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5-41 怖震う連鎖を断ち切って④


 メガロが最初にターゲットとしたのは先頭にいたリヴァイ。


 ぐっと溜めを作り踏み出された一歩によって、弾丸のような速度で肉薄し、右腕側面にあるヒレの刃で斬りつける。


『【ウォーターカーテン】!』


 対するリヴァイがスキルを発動すれば、両者の間を遮るように水のカーテンが出来上がる。それはいとも容易く斬り裂かれてしまうものの、メガロの足を止める事に成功し、その間にリヴァイは射程外へと逃れた。


「私達もいくよ!」


「ぎゃうっ!」


「おら、これでも喰らえ!」


 数秒遅れて、レイ達も行動を開始する。ある者は銃を構え発砲し、ある者は身振り手振りを使って周囲を鼓舞しつつ、またある者は黒いドクロの描かれた球体を取り出し投げつける。


「ハッ、効かねぇなぁ?」


 降り注ぐ銃弾の嵐や巻き起こる爆風は間違いなくメガロに直撃した。だがそれらを受けてなお、メガロの余裕の笑みは崩れない。それどころか身体にはかすり傷一つ存在せず、その発言がハッタリではない事を悠々と示していた。


「ではこれはいかがですか?」


「あぁ?」


「【ライトニング・ブレイク】」


 爆風に紛れ、いつの間にか背後に回り込んでいたハッチがその背中に触れながら必殺の一撃を見舞う。


 瞬間、迸る雷。


 バチィ!と鋭い音を鳴り響かせると、メガロの体を僅かに仰け反らせる。だが――。


「なんかしたか?俺を潰してぇならもっと気合い入れろや!」


「ッ、【風の踊り――」


 ニヤリと笑いながら振り返るメガロ。まったく効いた素振りのない獰猛な瞳と視線が合い、ハッチは咄嗟にスキルを発動しようとしたが、それが間に合うことはなかった。


 メガロは右腕が引き絞るように反対側の肩へと振り上げられると、弾かれるように背後にいるハッチへと放たれ、その拳によって十数メートルほど吹き飛ばされて砂煙を上げる。


「はっはぁ!こんなもんかぁ?」


「嘘だろ、あれ喰らってノーダメかよ……!」


「……?」


 仲間というには怪しいが、少なくとも現状の戦力では間違いなく上位に位置するハッチが一撃でやられてしまった上に、自分たちが攻撃したとしても傷一つつけられていない。


 たった数分の攻防の中で、リボッタは圧倒的な戦力差を感じ取り驚愕の表情を崩せない。だがその理不尽とも呼べる力の前に、レイは怒りよりもまず疑問を覚えた。


「まさか負けイベ?さっきの蛸も併せれば2連続?イヤイヤそんなバカな……。それに今までもワールドクエスト入ってからの負けイベはなかった筈」


「おい、どーすんだよこれ!」


 ぶつぶつと呟いて思考に没頭するレイの横でリボッタの焦った声が響く。だがそれすらも集中した彼女の耳には届かない。


「でもダメージは無いっぽい……。相手の防御力が高いから?それともスキルの効果でダメージ無効化してる?……銃の固定ダメージもなかったから後者っぽいけど……うん、検証が必要だね。じゃしん!」


「!?ぎゃ、ぎゃう!」


 暫くして、ある程度考えを纏めたレイはメガロを見据えつつ、じゃしんの名前を呼ぶ。


「【じゃしん賛歌】!」


「!ぎゃう! ぎゃ~、ぎゃ~――」


 急に名前を呼ばれ、少し怯えた様子で返事したじゃしんだったが、その意図が分かった途端、目に光を灯しながら喉の調子を整え、そして。


「Ra~~~♪」


「うおっ!?」


『これはっ……!?』


「なんだこりゃぁ……」


 ――その歌声で世界は停止する。


 指先一つ動かすことの出来なくなった3人はそれぞれ驚きと困惑の声を上げる。ただ、その中で唯一経験者であるレイだけは違うことを考えていた。


「状態異常は効く……ってことは完全に無敵じゃない?よし、次はリボッタ!」


「お、おおう!?何だ!?」


 次の検証のためにリボッタの名を呼べば、何故かじゃしんと同じように怯えた様子で返事するリボッタ。何故そんな態度をとるのか問い詰めたい気分になりつつも、レイはぐっとこらえて問いかける。


「アイツを毒状態にしたいんだけど丁度いいアイテムとか持ってない?」


「毒状態……あぁあるぜ!」


 レイの質問に肯定で返したリボッタは【じゃしん賛歌】の影響が解けるや否や、アイテムポーチを触り、一つのアイテムを取り出す。


「フェンガリ組お手製【呪詛蛇の吐息】だ!たらふく喰らいな!」


 それは紫色の筒状のアイテムだった。大きく息を吸った後、それを咥えたリボッタは肺に溜めた空気を全てのせて息を吐く。するとその筒の先端から勢いよく紫色の煙が飛び出していき、怪訝な表情を見せていたメガロの顔に当たった。


「あぁ!?今度は一体――ぐっ!?」


 最初は不快気に目を細め、手で払っていたメガロだったが、突然苦しそうに胸を押さえ、大きく開けていた口を閉じ、思惑通りの姿を見てレイはニヤリと笑みを深める。


「お、ビンゴ、効果ありっぽいね!しかも動きも止めてる?」


「【猛毒】に加えて【麻痺】状態も付与すんのさ!これから逃げれる奴なんざいねぇよ!」


「マジ?いいじゃんいいじゃん!じゃあリボッタ、どんどん行こう!」


 鼻高々といった様子で得意げに答えたリボッタだったが、続くレイの言葉に冷や水を掛けられたかのように真顔になる。


「え?いやこれ結構希少だし、在庫も少ないからあんまり……」


「え?文句ある?」


「……ちくしょう!もうどうにでもなりやがれってんだ!」


 だが同じ表情、同じトーンで返された答えに二の句を告げることが出来ず、やがて吹っ切れるかのように【呪詛蛇の吐息】を取り出してはメガロに向けて吐き出し始める。


「余裕あるっぽいし一応用意しておこう。――あ、そうだ、リヴァイ、質問してもいい?」


『……えっと何してるのかは聞かない方がいいのかな?僕に答えられることであれば答えるよ』


 暇を持て余し始めたレイは万が一の事態に備えて、じゃしんの目元を象ったアイマスクを装着しつつ、何事もなかったかのようにリヴァイに尋ねる。


「アレの倒し方。違う方法があったりする?」


『アレ、というのが『邪神の残滓』を指しているのであれば。もちろんあるよ』


 レイの姿に少々困惑しつつも、質問に素直に答えるリヴァイ。


『【海神の槍】に僕の力を乗せれば、邪悪な力も打ち払えるんだ。ほら、【デモニオクト】と戦った時にグリードが使っていただろう?』


「あぁ、あれか。じゃあその【海神の槍】ってのはどこに?」


『え?持っているんじゃないのかい?』


「……え?」


「ぎゃう?」


 まさかの答えに、お互いが素っ頓狂な声を上げる中、じゃしんだけがのほほんといった様子で首を傾げていた。


[TOPIC]

ITEM【呪詛蛇の吐息】

密林に潜む呪詛蛇の毒を抽出し、煙状に加工した暗殺具。一度吸えば逃れる術はない。

効果①:状態異常【猛毒】付与

効果②:状態異常【麻痺】付与


STATE【猛毒】

効果①:最大HPの1%の継続ダメージ(1%/5sec)


STATE【麻痺】

効果①:重度の行動阻害

効果②:〈敏捷〉ステータス低下


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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり、レイのワールドクエストと言えばショートカットだな
[一言] 今更だけど歌って「Ra」じゃなくて「La」な気がするけど、まあ面白いからいいか()
[一言] 更新お疲れ様です! 攻撃の大半が効かないとなると特殊なギミックボスな可能性が高そうですけど…アッ状態異常は効くんですね 多分リボッタ大赤字だろうなぁ…w南無。 ...あれ?まさかまた重要なキ…
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