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5-27 『巨大な樹の根で一休み』


『相変わらずデッケェ樹だな』


『っすね。いつ見ても壮観だ』


 モノクロの世界の中で、ガタイが良く肩にタツノオトシゴを乗せた男とそれよりも一回り以上若い青年が会話しているシーンが映る。


 ガタイの良い男――グリードの感嘆の言葉に同意するように青年が呟くと、グリードは信じられないと言った様子で青年に顔を向けた。


『メガロに風情を感じ取れるほどの感性があったのか……』


『おい、そりゃどう言う意味だ……!?』


『はっはっは、冗談だよ!んでたっつん、ここに何のようなんだ?』


『くるる~!』


 あまりに無礼な一言にメガロと呼ばれた青年がこめかみに青筋を浮かべ、それを見て豪快に笑ったグリードは肩に乗るたっつんに話しかける。


『おっと、あっちになんかあるのか?』


『くるる~』


『ちょっとお頭!あぁもう……』


 たっつんは鳴き声を上げると、空中を泳ぐようにして大樹の根元にある洞窟のような深い落とし穴へと進んでいき、その背後をついていく形でグリードも根元へと降っていく。


 制止の声を聴きもしない背中に、諦めの声を上げた他の船員達が不安そうに見守る中、再び地上へと顔を出したグリードの手にはなにやら丸い物体が握られていた。


『お頭、なんですかそれ?』


『分からん、水晶だってのは何となく分かるが……』


 問いかけにグリード自身も首を傾げて手元を見る。そこにあるのは中心に向かうほど濃くなっていく青い水晶のような物体であり、傷一つなくキラキラと輝いていた。


『くるる~!』


『うおっ!?びっくりした!?誰だ――ってたっつんか!?なに?これが鍵?』


 そこにいる船員達が全員首を傾げている中、声を上げるたっつん。それに唯一人、グリードだけが驚いたように目を丸くしている。


『くるる~』


『『僕のお家』……?あぁなるほど、お前家に帰りたかったのか』


『くるる~!』


『おーし分かった!俺達がお前を家まで帰してやるよ!次はどこに向かえばいいんだ?』


『くるる~!』


 独特の鳴き声を聞いて、グリードは言いたいことを完全に理解したのか陽気に笑いながらたっつんと次の目的地を話し合う。


『あーあー、また勝手に決めちゃって』


『まぁ船長らしいっちゃらしいだろ』


『ってか何で会話が成立してんの……?』


 船長に振り回される形となる船員達は困惑しながらも諦めたように苦笑すると、船へと向かうその背中に続いていき、やがてモノクロのシーンは漂う霧へと戻っていった。


「なるほど、そういうストーリーか」


 それを眺めていたのは本を腰に携え、黒いフードを被った少女。それを見終えた少女――レイは感想とともに気になった点を呟く。


「にしてもこのメガロっていう人、どーも似ているような……」


 記憶にある人物はもっと歳を重ねており、加えて汚らしい髭を蓄えているため、ぱっと見では同一人物のように思えないのだが、その目元や口元に注目すれば確かに面影が存在していた。


「もしかしてこっちの子孫だったりするのかな?まぁいいや、今度会った時に訊けば分かるでしょ」


 結局何度みても答えが出なかったため、一旦それは置いておいて本来の目的へと行動を移す。


 霧がかった木の根元を見渡せば、木のマークのような紋様が刻まれており、その足元には他の島で見つけた時と同じような透明のカードを発見する。


「ん?これは――」


 同時に水色の水晶らしき物も落ちており、レイはそれを拾って確認する。


ITEM【青海の深水晶】

海を閉じ込めたような藍色の水晶。

効果①:何処かの扉を開く


「さっき映ってたやつかな?まぁ後で使うでしょ」


 それは先ほど見た映像の中にあったアイテムであり、効果も一致しているため、後々使うのだろうと判断し、レイはアイテムポーチへと収納する。


「よし。リボッタ、こっちは終わったよ」


『分かった。こっちの要求は一つ、『きょうじん』がこの島から出るまで誰一人邪魔しない事。さもなくば――』


 そのままリボッタの名を呼ぶと、フレンドコールを通じて返答が届く。向こう側では脅迫紛いの要求が聞こえてきており、レイは歩きだしながらも苦笑した。


「なかなかあくどい事考えるなぁ」


 予め聞いていた作戦通りではあるが、島を丸ごと人質に取るとは例え思い付いても到底実行できる物ではない。現にレイが街に足を踏み入れても遠巻きに睨まれる事はあれど襲われる事はなく、この状況を作り出したリボッタをレイは改めて見直していた。


「ぎゃう~!」


「お、じゃしんお疲れ様――って何そのジュース。一口ちょうだい」


「ぎゃうぎゃーう!」


 そこにじゃしんが合流し、手に持ったジュースをレイに引ったくられる。容赦なくストローを口にするレイに対してじゃしんは涙目になりながら彼女の頭に取り付く。


 そんな余裕すら感じる、いつも通りのやりとりをしつつも一直線に潜水艦へと辿り着いたレイとじゃしん。そのままハッチを開けて中に入り込み操縦席へと座る。


「リボッタ、船乗ったけどこれどうやって動かすんだっけ」


『車と一緒だ。キーを回して横のギアを変更すりゃあエンジンがかかる。後はハンドルで操作して移動しろ』


「はいよー」


 リボッタの返答を聞きつつガチャガチャとレバーを動かすと、ブルンと大きく船体を揺らしながらエンジンが起動し、どんどんと沖合へと潜水艦は進んでいく。


『どうだ?動いたか?』


「うん、もう結構離れたよ」


 しばらく経った後リボッタから確認の声が飛ぶと返す形でレイが言葉を発し、それを聞いたリボッタが更に言葉を続いた。


『そうか。おい、お前達の協力(・・)のおかげで無事出航できたみたいだぜ。ありがとよ。――んで、ここからは個人的な話だ。前回はよくも俺の事追いかけ回してくれたよなァ?』


「おっと?」


「ぎゃう?」


 随分と悪意のある声でそう告げるリボッタの声を聞き、流れが変わったことを悟ったレイとじゃしんは耳をそばたてる。


『悪いが俺は根に持つタイプだ。今度からは喧嘩を売る相手はしっかりと考えてから行動するのをオススメするぜ』


 その言葉と共に背後から聞こえる爆発音。それも何度も何度も繰り返すように鳴り響いているのがレイ達の耳に届いていた。


『はっ!ざまぁみ――』


 そして最後に聞こえた愉悦に塗れた声と共に、リボッタとの通信が途絶える。恐らく島諸共自らデスしたのだろう、その捨身も辞さない執念にレイは思わず苦笑する。


「うわぁ、派手にやったね。よくそんな酷いことできるよね」


「ぎゃう……?」


「え、何その顔」


 『どの口が言ってんだ?』とでも言いたげに細くなった目にレイは思わずたじろぐも、じゃしんからの答えはない。


 そうして微妙な空気のまま、燃え盛る『海賊の楽園』を背景に潜水艦は次の島へと進んでいった。

 

[TOPIC]

ITEM【トロピカルジュース】

トロピカルアイランド名産のドリンク。大人から子供まで楽しめるフルーティーな味わい。

効果①:<HP>及び<MP>を回復(300)

効果②:全ステータス上昇(10)※重複不可


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― 新着の感想 ―
[一言] 漢見せやがって・・・
[気になる点] "そこにいるプレイヤー達が全員首を傾げている中、声を上げるたっつん。それに唯一人、グリードだけが反応していた。" 何かプレイヤーおる。 [一言] 船員がプレイヤーになってます。
[一言] 更新お疲れ様です! なるほど、、、そのカギを使って、聖獣の住処への入り口を開く、と。 そして、右腕の子孫、、?だったのかなぁ、、? 結局島爆破とは草生える。けどシカタナイネ、、、やったらやり…
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