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5-22 『きょうじん』式降下作戦


 …………――――


「おい、様子はどうだ」


「何ともねぇよ。暇なくらいだ」


 島の中心部にある滝壺にて、二人の男が話している。


「ってか過剰過ぎないか?こんなの蟻一匹通れないだろ」


「俺もそう思うが……相手はあの『魔王』に匹敵するって噂だぜ?そもそも船長命令なんだ、潔く諦めろ」


 見張り役として配置された彼らは勢いよく流れ落ちる滝の音をBGMに、その理由を作った人物について語り合う。


「へいへい、分かってますよ。それよりも本当に来るのかね、『きょうじん』は」


「さぁ、案外ビビッて怖気づいてるかもな」


「おい、それだと俺達がここにいるのが馬鹿みてぇじゃねぇか」


「いやいや、本番はその後だろ?遂に今日、【007艦隊】や【黄昏の人魚】と派手にドンパチ出来るんだからよぉ」


「でも時間が限られてんだろ?じゃあこんな悠長なことしてる場合かよって思ってな」


「念には念を入れてって事だよ。それに別動隊はもう動いてるみたいだし」


 不満を口にする男がもう一人の男から諭されるも、納得がいかないのか如何にも退屈そうな表情を浮かべる。


「俺もそっちが良かったなぁ。でもこんな人数いるんだぞ?どっから侵入できるってんだ」


「分かる。……あれじゃね?空から来るとか?」


 そんなことを言いながら二人は空を見上げ、同時に噴出して大笑いを始める。


「アッハッハ!んな訳ねぇだろ!落下ダメージもあるんだぞ?地面に着いた瞬間即ミンチだろ!」


「クックック、だよな!ってか船長は?」


「あ?あぁ、どっか出掛けてくるって言って消えたらしい――」


 そうして再び話題が映った彼らの脳内に、『空』というワードが消える。これから真実になるとも気付かずに……。


 ――――…………


 一方その頃。


「どう?着いた?いける?」


 大海原を見渡せる遥か大空にて、下を見ないように目を瞑ったレイは自身の身の丈を大きく変える紅白模様の鳥の背に乗っていた。


「コケ~……」


 絶賛乗り物とされている鳥――コウテイは『こんなので呼び出されるのか』とでも言いたげな疲れた鳴き声を漏らすが、指示には律儀に従っているようで、翼を大きく動かしながら青空に滞空している。


 そしてその眼下には豆粒ほどの大きさの島が見え、視界の見えないレイの代わりにコウテイがそれを捕らえていた。


「ふぅ、よしじゃあいつでもいけるってことだね。なるほどなるほど……」


「……コケ?」


『あれ?ご主人?どうしました?』


 準備は完了したものの、一向に動こうとしないレイに対し、イブルとコウテイが訝しげな声で問いかける。


「い、いや。もうちょっと心の準備をね?ほら一回やったことあるとはいえあの時はそうせざるを得なかったし……いや、今もそうなんだけど……」


「ぎゃう……ぎゃう……」


「コケ~」


 目を開けては瞑るを繰り返しながら、あーでもないこーでもないと要領の得ない言い訳を繰り返すレイに、その隣で念仏でも唱えるかのように手をすり合わせてぶつぶつと何かを唱えているじゃしん。あまりにもふがいない二人の様子を視界に納めたコウテイは呆れたように呟きながらイブルに話しかける。


「コケ~?」


『ん?言葉ですか?確かに分かりやすが……』


「コケ」


『あぁ、通訳してほしいってことですかい。お任せくだせぇ』


 何やら会話がまとまったらしく、ふわふわと浮かぶイブルは鷹揚に頷くと、一つ咳払いをしてレイに向かって話しかける。


『ご主人、今からコウテイ殿の言葉をそっくり伝えますからよく聞いてくだせぇ』


「え、何?」


「コケコケコーケコケ」


『『私の能力は強化、先の【邪神の因子】戦の時のように一時的ながらも莫大なパワーアップを施すのであって、乗り物として使われるのは不服である』』


 未だに薄目しか開いてないレイは唐突に始まった通訳に対して困惑した声を上げたものの、それに構うことなくイブルを通したコウテイの言葉。それを聞いてレイは申し訳なさげに言葉を吐く。


「あ、そうなんだ、それはごめんだけど他に方法がなくて――」


「コケ」


『『それから』』


 だがそんなことはどうでもいいと言わんばかりに遮られると、コウテイがちらりと首を後ろに向けて一鳴きした。


「コケコケ」


『『行くなら早くした方がいい、時間があるのだろう?』』


「いやそれは分かってるんだけどさぁ……」


 その言葉を『キャプテングリードの宝』の制限時間だと判断したレイは拗ねたように唇を尖らせる。ただそれを見たコウテイはゆっくりと首を振った。


「コケ、コケコーケ」


『『違う、私がここにいられる時間だ』』


「あ」


 その言葉の意味に気が付いた瞬間、レイは間抜けな声を上げ、同時に紫色の雷が直撃した(・・・・・・・・・)


「ちょ、ちょっと待って……!」


「ぎゃうっ!?ぎゃうっ!?」


『あちゃあ、時間ですね』


 その雷によるダメージは存在しない。だがそれによって足場となっていたコウテイの姿が煙のように消え、突然空中に放り出される形となった彼らは分かりやすく取り乱す。


 そして始まる、重力による落下運動。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!!?!?!!」


「ぎゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ?!?!?!??!!」


 『ヒモなしバンジー』ならぬ『パラシュート無しスカイダイビング』を前に嘗てないほどの叫び声をあげたレイとじゃしん。


 お互いが抱き合った状態で、半ば放心状態となっていた彼等だったが、顔に当たる痛いほどの風の勢いを感じ、次第に大きくなっていく島を前に焦りを募らせる。


「ぎゃうっ!ぎゃうっ!」


「わ、分かってるって!取り敢えず【月の石】さえ持てば……!」


 じゃしんの声とともにアイテムポーチへと手を伸ばしたレイはそこから【月の石】を取り出してぎゅっと握りしめる。だがそれによって速度が落ちることはない。


「あ、後は水の中に入ったら【バブルアーマー】を着て、その後は――」


 【月の石】の効果に僅かながら不安に駆られる気持ちを塗り潰すように、レイは今後の予定で脳内を埋める。


 その間にもどんどんと地面は近づいており、狙い通りの場所へとピンポイントに向かい――。


 ドボンッ!


 ――爆音を響かせながら、敵の拠点のど真ん中へと着水した。


[TOPIC]

OTHER【とある見張りの会話】


「はぁ~あ、いつまでやればいいんだろうな」

「だな、流石にそろそろ……ん?」

「? どうした?」

「いや、なんか見えねぇか?」

「見えるって空だぞ?一体何が――本当だ」

「……おい、なんか近づいてきてないか」

「マジじゃねぇか……お、おいあれってッ!」

「親方ッ!空から女の子がッ!?」

「五秒で受け止めろ!――ってふざけてる場合じゃ――」

ドボンッ!

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[一言] 見張りw 案外余裕あるなw
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