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5-4 二人だけの作戦会議


「はぁ、俺はどこで間違っちまったんだ……」


「最初からじゃない?そんな事より詳しく教えてよ」


 嘆きの声を上げるリボッタをバッサリと切り捨てるレイ。それを恨みがましく睨みつけながらも、リボッタは今日何度目か分からない溜息を零して説明を始める。


「……そうだな。じゃあこれを見てくれ」


「おぉ」


 リボッタが巨大水槽に向けて指を振ると、魚達の泳ぐガラスが一瞬ブレる。次の瞬間、レイ達の眼前には地図が表示され、レイは感心したように呟く。


「そっか、あったねスクリーン機能」


「あぁ。これで映画観るのも中々乙なもんで――じゃなくて。今映ってんのが例の地図だ」


 その言葉を聞いたレイは改めて画面を注視する。真四角の枠の中央には×印が存在し、それを囲うように炎のマーク、雫のマーク、樹のマーク、そして円のマークが時計回りに描かれており、何かを示唆しているようだった。


「これが【ポセイディア海】の地図だって根拠は?」


「この×印が見えるか?ここが『海上都市グランブルーム』だ。そう見た場合、このマークとぽつぽつと点在する島々の位置関係に辻褄が合う」


 問いかけに対して自信満々に答えたリボッタは、それにだなと、再度指をフリックする。すると即座に画面が切り替わり、今度はヒョウタンのような長細い島の絵が表示された。


「これは裏面に書いてあった物だ。この形が完全に『グランブルーム』と一致した。だからこの説はほぼほぼ間違いないといっても良い」


「ふーん、なるほどね。って事はさっきのマークの謎を解明するだけってわけだ」


 そこまでの説明に特に矛盾点を感じなかったレイはその説明を理解して飲み込むと、『次』の話を問いかける。


「それで?どこまで分かってんの?」


「さっぱりだよ。さっきも言った通り、調べようにも4つの内3つの島には『海賊連合』の奴等が陣取ってて碌に調べることも出来ねぇ。余った一つには何にもねぇし、マジで詰んでる」


「そりゃなんとも……。ちなみに『海賊連合』って詳しく分かってないんだけど」


 気の毒そうな視線を浮かべたレイが改めて疑問を口にすると、今度はそのことについての説明をリボッタが開始する。


「そうだな、現状を知ってもらうためには教えとくか。いいか、『海賊連合』っつーのはその名の通り、自分達から海賊を名乗るクランの集合体だ」


「あれ、一つのクランじゃないんだ?なんでそんなことを?」


「【ポセイディア海】で海賊を名乗ってる奴等の目的なんてただ一つだ」


 首を傾げたレイの質問に、リボッタは呆れたように答えを返す。


「『キャプテン・グリードの財宝』を見つけること。わざわざ連合なんてもんを作って八傑同盟に入った理由も、これ以上ライバルや邪魔者を増やさない為だろうな」


「ふむ、情報を独占したいことかな?『キャプテン・グリードの財宝』ってのは?」


「『グランブルーム』にいきゃ聞ける伝説だよ。詳しい話は忘れたが、どうやら大昔の大海賊の宝がこの海に眠っているらしい」


「へー」


 リボッタの回答にレイは感嘆の声を漏らす。それぞれの思惑が思いのほか複雑に絡み合っている状況に面倒そうだなと感じると同時に、その後に続いた話については彼女自身、どこか惹かれる部分があった。


 彼女がそんな事を考えている間にも、リボッタは話を続けるぞと一言呟き、先ほどのマークが描かれた地図に画面を切り替える。


「中でも要注意なのは3つの海賊団。まずはここ、雫のマーク。ここを陣取ってるのが『海鬼団(シーオーガーズ)』だ」


「『海鬼団』?」


「あぁ、コイツ等が一番海賊っぽいぞ。弱肉強食を掲げてるせいか勝てば全部奪えるし、負ければ全部失う事になる。数が多くて鬱陶しいがな」


「へぇ、それは何とかなりそうな……。じゃあこの樹のマークにいるのは?」


「『黄昏(トワイライト)()人魚(マーメイド)』だな。そこは島に入るだけなら難しくない」


 続いてレイが指を差したのは画面左下に映る樹のマーク。それを見たリボッタが頷きながらも解説すると、レイは首を捻る。


「と言うと?」


「コイツ等はクランメンバーが女だけでな。この場所で店構えてんだよ。馬鹿な男相手にな」


 言葉の通り、心底馬鹿にした感情を隠すことなく吐き捨てるリボッタ。それを聞いたレイはそういうお店か(・・・・・・・)と理解しつつも、浮かんだ疑問を素直に口にする。


「リボッタもそうなんじゃないの?」


「バカ言うな。俺はリアルじゃねぇと満足――うぉっほん!話を戻すぞ。さっきも言った通り、入るの自体は簡単だ。だが、大事な部分は隠してるみてぇでな。ちょっと裏側に入ろうとした瞬間、速攻で島から追い出された」


「大事な部分、ねぇ」


 その意味深な言葉にレイは少し俯いて思考する。その言葉を額面通り捉えるのであれば、『黄昏の人魚』は何かを掴んでいるという事を意味しており、それは他の海賊団(・・・・・)にも言える事だろうと彼女は推測する。


「最後はここ、円のマークの場所だな。『007艦隊』、ここが一番糞だ」


 次に指さしたのは左上に存在するまん丸の円のマーク。そこを指さしたリボッタは汚物でも見るような、最大限侮蔑を込めた表情を浮かべる。


「こいつらはマジで島にすら入らせてくれねぇ。それどころか近寄っただけで攻撃してきやがる。正真正銘のゴミ共だ」


「めっちゃキレてるじゃん……。でもなんとなく分かった。他は?」


「小粒はちょくちょくいるが、基本取るに足らねぇ雑魚だ。問題はこの3つの海賊どもをどうするかなんだが……」


「えっと、『グランブルーム』は調べてないの?ここにもヒントがありそうなもんだけど」


「……ここはもっと駄目だ。『大怪盗』に狙われてて調べるどころじゃねぇ」


 悩むように考え始めたリボッタに、今度は中央のバツ印を指さしてレイが質問すると、今日一番の苦い顔で苦しそうに言葉を吐く。


「あぁ、そういえば言ってたね。でも何で狙われてるの?」


「知るか。俺が聞きてぇよ」


 その異名のプレイヤーをレイも知っていた。それこそ彼女が敬愛してやまないセブン――には届かないものの、数あるプレイヤーの中でも有名な部類のそのプレイヤーの名称に心当たりがあったのだ。


 ただその情報を持っていたとしてもその目的までは分からない。少しの間、唸り声を上げながらも考え込んでいたレイだったが、やがて埒が明かないと判断したのか、それともただ単に面倒になったのか、思考を切り上げて体を動かす。


「う~ん、やっぱし行ってみないと分かんないかな」


「は?まさかお前」


「やっぱりこういう時は自分の脚で探さないとね。さ、行くよリボッタ」


 立ち上がったレイは凝り固まった体をほぐすように大きく伸びをすると、一言声を掛けてログアウトしていく。それを見届けたリボッタはうんざりと疲れた顔をしたものの、その後に続くようにその場から消えていなくなった。


[TOPIC]

CRAN【海賊連合】

【ポセイディア海】にて海賊を名乗るプレイヤー達による合同クラン。代表は【キッド】、【ポニー】、【イソーロ】。

クラン【007艦隊】のリーダー【イソーロ】によって提唱され、『海の静穏を守るため』という名目で結成された連合だが、本命は『『キャプテン・グリードの財宝』を狙うプレイヤーを牽制すること』にあり、【WorkerS】の勢力縮小に伴ってその排斥行動は活発化している。そのためクラン間の中は最悪であり、小競り合いを起こすことも少なくない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 弱肉強食のシーオーガーズが一番まともって
[良い点] キャプテン・グリードとかイベントの匂いしかねぇの この世の全てが置いてそう(粉蜜柑)
[一言] 更新お疲れ様です! なるほど、炎、雫、木、円、、、そして中央の× 三海賊もいるのかぁ、、、これは辛そう、、、 うーん、ここにも聖獣はいると思うんだけど、なんだろうかなぁ、、 現状、四要素と中…
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