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4-41 その鳴き声に目を醒ますのは③


「ちょっと待て、なんで俺だけ呼び捨てなんだ?」


「人望の差ちゃうん?」


「自分の胸に手を当ててよーく考えてみたらいいんじゃない?」


「貴様にだけは言われたくないんだが!?」


 不服そうな態度を見せるギークを冷たくあしらう女性陣。どこか気の抜けたやり取りにレイの中で張り付めていた空気が緩んでいくのを感じる。


「レイさん、お待たせしました~」


「ギーク様、こちらでしたか!」


 そこに更なるプレイヤーが殺到する。よく見ると【じゃしん教】と【WorkerS】のメンバーであり、彼らを代表してスラミンと軍服の女性がそれぞれ声をかけた。


「スラミンさん!来てくれてありがとうございます!」


「いえいえ、クランリーダーの為ならたとえ火の中水の中ですよ~」


 のんびりと、それでいて確かな想いの籠った一言に合わせて、背後にいる他のプレイヤーも頷く。その姿を見て、レイは場違いながらも少しジーンとした。


「本当にありがとうございます。それにしても早かったですね?」


「あぁ、何やらあの人達がバタバタしてたので。その後ろをついてきただけなので特に理由はないんですよね~」


 そう言ってスラミンが指さしたのはギークと【WorkerS】の面々。その視線に気が付いたのか満面の笑みを浮かべながらセブンがレイに話しかけた。


「聞いてよレイちゃん、こいつレイちゃんの配信ストーカーしてるんだぜ?」


「おいっ!人聞きの悪いことを言うな!」


「いや、でも事実やろ?だからこんなに早く準備できたって言うてたやん」


「いやそれは情報を集めるために仕方なくっ!というかちゃんと説明しただろ!?」


 焦りからかロールプレイが崩れつつあるギークの言い訳を聞き、レイは困ったように笑いながら反応する。


「ちょっとキモいですけど、配信してる以上特にいうつもりは……。そのお陰で助かった部分もあるので」


「キモッ……いや、もういい」


 まだ不満がありそうなギークだったが、これ以上の問答は不毛だと判断すると、ぐっと感情を抑えて我慢する。


「それにしてもよく君達が協力する気になったね?」


「勘違いするな。我々はワールドクエストの情報を集め、そしてクリアしにきただけだ。誰の為でもない」


「うわっ、男のツンデレはキモいだけだよ?」


「黙れ。おい、あのデカブツについての情報をよこせ」


 セブンから発せられる煽りしかない言葉に、ギークは最低限で返しながらもその視線はぐじゅぐじゅと嫌な音を立てている【邪神の因子】を捉えていた。


「話すと長くなるから簡潔に。あれは【邪神の因子】、詳細は何も分からないけどどうやら進化の途中みたい」


「邪神かぁ、この子と関係あるのかな?」


「ぎゃう!?」


 とある単語を聞き、セブンはしゃがみこんでじゃしんの頬を人差し指で突っつく。ギークはそれを呆れた様子で一瞥して話を元に戻す。


「それで、我々は何をすればいいんだ?」


「……この子が最後に『【八咫鏡】を壊せ』って。そうすれば中にいる神獣を救えるみたい」


「鏡?」


 腕の中で眠る老烏を悲しそうに見つめるレイの説明を聞き、ギークは眉を顰める。


「見当たらない……ということは第2形態があるのか?とりあえず削ってみるとしよう」


 そのまま右手を顎に当て少し考えこんだ後、後ろにいた【WorkerS】のクランメンバーに目配せすると、7人の軍服を着たプレイヤーが横一直線に並ぶ。


「ギーク様、準備完了いたしました!」


「よし、始めろ」


 その言葉を聞いたギークが腕を振りあげると、ギークの背後に巨大な魔法陣が展開される。


 幾重にも張り巡らされた陣はグルグルと回転を始め、次第に金属がぶつかるような音を響かせ始めた。その速度と音はどんどんと増していき、限界まで高まった後にピタリと制止する。


「放て」


 そのタイミングでギークは腕を振り下ろす。そして――。


「なっ!?」


「ぎゃう!?」


 魔法陣から放たれた七色の光は【邪神の因子】に直撃し、轟音を響かせる。その余りの威力にレイとじゃしんは思わず目を見開いた。


「これが【七色の閃光(セブン・レイズ)】……」


「知ってるんですか?えっと……電電、さん?」


「あぁ、そうです。合ってますよ」


 いつの間にか隣にいた忍者の格好をした男――電電にレイが話しかけると、彼は嬉しそうに解説を続ける。


「あれは7人の【魔術師】が同じ力かつ違う属性をぶつけた時にのみ発動できる魔法です。タイミングもシビアですから相当難しいんですが、その分威力は馬鹿になりません」


「なるほど……」


 その説明を聞いて改めて前を見る。そこには渾身の一撃を受け、ジュクジュクと焼けるような音を立てる【邪神の因子】の姿があり、一部を吹き飛ばされた影響か、後退しているように映った。


「――ダメだな」


 だがしかし、【邪神の因子】を睨みつけたギークが声を漏らす。


 【邪神の因子】は攻撃を受けていない箇所を利用して、焼けている部分を飲み込むように体内に隠す。やがてその姿は完全に元通りとなり、一時は止まっていた動きも再開される。


「効いてない……というよりかは凄い勢いで回復してるっぽい?今の一撃でもダメとなると僕でも無理かな」


「う~ん、うちも厳しそうやわ」


 その光景を前にセブンとココノッツも打つ手がないようであった。


 どうしたものかと頭を悩ませていると、レイに苦言を呈する声が届く。


「ちょっとちょっとご主人!そりゃないでしょうよ!」


「イブル!?」


「何それ!知らないなぁ!」


 その声の主はレイの武器でもあるイブルだった。突如浮いて話し出した本を前に、セブンはおもちゃを見つけた子供の様に目を輝かせる。


「あんなじゃしん様のパチモンみたいな奴さっさと倒してくだせェ!」


「いや、パチモンはこっちだと思うけど……でも攻撃が効かないんだってどうしようも――」


「再生でしょう?そんなもの()()()()()()()()()()()じゃねェですか!」


「え?――あっ!」


 イブルの言葉にレイはひとつの可能性に辿り着くと、そこにいる全員を見渡す。


「一つ、試してみたいことがあります。時間稼いでもらっていいですか?」


「もちろん!次はどんな面白いこと見せてくれるんだい?」


「この前は助けられへんかったさかい、何でも言うて」


「時間が惜しい、早くしろ」


 言葉は違うものの、否定されることなく即答されたことにレイは驚きつつも安堵し、これから行うことを説明する。


「――ではそんな感じでいきましょう。よろしくお願いします」


 レイの言葉に頷き、各自行動を開始する。


 そして、神との戦いが幕を開けた。


[TOPIC]

JOB【魔術師】

魔の道を学び術として用いる力を得た者。世界はより鮮明となり、その深みに嵌っていく。

【魔法使い】系統/三次職

転職条件①:【魔法使い】Lv.30 及び 【魔導士】Lv.10

転職条件②:<知識> 500以上

※装備による加算は対象外

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― 新着の感想 ―
[一言] 超高速で回復するやつに対してその効果が無意味、ということは即死若しくは回復無効化が妥当だけどそんなのあったっけ?
2021/05/27 10:09 しおりすぐ無くす読書好き
[一言] お?なんだなんだ?
[気になる点] どうやって倒すんだろうか 黒弾ダメだったし… 死…神…死神? あッ!鎌か!多分 [一言] お疲れ様です これからも頑張ってください
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