4-42 その鳴き声に目を醒ますのは④
【お知らせ】
当初のプロットから少しズレが生じた影響により、スキルの効果を一部修正しました。
それに伴って一部内容を差し替えております。(見直してもらえると、最新話が分かりやすくなります)
皆様にはご不便をおかけ致しますが、何卒よろしくお願いします。
変更話『4-10 ついに時代が追い付いた?』
変更点『スキルの効果、およびスキルの名称の変更』
・SKILL【邪ナル封具】→SKILL【邪ナル封具《神隠》】
<修正前>眼帯を装備
→<修正後>完全に視界が覆われる
動きを止めている【邪神の因子】の前で、一部が分裂すると人の形を成し、色づいてクラールへと変身する。
「作戦会議はもういいので?」
「あぁ似非神父くん、待ってくれてありがとね」
そんなクラールの前に立ちはだかるように、セブン、そして【WorkerS】の面々が並んだ。
「でも良かったの?僕たち結構強いよ?」
「えぇ構いません。どうせ全て呑み込まれる定めですから」
「ヒュー!言うねぇ!」
「おい、お喋りはそこまでにしろ」
お互い笑顔ながらもその言葉の端端に棘を含んだ応酬は、ギークの一言によって止められる。
「ほーい、じゃ。やろっか」
「えぇ、良い終焉を」
セブンの言葉に同意したクラールが合言葉を口にすると、【邪神の因子】は行動を再開する。
津波のように波打ち体を脈動させるとクラールに構うことなく前進し、セブンと【WorkerS】の面々に襲い掛かった。
「第一班、前へ!打ち方用意!」
対してギークはあらかじめ立てていた作戦通りに指示を飛ばす。それに応じるように10人ほどのプレイヤーが前に出ると、全員同じ機関銃の様な武器を取り出して構え始める。
「撃て!」
そして号令と共に無数の弾丸が放たれる。襲い来る波に抗うように放たれたそれらは【邪神の因子】に風穴を開け、近づかせる事を良しとしない。
「撃ち終わった者から下がって交代しろ!決して攻撃を絶やすな!」
「「「はっ!」」」
第一班が打ち切ったのを確認したギークはすぐさま次の指示を飛ばして班の入れ替えを行う。
前に出た第二班は同じように機関銃を構えて打ち、後ろに下がった第一班はそのすきにリロードを行う。
それを全部で三班で行い、可能な限り隙をなくした弾幕の嵐は効果的に【邪神の因子】の進行速度を落としており、そのルーティンが安定したのを確認したギークは振り返ってセブンの方を向く。
「おい、アレを返せ」
「? アレって?」
「惚けるな!【英雄の旗印】に決まっているだろう!」
不思議そうな表情を浮かべるセブンにギークは怒鳴り声を上げながら右手を差し出す。
「アレを使えば確実だろう!ここにいる全員の為に――」
「全員の為?ははっ、馬鹿言うなよ。僕はいつだって、僕のためにしか動かないぜ?」
最善であろう提案をするギークを、心底小馬鹿にするように鼻で笑うセブン。そして続けられた言葉を聞いて、ギークは不快そうに眉を顰める。
「……貴様、ここにきて裏切るつもりか?」
「まさか、まだレイちゃんには嫌われたくないしね。というより使わないなんて一言も言ってないけど?」
鼻歌でも歌いそうな様子で取り出したアイテムは、まさしく話題に出ていた【英雄の旗印】。まるで見せつけるかのように掲げられたそれを忌々しげに見つめながらも、ギークは浮かんだ疑問を口にする。
「返す……訳ではないんだろうな。何故それを?貴様に使い道はないだろう?」
その効果は任意の他者よりステータスを取得するモノであり、彼女にステータスを渡すプレイヤーが存在しない以上、宝の持ち腐れだとギークは思っていた。だが、『魔王』は凡人の考えを
否定する。
「甘いなぁ、というより思考が固い。もっと柔軟に対応しなきゃ」
リップ音を鳴らし手指を振った彼女の足元に紫色の魔法陣が出現し、煙と共に厳かな装飾を身に纏ったスカルキングが出現する。
そして呼び出されたスカルキングが杖を振るい、大量のスケルトンが現れると、次々とセブンに向けて頭をたれ始める。
「さーて皆の衆、僕に元気を分けてくれ~!まぁみんな死んでるんだけど!」
「なっ!?」
掲げられた旗に向けて、無数に生み出される骨達から金色の光が浮き上がり、旗の元へと集っていく。
その光景はかつて自身が使用したスキル通りの動きであり、ギークは信じられないと言いたげに狼狽える。
「召喚獣を使って再現だと……!?」
「そそ、頭いいでしょ?」
そのまま旗を地面に突き刺すと、代わりに自身よりも大きな鎌をセブンは取り出す。それはレイも所有している死神の鎌――【冥界誘ウ大鎌】であった。
「という訳で、僕は遊んでくるから。邪魔しないでね?」
「待――」
呼び止める声を無視し、セブンは大きく跳躍する。
大幅に増幅されたステータスは【邪神の因子】すらも置き去りにし、そのひと振りでバターのようにいとも簡単に切り裂いていく。
「ほらほら、早く倒さないともっと強くなっちゃうぜ!」
【死霊術師】による召喚は全てMPを消費して行われる。そのため攻撃する度に自動でMPを回復する【冥界誘ウ大鎌】は相性抜群であり、また生み出されたスケルトンが【英雄の旗印】によってセブンに還元されるという、最凶の循環が出来上がっていた。
「あはぁ!いいねぇ、楽しいねぇ!」
「何故アイツだけ……ッ!」
動きのキレはどんどん増し、自由自在に敵を蹂躙するセブンをギークは悔し気に睨みつける。
誰も聞いていないせいか素に戻ってそう吐き捨てると、真横に無防備に刺された【英雄の旗印】を一瞥し――。
「……無理をするな!下がれ!触れるんじゃないぞ!」
身を翻して仲間の元へと向かう。
誰も見ていない今であれば、取り返すことは赤子の手を捻るよりも容易だと理解しつつ、それでも彼のちっぽけなプライドがそれを許すことはなかった。
「状況は?」
「問題ありません、このままであれば逆に押し返せるかと」
「であるか。その調子で行け」
「はっ!」
悔しさを胸に仕舞いながらも、ギークは状況を確認する。
セブンも【WorkerS】の面々も流石トッププレイヤーと言うべきか、一撃どころか触れられることすらなく【邪神の因子】を圧倒する。
だが、それでも黒い波は収まることはなく、そうして10分が経とうという頃にセブンはうんざりしたように呟く。
「うーん、ダメだな。効いてないっぽい。そもそも倒せんのこれ?」
攻撃の最中、セブンは一撃必殺のスキルである【EXECUTION】を試していた。だが何度も、どれだけ早く攻撃を入れたところでその効果が発動することはなかった。
加えてHPゲージも減ることはあるものの、回復しているせいでほぼ常に満タンであり、セブンが無理ゲーだと疑い始めた時――そこへ遂に主役が登場する。
「お待たせしました!」
「遅――何だそのふざけた格好は!」
「あはははは!レイちゃん何それ!」
驚きのあまり怒鳴り声をあげるギークと腹を抱えて笑うセブンの視界の先には、ココノッツの操る狐の背に乗ったレイの姿。
――ただし、その顔にはじゃしんの目元を再現したアイマスクを装着して。
[TOPIC]
WEAPON【冥界誘ウ大鎌】
墓場の執行者が使用する大鎌。その刃は魂を、本質を、その精神を蝕む。
要求値:<腕力>200over,<技量>300over
変化値:<腕力>+80 <知性>+50
効果①:攻撃ヒット時敵MPの10%を自身のMPとして吸収
効果②:SKILL:【EXECUTION】
SKILL【EXECUTION】
墓場の執行者の流儀。それは刃を血で汚さないことだ。
効果①:敵のMPが0の場合、HPを0にする
消費MP:100
入手方法⇒【グリムリーパー】の撃破(100%)




