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5-2 大型アップデートが入りました


「あぁ、そういえば。レイさんアップデートの内容見ましたか~?」


 クランについての展望が少し落ち着きを見せ始めた頃、スラミンはふと、思い出したかのように話題を変える。それを聞いたレイは一度大きく頷くと、その流れに乗った。


「もちろん。レイドボス、でしょ?」


「ですね、どう思います~?」


 スラミンから視線を外したレイはウィンドウを開きバナーに表示されたアップデート情報を開く。


 前半部分はプロデューサーレターという名のプレイヤーを煽る言葉で埋め尽くされているため、レイはささっと読み飛ばして今回の主題『レイドボス』についての記述を再確認した。


[20xx年10月08日に『ToY』パッチVer.2.13『災害級の支配者達ディザスター・ルーラー』がリリースされました。このパッチにより『ToY』の世界には新たに4体のモンスターが出現するとようになります。この4体は世界中を徘徊し、プレイヤーの皆様の前に立ちはだかります。そのスケールはまさに"災害"。打倒したプレイヤーはまさしく"英雄"となる事でしょう。是非周囲のプレイヤーと協力し、攻略してみて下さい]


「"災害"に"英雄"か……。これ自体は楽しそうでいいんだけど、問題は――」


 おそらく書いている人が変わったんだろう、丁寧に書かれたその内容に難色を示すレイ。感想を述べながらも、その理由となる続きの文章に目を滑らせる。


[この4体――以下"レイドボス"――はプレイヤーが攻撃を加えたタイミングで戦闘開始となります。参加人数に制限はありませんが、撃破した際の特別報酬は撃破したプレイヤー(・・・・・・・・・)一人に配布(・・・・・)されます。破格の性能を誇るその報酬と名誉をぜひその手に掴みましょう!]


「一人って、これ要するにラストアタックとった人が総取りって事でしょ?絶対喧嘩になるよね?」


「なりますね~。というよりもう既に起きてるみたいですよ~?」


「だよねぇ」


 その言葉を聞いたレイは呆れたようにため息を零す。それは諍いを起こしているプレイヤー達に向けてではなく、こんな仕様にした運営に向けてだった。


「ここの運営ってさ、ちょっと変わってるよね?なんか事あるごとにプレイヤーを争わせようとしてない?」


「そんなの今更では~?そもそもの話、防ごうとする姿勢すら見せてないですしね~」


「それはそうなんだけど……」


 あっけらかんと言い放つスラミンにやはり納得がいかないのか唇を尖らせるレイ。数々の理不尽からか、どうやら彼女の中で運営はあまり信用できない物という位置づけになっているようだった。


「まぁまぁ、そんなこと考えても解決しないので忘れましょう~?取り敢えず、じゃしん教としてはレイドボスを倒しに行きます~?おそらく皆レイさんの為なら喜んでラストアタック差し出すと思いますけど~」


「いや、そこまでやってもらうのも気が引けるよ……。探すのも面倒だし、出会ったら挑戦してみるかな。クランとしてはやらない方針で」


「ではそのように。あ、もう一個のアプデの方はどうですか~?」


「もう一個……あぁ、称号の事?」


 スラミンの問いかけに対し、レイはアップデート情報をスライドさせて該当箇所を見る。そこには『称号』についても記載があった。


[称号システムについて、現在入手出来ているプレイヤーが一握りであり、ほとんどのプレイヤーにとって縁のない物となってしまっております。そこで新たに称号を追加致しました。これらは現在実装されている称号と比べて性能は落ちるものの、入手難易度は格段に低くなっております。是非、探してみて下さい]


「これは良いね。スラミンさんは何か手に入れたの?」


「そうなんです~!私は『スライム愛好家』なるものが追加されてまして~!もう運営さん分かってるなと~!」


「そ、そうなんだ、良かったね。私は特に――あ、ワールドクエストの奴があったな」


 目を輝かせながらハイテンションで捲し立てるスラミンに気圧されつつも、再度ステータス画面を開くレイ。アップデートによって入手した称号ではないが、新たに追加されている項目について、その効果を確認した。


称号【闇を振り払う英雄】

火山に眠る不死鳥とともに闇を切り払った英雄の証。

取得条件:ワールドクエスト【その鳴き声で目を醒ますのは】をクリア

効果:NPCからの好感度上昇


「NPCからの好感度……?」


 その見慣れぬ効果にレイは思わず首を捻る。その文言だけでは強いのか弱いのかどころか、使い道すらいまいち掴めない。


「何に使うんでしょう?まぁ良い事には間違いなさそうです~」


「それもそうだね。――そうだ、ついでにアイテムも見ておこっと」


 スラミンの言葉に気にしないことに決めたレイは、アイテム欄へとウィンドウを遷移させ、手に入れた報酬へと手を伸ばす。


ITEM【不死鳥の羽根】

不死を関する神鳥の一部。その輝きは千里を見通し、生死すらも超越すると言われている。

効果①:素材アイテム


ITEM【風化した鍵】

風化してボロボロになった鍵。先端が十二角形となっている。

効果①:扉を開ける


ITEM【酉の紋章】

鳥の形をした銀色の紋章。なにか特別な力を感じる。

効果①:???

※譲渡不可アイテム

残使用回数:-


「――うん、全部よくわかんない!」


「あら~」


 その全ての効果が今すぐに使用できるものでもなく、何に使うか分からない物がほとんどであった。把握も糞もない状況に、早々に思考を放棄したレイは最後の一つのアイテムに目を向け、落胆したように息を零した。


ARMOR【消エヌ炎ノ羽衣】

不死鳥の炎を宿した赤い羽衣。ひらひらと揺らめく絹は炎を纏い、太陽のように周囲を照らす。

上昇値:HP+200/敏捷+150/技量+150

要求値:/敏捷→200/技量→200/信仰→200

効果①:SKILL【天照炎舞】


SKILL【天照炎舞】

その舞踊は不死鳥へと捧げる儀式。信じる者には加護を与え、仇なす者には相応の報いを与えるだろう。

CT:-

効果①:自身に【舞踊】を付与

効果②:味方にHPリジェネ効果を付与(10/1sec)

効果③:相手に【火傷】を付与


「まーた装備できない奴だしさぁ……」


「書いてあることは強そうなんですけどね~」


 その効果を目にした二人は唸る。攻防一体のそのスキルはかなり魅力的ではあったが、いかんせん要求値が高すぎで装備できる見込みもない。そのことをレイはもったいないと思うが、一方でスラミンは別のベクトルで残念がっているようだった。


「残念、これを使えばレイさんのダンスを見ることが出来たのに……」


「あ、そっち?そっか、これ踊らなきゃいけないのか。じゃあ結局使ってなかったかも」


「それを動画で投稿すれば百万は確実……えっちぃ衣装なら猶更……」


「おーい、もしもーし?不穏な単語全部聞こえてるからね~?」


「惜しい……あまりにも……。何とかぺけ丸さんにお願いして装備できるように改造――」


「いやだからやらないってば!?聞いてよ!?」


 ぶつぶつと何やら怪しい計画を立てようとしているスラミンを止めるためレイが大声を出すと、スラミンはっと顔を上げて胡散臭い笑みを浮かべる。


「冗談じゃないですか~。それで、レイさんはこれからどうするんです~?」


「なんか誤魔かされた気がする……まぁいいや。ん~、特に何も考えてないんだよね。強いて言うならレベル上げもだけど、このままゆっくりするのもあり――ん?」


 スラミンの問いかけにレイが頭を悩ましていると、突如ピコンと彼女の耳に電子音が響く。どうやらフレンドからのメッセージが届いたらしい、すぐさまメニューから<フレンド欄>に跳んだ。


「え?」


「どうかしましたか~?」


「あぁいやなんでも」


 そこに書かれた人物名に思わず声が出たレイは、首を捻るスラミンに手を振りながらも眉を顰める。少し警戒しながらもその中身を表示し、一つ溜息を零した。


「あー……、そんな時間ないみたい」


「? 何かあったみたいですが、どなたから~?」


「う~ん、腐れ縁、って所かな?」


 スラミンに苦笑しながら返答したレイは再度視線を下に落とす。そのウィンドウには随分と懐かしく感じる人物から、簡潔に一言、こう書かれていた。


[From:リボッタ

おい、助けてくれ]


[TOPIC]

TITLE【スライム愛好家】

スライム好きのスライム好きによるスライム好きのための称号。心からスライムを愛している証。

効果①:スライム系モンスターに成長補正(1.1倍)


取得条件:スライム系統モンスターを10体以上召喚


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― 新着の感想 ―
[良い点] レイドボスかぁ どうやって終わるのだろうか [一言] このアイテムたちはリボッタのイベントに使うんだろうなぁ 鍵ってことは隠されたお宝とか?
[一言] あの人狙ってやってるよなぁ 今度はどうしたんだろ また捕まったとか?
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