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4-23 襲撃、赤い達磨


「テメェがレイだな?」


「いやぁ、多分人違いですよ」


「面白いこと言うじゃねぇか。やっぱ人気配信者は違うねぇ」


 ギャハハと目の前で大笑いする三人の男達にレイは舌打ちをする。何とか煙に巻こうとしたものの、話しぶりから察するに最初から顔は割れてるようだった。


・まーた面倒なのが絡んできたな

・うざ過ぎるだろ

・コイツ等あれじゃね?PKクランの…


「PK?――あぁ、ギークとココノッツが追ってるとかいうアレの事?」


 視聴者からの指摘にレイは記憶を辿ると、彼らの着ている赤い法被がネットにあった情報と一致しており、以前出会った二人が追っているというクラン【DA・RU・MA】のメンバーであると気が付く。


「へぇ、知られてんのか。光栄だな」


「まぁ有名だしね。で?なんか用?見て貰ったら分かると思うんだけど喧嘩する気分じゃないんだよね」


 常に馬鹿にするような態度をとる相手にレイは不快感を隠さずに言葉を吐き捨てる。その邪険に扱われた様子に対し、男達は怒る様子もなくニヤニヤと不快な笑みを強めた。


「なぁに、俺達も戦いにきたわけじゃねぇんだわ。こう見えて平和主義なんでなぁ」


「……あっそ」


「あぁ、こっちの要求はただ一つ。テメェの持ってるアイテム全部とワールドクエストに関する情報を全部寄越せ」


・はぁ?

・何だこいつ?

・きっも


 一方的な要求にコメント欄は荒れ、レイも軽蔑するように目を細める。


「それは素敵な提案だね。んで?もし断ったら?」


「そん時はしょうがねぇ。話したくなるまで遊んでやるよ」


「遊ぶねぇ……具体的には?」


 心底呆れたようにレイが問いかけると、笑顔だった男達は急に眼を鋭くし、声を低くして返す。


「テメェが嫌になるまで粘着する。もちろんクラン総出でな。二度とこのゲームを楽しめると思うなよ?」


・達磨軍団最強!達磨軍団最強!達磨軍団最強!

・達磨軍団最強!達磨軍団最強!達磨軍団最強!

・なんか沸いたんだが

・達磨軍団最強!達磨軍団最強!達磨軍団最強!

・配信荒らしまですんのかよ死ねや

・※このコメントは削除されました※


 男達の言葉と共にレイの配信に意味不明な単語の羅列が大量に流れだす。しかも一人や二人ではなく、有志がブロックしたとしても次から次へと現れており、完全にいたちごっこになってしまっているようだった。


「で、どうする?今ならすぐにやめてやるぞ?」


 再びニヤニヤと笑いだした男達にレイは少しの間目を瞑る。数秒後開いた眼には目の前の存在を完全に敵とみなした冷たい眼差しをしていた。


「調子に乗りすぎでしょ。こんなんで素直に言うこと聞くと思ってんの?」


「おーこわ。そんなに怒んなって」


 臨戦態勢に入ったレイが立ち上がりながら銃を引き抜くと、男達も各々獲物を構える。その中でずっと喋っていた中央の男の杖が赤く光り始めた。


「勿論、テメェが強いってのは知ってるからよ。正面から戦うには3人だと分が悪いよなぁ?」


「? 何言って――」


「だからよ、人質を用意したんだわ」


 唐突に語り始めた男にレイは怪訝そうに眉を顰めるも、返答の代わりに火球が放たれる。なんてことはない一撃にレイは不思議に思いながらも躱そうとして――。


「いいのか?避けたら()()()()()に当たるぞ」


「ッ!?」


 ともに放たれた言葉にレイが後ろを振り向くと、団子が乗ったお盆を手に身を硬直させているコマの姿が目に入り、咄嗟に隣にいたじゃしんを射線上に割り込ませた。


「ぎゃう!?」


「ヒュー!格好いいじゃねぇか!NPCごときに体張るなんてなぁ!」


・コイツ!

・ふざけんなよ!

・達磨軍団最強!達磨軍団最強!達磨軍団最強!


 着弾と共にゴウゥ!と炎が上がり、火だるまになったじゃしんの口から短い悲鳴が漏れる。ごろごろと地面を転がる様子を見て男達は楽しそうに笑うと、舌なめずりをした。


「さて、次は3人がかりで――」


「【じゃしん結界】!」


「ぎゃう~!!!」


 男達が動き出す前にレイは手を打つ。じゃしんにスキルの発動を指示すると、じゃしんは両手を掲げ、辺り一面が漆黒の4人と1匹だけの空間に切り替わる。


「ここは――」


「ぐぇ!?」


 一瞬意識を取られた男達を見逃さずにレイは距離を詰める。そのまま右側にいた槍を持った男の顔面に拳銃を叩きつけると、弾倉が空になるまでトリガーを引く。


「このッ!?」


「チィッ!」


 懐に潜りこまれ、一瞬で一人持っていかれた男達は戸惑いながらも迎撃を試みる。反対側にいた剣を持った男が切りかかり、杖を持った男が距離を取りスキルを発動しようと試みる――が、本気のレイには届かない。


 振り下ろされる剣の背を踏みつけることで前につんのめった男の顔面に蹴りを入れると、遠く離れた杖の男に弾丸を放つ。その一撃は寸分の狂いもなく脳天に直撃し、スキルを放つことすら許さずにポリゴンへと変えた。


「ば、バケモンかよ……」


「言いたい事はそれで終わり?」


 一人残された剣の男が震えながら呟くも、レイは感情を押し殺した声で銃を突きつける。


「はっ、だがこれで終わりじゃねぇ。いつまで耐えれるか見物――」


 その言葉を最後まで聞くことなく、レイはリロードを済ませた銃の引き金を絞る。ドン!ドン!と重低音を響かせながら放たれた弾丸は、尻餅をついた男の脳天に吸い込まれるように突き刺さり、そのHPを刈りとる。それと共に視界が晴れ、暗闇の空間から國喜屋の前へと戻る。


・さすが

・達磨軍団最強!達磨軍団最強!達磨軍団最強!

・これからどうする?

・鬱陶しいな、やめろや!

・※このコメントは削除されました※


「ごめん、皆には迷惑かけるけどちょっとの間我慢してね。次は――」


 やりたい放題のコメント欄にレイが顔を歪ませつつ謝罪する。そして残っているマトモなコメントに言葉を返そうとして、遠くから怒号と喧騒、そして赤い法被を着た男達が走ってくるのが目に映る。


「……取り敢えずここから離れよう。フィールドならだれにも迷惑にならないと思うしね」


 そうしてレイは奴らが見えた道と逆の方向へ走り出す。その表情は多大な怒りと少しの疲労が入り混じっており、普段の笑顔は消え失せてしまっていた。


[TOPIC]

SKILL【火魔法:ファイアボール】

炎属性の初級魔法。真紅の魔術師へと至る第一歩である。

CT:-

消費MP:20

効果①:前方に炎属性の攻撃(知識*10/dmg)

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― 新着の感想 ―
[一言] 下には下が居るものだなあ。 前の話になるけと夏目がやろうとした変革は良くあるMMO化でしかないし、プレイヤーに新しいコンセプトやセールスポイントを打ち出せなかった時点で実力不足だったとしか…
[一言] そんな派手な祭り始めたらセブンさんがどっかから湧いてきそうだ…
[一言] うん?これ、ワールドクエストについての情報だよな?、つまり『ダンジョン』や『ダンジョンに出てくる敵』に関しては求められてないんだよな?これ、試練での敵をランダム呼ばわりして行かせれば勝手にダ…
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