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4-30 カウントダウン

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〇レイ@れいちゃんねる

 @0_channel

今日17時から、3日ぶりに配信します。


午前10:00 · 20XX年9月26日

407件の反応 9663件のイイネ!

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「ふ~ん、なるほどねぇ」


 時刻は17時を少し過ぎた頃、己以外誰もいない広い部屋の一室で、スマホを開いた青年がぽつりと呟く。


「意外とメンタルは強いんだな。そうこなくっちゃ」


 一見中学生と見間違うような背丈の青年――甲斐園(かいぞの)流星(りゅうせい)は一人嬉しそうに鼻歌を歌いながらToYチェアに座る。


「折角のおもちゃだ。簡単に壊れちゃ悲しいからな」


 ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべながらスマホをいじるその姿はまさに加害者側であり、リアル生活でもあながち間違ってはいなかった。


 一般よりも裕福な家庭に生まれ、親の意向に沿うように良い子を演じ、まさに文武両道の優等生である彼の人生には敗北らしい敗北は存在しない。


 身長が低いというコンプレックスはあるものの、それを理由に虐められたりもなく、むしろクラスの中心人物として順風満帆な学生生活を送っていた。


 何の不満もない、幸せな日々。だがしかし、それでは彼の心が満たされないままだったのもまた事実であり、そんな彼が刺激を追い求め、やがて辿り着いたのが()()()()()()()であった。


「じゃ、遊んでやるかぁ」


 今日も彼は仮面(ヘルメット)を被る。自身の快楽のため、他者を虐げるため、その心を自らの欲望に染め――……。


「ん……」


 そしてカイエンは目を覚ます。そこは現実と相違ないくらいの大きな一部屋であり、一面畳張りの中にぽつんとある敷布団から体を起こすと腕を後ろに回し軽くストレッチをする。


「おっ、カイエンさんちーっす」


「重役出勤すね」


「あ?そんな遅くなってねぇだろ」


 襖が開く音とともに登場したのは金髪と銀髪の男達だった。アバターのお陰か美男子に仕上がってはいるが、どこか軽薄そうな雰囲気が見え隠れする二人はカイエンに対して軽口を叩く。


「んで?当然やるんすよね?」


「当たり前だろ、自分からやってきてくれたんだからなァ。またもてなしてやんないと失礼ってもんだろ」


「ははっ、カイエンさんわっるー!」


 その近い距離間にカイエンも笑顔を見せるが、それは決して仲間意識からくるものではなかった。


 確かに彼らとは初期からの長い付き合いではあったが、その頭の悪さや己に宿る選民思想から、カイエンは彼らの事を見下しており、現実にも存在するような有象無象としか認識していない。


「あれ、スカルは?」


「え?そういや今日見てないっすね」


 ただし、スカルと言う男は別だった。


 カイエンがPKで名を馳せ始めた頃に声をかけてきたスカルは今まで会ってきた誰よりも頭の切れる男であり、カイエンの思考を唯一理解できている男だった。


 カイエンがこの【DA・RU・MA】と言うクランを立ち上げたのも、さらに強くなれたのもすべてはスカルを傍に置いていたからであり、そういう意味では唯一友人と呼べる存在であると言えた。


「……そうか。まぁいい、とりあえず【スティール】もってる奴等を全員集めろ。今度はアイテムごと根こそぎ奪うぞ」


「了解っす」


「いやぁ、楽しみだなぁ」


 そんな彼の姿が見えないことに一瞬だけ眉をひそめたものの、気を取り直して取り巻き達に声をかけるカイエン。そこに赤い法被を着た3人組がなだれ込んでくる。


「す、すいません!やられました!」


「やられただと?何に?」


 慌てた様子で話す男たちは、見張り役としてレイの傍に置いていた男達であった。足がつかないよう、リスポーン地点は変更させていた筈なのだが、何故かここにいるのを見てカイエンは嫌な予感がした。


「は、はい。前みたいに奴を待ち伏せしていたら急に【WorkerS】の奴等に襲われまして!」


「……それで?」


「そ、それでこんなものつけられて。もしかしたらここもばれたかも――」


 その言葉を言い切る前に、感情に任せて蹴り飛ばす。大きく仰け反り倒れ込んだ男を睨みつけ、カイエンは周りに聞こえるように大きく舌打ちをした。


「チッ、使えねぇ。というかそこに泣きついたのか」


「あーあ、しょうもねぇ」


「結局逃げんのか~、おもんな」


 三者三様にそれぞれ悪態をつきつつも、次にやるべきことを分かっているのかすぐさま行動に移し始める3人。


「予定変更だ。さっさとここから離れるぞ。あんなのと当たったって時間の無駄だ」


「うい~っす」


「はぁ~あ、萎えるわぁ」


 流石にトップクランと事を構えるのは得策ではないと判断したのか、カイエンは拠点を捨てて逃げ出そうとする――が、そうは問屋が卸さない。


「あ、あのすいません」


「あぁ?今度は何だよ」


 それを遮るようにおずおずと部屋に入って来たプレイヤーがカイエンを呼び止める。それにイラつきながらも視線を向けたカイエンの目に飛び込んできたのは。


「入り口にこんな奴が……」


「ぎゃう~」


「テメェ、この前の」


 そこにいたのは黒い犬のような顔をした二足歩行のモンスターだった。カイエンは記憶を辿り、すぐさまそれがレイの召喚獣であることに行きつく。


「何しに来たんだ?」


「もしかしてこっちに寝返りに来たのか?」


「マジ?だったら見どころあるなぁお前!」


「ぎゃ、ぎゃう~」


 取り巻き達が近づき、バシバシと頭を叩く。それに対していじめられっ子のように困惑している姿を見て、カイエンは意図が分からず首を傾げた。


「寝返る……?何のために……?」


「ってかやっぱ場所ばれてね?」


「あ、偵察ってことか!?テメェやっぱ敵かよ!」


「ぎゃ、ぎゃう~!」


 疑われたことで、ぶんぶんと首を振るじゃしん。偵察と言う言葉に納得は出来るものの、しっくりこないカイエンは他の理由を探す。


 ―—その時、不思議な音が鳴る。


 『3』カチッ


「ん?」


「どした?」


 気付いたのは取り巻きのうちの一人。初めは気のせいかと考えた彼も、再び鳴ったそれを聞いて首を傾げる。


 『2』カチッ


「やっぱ聞こえる……何だ、この音?」


「こいつから聞こえるな」


 時計の針が進むような音に耳を澄ますと、それはじゃしんからから響いているようだった。


 その光景に何処か見覚えがあったカイエンは悩み、そして()()()()()がフラッシュバックした。


 『1』カチッ


「まさか……おい!そいつから離れ――」


「「え?」」


 その音の意味に気づいたカイエンが声をかけるも時既に遅く、じゃしんが光に包まれる。それに巻き込まれるように取り巻きの男達が爆炎に囚われ、爆音と共に黒煙が辺りに立ち込める。


「ぎゃう~」


「コイツ……!」


 やがて煙が晴れると、動く爆弾(じゃしん)が『いやぁ申し訳ない』と言わんばかりに頭を掻いており、カイエンはそれを親の仇のように睨みつける。


 『3』カチッ


「嘘だろっ!?」


 だがこれで終わりではない。今、決して止めることの出来ない神の裁きが不届き者へと牙を剥く。


[TOPIC]

SKILL【スティール】

盗賊にとって基礎中の基礎の技。悪かどうかは使い手次第だが、間違いなく手癖は悪い。

CT:60sec

効果①:対象のアイテム、および素材をランダムに一つ入手

※適正箇所に触れれなければ失敗

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― 新着の感想 ―
[一言] 破壊不可のリモコン(AI)爆弾とか最悪すぎる
[一言] 自爆する恐怖<<<<<<<甘味の魅力だったか…
[一言] じゃしんww
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