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5-43 怖震う連鎖を断ち切って⑥


 ごくんと、メガロは大きく喉を鳴らす。


 それによってじゃしんと思われるシルエットが喉を通り、メガロの腹部へと落ちていく様がレイの目に映った。


「あんまり美味しくねえな。酒のつまみにもなりやしねぇ」


「……ッ!ふざけんな!」


 その光景を呆然と眺めていたレイだったが、げっぷを零しながら放った一言によって顔を強張らせると、再度右手を引いてメガロの腹部へと拳を叩きこむ。


「おいおい、さっきまでのパンチはどうしたよ!」


 だがしかし、【神の憑代】が解除された一撃ではダメージを与える事は叶わず、返す刀でメガロが腕を振り上げる。


 敏捷も元に戻ったせいか、その一撃を躱すことも出来ない。レイは悔し気に腕を交差して衝撃に備える。だが、その攻撃が直接レイに触れることはなかった。


「ッ!?」


「何だ?」


 突如二人の間に見えない壁(・・・・・)が現れたかと思えば、レイを守るようにメガロの一撃を受け止める。そしてその壁から突風が吹き荒れると、レイの体を吹き飛ばし、二人の間に距離を作った。


「お、おい大丈夫か!?」


「うん、何とか。そんな事より早く助けないと!もし、もし――!」


 ごろごろと転がってきたレイに、リボッタは心配の声を上げる。だが、そんなこと気にしていないと言わんばかりにすぐさま立ち上がれば、焦った様子でメガロを睨みつけた。


「お、落ち着け!お前の気持ちもわかるが焦っても仕方ないだろ!」


 その姿を見たリボッタは心配で仕方がなく、一刻も早く助け出したくて我を失っているのだと判断する。そのため冷静になるよう声を掛けるが、後に続く言葉――彼女の本心とは少しズレていた。


「大丈夫だ!アイツはダメージ喰らわないんだろ?すぐにどうこうなるってわけじゃ――」


「だから言ってるんだよ!もしじゃしんがお尻から出てきたら!一生そういう目で見なきゃいけなくなるじゃん!」


「……あぁ?」


 素っ頓狂な声を上げたリボッタは急激に冷水を頭から被ったかのようにクールダウンする。そして目頭を押さえ、少し疲れたように問いかけた。


「え?それだけ?」


「それだけ!?どれだけ絶望的な状況か分かってないの!?」


「い、いや、それはすまん。だがなんかもっとこう、心配とか……」


「心配はしてるよ!」


 だがそんなリボッタの気持ちを他所に動揺しっぱなしのレイは慌てた様子でメニュー欄から〈ステータス〉を開けば、リボッタの顔へと近づける。


「ほら見て!ステータス的にはHPが減ってないでしょ!じゃしんがそんな簡単にくたばることないから、問題はただ一つ、どうやって出てくるかなんだよ!分かる!?」


「お、おう、分かった。俺が悪かった」


「絶対に吐き出させる……!出し惜しみなんかしてられるかぁ!」


 もはやリボッタはついていけないと言わんばかりに両手を上げ後退し、さらにヒートアップしていくレイは【時限草】を取り出して口へと含む。


『3』カチッ


「ねぇ!さっさと吐き出したほうがいいよ!消化に悪いし!」


『2』カチッ


「忠告ありがとよ。だが安心しろ、俺は元々胃が強い方なんだ」


『1』カチッ


「あっそう!でも絶対に後悔させてやるから!」


「あ?それはどういう――」


 レイとメガロの舌戦の中、響く3カウント。そして例外なくその時は訪れた。


『0』カチッ


 ドォン…!と普段とは異なり、どこか籠るような爆発音。それと同時にメガロの腹部が膨れ上がり、絶叫が木霊する。


「グアァァァァァ!?」


「まだまだぁ!」


 だがレイはそこで手を止めない。目論見通り爆発したことを確認すると、第2第3の【時限草】を口へと含んでいき、継続的に爆発を引き起こす。


「ちょ、ちょっと待て!やめろ!」


「そっちが吐き出せば済む話でしょ!」


「……なんだこれ」


 蹲り、許しを請うメガロに対してレイは一心不乱に【時限草】を口へと含む。


 そんな光景に気の抜けてしまったリボッタが呆れたように呟くも、ある違和感に気が付く。


「でも様子がおかしくねーか?」


「えぇ、どうやらダメージが通ってるみたいですね」


 その違和感の正体を突き止めたのと共に、リボッタの隣にどこからともなくハッチが降り立った。


「……テメェ、くたばってなかったのかよ」


「先ほどレイさんを助けたのに、酷いですね」


 露骨に顔を顰めたリボッタに肩を竦めてやれやれと返したハッチは、改めてメガロの様子を見て考察を口にする。


「どうやら外側からの衝撃に強く、内側からの攻撃にはめっぽう弱いみたいですね。おそらく、あの大きな口が開いたタイミングで攻撃を通すタイプの敵かと」


「あー、なるほど。一理あるな」


「えぇ。ですのであれはあれで正攻法なのかもしれませんね」


「オ、オエェ……!」


 そんなやり取りをしていると、メガロの方にも変化が訪れていた。


 流石に爆発を喰らい過ぎたのか、片膝をついた状態で下を向き嗚咽を零すと、その口から黒色の毛玉のような存在がぼてっと吐き捨てられる。


「ぎゃうっ」


 地面に転がったじゃしんは状況が掴めていないのかきょろきょろと辺りを見渡し、べとべとの体に気付いたことで次第に状況を理解し、わなわなと震えだす。


「じゃしん!良かったぁ……」


「ぎゃう~!」


 そしてレイの安心したような声を聴いて感極まったのか、涙を浮かべながらレイの胸へと飛び込むように走り出す。


「くさっ!近づかないで!」


「ぎゃう!?」


 ――鼻をつまんだ状態で邪険に手で払われたが。


「お見事です、レイさん」


「あれ、生きてたんだ。てっきり脱落したと思ってたよ」


 じゃしんが呆然と立ち尽くしていると、レイに向かってハッチが声を掛ける。


「……お二人とも辛辣ですねぇ。そんなことより、あれを倒すために協力しませんか?」


「協力ぅ?」


 世界で一番信用のない男からでた単語にレイが胡散臭そうに眉を寄せれば、対するハッチもどこ吹く風といった様子で提案する。


「リボッタ様が動きを止め、その道を不肖私めがフォロー、レイ様にラストアタックを入れてもらうというのでどうでしょう」


「ふーん……。まぁいいよ。じゃあそれで行こう」


 少し考え込んだ様子のレイだったが、結局その提案を呑むように一つ頷く。そこに納得していないのか、リボッタが耳うちする。


「オイ、いいのかよ」


「大丈夫だって。多分、ハッチの狙いもここ(・・)じゃないだろうし、裏切るならもうちょっと後だよ」


「?それはどういう――」


「後で分かるよ。それよりも……」


 リボッタの問い返しに、レイは答えを濁して前を見やる。そこには怒りでぎらぎらと目をたぎらせたメガロの姿。


「テメェ等、絶対許さねぇ……!」


「元から許してもらうつもりなんてないけどね。さぁ、反撃の時間だよ」


 呪詛の籠った呟きに、レイは飄々と返す。そしてリボッタ、ハッチ、リヴァイの順に目をやった後、愛銃を構えながら勢いよく飛び出した。


[TOPIC]

WORD【〈ステータス〉】

メニュー欄にある項目の一つ。

主にプレイヤー及び召喚獣のステータスを確認することができ、リアルタイムで変化している。

それ以外にも取得済みのスキルの確認や必要経験値を確認することも出来る。

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― 新着の感想 ―
[一言] てーれーれーてれれれってれ~ じゃしんはうんこに進化した!
[一言] 更新お疲れ様です! 心配する方面も方面ですが… こ れ は 酷 い 絶対正攻法じゃないですよねこれ…w そして…反撃開始ですね…! 更新お待ちしています!
[良い点] これは酷い(褒め言葉)
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