような目をしつつも、ウィンドウに表示された【じゃしん硬貨】の文字を見たじゃしんは、任せろと言わんばかりに自身の胸を叩いた。
「ぎゃう!」
「よし、じゃあ【じゃしん硬貨】!」
「ぎゃう~!」
スキルを発動する掛け声とともにじゃしんが雄たけびを上げれば、突如レイの頭上でぼふん!と煙が上がる。
「うぇ!?なになに!?」
「ぎゃう!」
レイが驚いている間に煙は段々と薄れていき、やがて何事もなかったように元の状態に戻ると、じゃしんが自身の手のひらの中にあるものを、まるで見せつけるように差し出してきた。
「ん?なにこれ?コイン?」
・コインだな
・何それ可愛い
・表裏って言ってたよな?
レイの目の前に現れたのは一枚のコイン。赤色に輝くそれを手に取ってよく見れば片方にはじゃしんの顔、もう片方にはじゃしんの背中に生えているものがモチーフとなっているであろう翼の絵があった。
「多分顔の方が表で翼の方が裏、なのかな?それで、結局どうするのこれ?」
「ぎゃう!」
「え」
レイがそのコインを返すや否や、じゃしんは空高くそれを放り投げる。
一瞬の出来事に頭がフリーズしかけたレイだったが、冷静になるにつれてだんだんとその目的が分かってきた。
「あぁ、コイントスってこと?って事は名前的に表と裏で効果が変わってくるって感じかな」
・なるほど
・ありえそう
・じゃあ状況が悪化する場合もありそうだな
「ぎゃう!」
「あ、これ私が受け取るのね。よっと」
緩やかな回転を伴って落ちてくるコインをレイは右の手の甲で受け止めて、そこに左手を被せる。
そしてゆっくりと左手を外せば、彼女の手の甲のコインはじゃしんの横顔を上に向けて静止していた。
「これ表ってことでいいんだよね?……それで?」
「ぎゃう!」
「いや、ぎゃうじゃなくて」
数秒待ってもレイの周りには何も変化がない。そのことをじゃしんに尋ねても、サムズアップをしながらウィンクを返してくるだけで、有益な情報を得られそうになかった。
・マジで意味わからなくて草
・b! じゃないんだよなぁ
・要検証案件
「はぁ、そうだね。っと、そういえば――」
手のひらにあるコインを眺めつつ嘆息したレイは、何かを思い出したようにメニュー欄の中から〈アイテム〉を確認すると、前回のワールドクエスト報酬で手に入れたアイテムの確認する。
ITEM【ブラック・パール】
世にも珍しい黒く輝く宝珠。これといった効果はないが、見た目の美しさから高値で取引される。
効果①:-
初めに手に取ったのは黒色の巨大な真珠。傷一つないそれを眺めながらレイは感想を口にする。
「あー、売却系アイテムね」
・確かに高く売れそう
・普通にうれしいやつ
・レイちゃん金欠だっけ?
「うーん、お金なんていくらあってもいいからありがたいんだけど、私こういうの売れないタイプなんだよね……。まぁ必要になった時に考えよう」
何とも言えない微妙な顔をしたレイは、【ブラック・パール】を〈アイテムポーチ〉にしまうと、次のアイテムを取り出した。
ITEM【道なき道のコンパス】
常に一定方向を指し続けているコンパス。その先に待ち受けるのは――。
効果①:とある場所への道を示す
・これはまたわけ分からんのが来たな
・なんか意味深過ぎない?
・謎の地図枠かな?
「そうっぽい。ってことはこれ……」
視聴者の言葉に頷くと、レイは一人思考する。以前手に入れた【謎の地図】は結果的にワールドクエストに続いていた。それを踏まえると、この【道なき道のコンパス】もその可能性が高い――と、そこまで考えてレイは首を横に振る。
「……いや、まだ分かんないか。取り敢えず、そのうち『とある場所』ってのを探してみることにして、次は――あぁ、いつものやつか」
ITEM【辰の紋章】
龍の形をした銀色の紋章。なにか特別な力を感じる。
効果①:???
※譲渡不可アイテム
続いて取り出したのはワールドクエストをクリアするといつも手に入る謎のアイテム。相変わらず不明な効果にレイは考えることを放棄すると、最後に唯一の装備品である【海賊王のコート】を取り出した。
ARMOR【海賊王のコート】
かつて大海原を制した男が使用した伝説のコート。端々に見える汚れが、その過酷さを雄弁に物語っている。
要求値:〈腕力〉500over,〈敏捷〉300over
変化値:〈腕力〉+500,〈敏捷〉+300,〈知性〉-500,〈信仰〉-500
効果①:パーティメンバーのステータス上昇(〈腕力〉+10%,〈敏捷〉+10%)
「かっこいい……けどやっぱり使えないし効果もいまいちかな」
・かっこいいか?
・結構好みわかれると思う。俺は好き
・まぁソロだといらんわな
背中に金色の髑髏の刺繍が入った黒いコートを広げたレイは使用できない事に少し残念がりつつも、半ば分かっていたのかしょうがないとそれをしまう。
「今回は即戦力級がなかったなぁ。やっぱり早く魔法を使えるようにならないと――」
「ぎゃう!」
「ん?」
そうして一通りの確認が終わり、レイが改めて決意を固めていると、頭上からじゃしんの鳴き声が聞こえてくる。
それにつられるように顔を上げれば、遠くの方に次の街のシルエットがうっすらと見え始めていた。
[TOPIC]
AREA【デテル砂漠】
辺り一面砂で覆われたエリア。
時間帯によって出現するモンスターが大きく異なることで有名であり、単純に強化されるというよりもがらりと性質が変わるため注意が必要。
また日中のエリアに一定時間留まることで、状態異常【渇望】を発症するため、探索するのであれば対策は必須となっている。




