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1-7 初見は様子見だから

え?日刊3位…?( ゜д゜) ポカーン・・・

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゜д゜) ・・・!?


 【ビッグフット】。


 【スーゼ草原】に登場するエリアボスモンスターであるそのモンスターは、【ステップラビット】をそのまま巨大化させたような体躯をしていた。


 中でも特に目立つのはその異常なまでに発達した両脚だろうか。丸太のように太くなったその脚から繰り出される蹴りの威力は到底馬鹿にできるものではなく、最前線のトッププレイヤーでもまともに受けきれるものはほんの一握りだろう。


「ガァ!」


「はっや!?」


 クラウチングスタートのように前かがみになった【ビッグフット】は思い切り地面を蹴り上げると、レイに向かって全速力で突っ込んでくる。


 十数メートルあった距離は一瞬で潰され、目の前に迫った【ビッグフット】を、左に飛びのくことでギリギリで躱す。


 通り過ぎた【ビッグフット】は着地した瞬間に体をひねって無理やり反転すると、息つく暇もなくレイに肉薄しその腕を振り下ろした。


「ちょっ、容赦なさすぎないっ!?」

 

・よく避けられるな

・本当に敏捷初期値なのコレ?

・もう人間やめてるだろ


 あまりに散々なコメントがちらりと目に入ったが、今のレイに反応している余裕はなかった。今のところなんとか紙一重で躱しているが、だんだんと形勢は【ビッグフット】へと傾いていく。


・あ

・危ない!

・レイちゃーーーん!


 そしてついに、【ビッグフット】の突き出した腕がレイに当たろうとした――まさにその時。


「じゃしんガード!」


「ぎゃううううう!?!?!?」


 レイは腰にぶら下がっていたじゃしんを掴むと自身と【ビッグフット】の腕の間に滑り込ませる。


 その衝撃で数メートルほど吹き飛ばされるが、攻撃はじゃしんが受けた判定になったのかレイにダメージはなかった。


「ふぅ、危なかった。ナイスメイン盾」


「ぎゃう!?ぎゃぎゃう!?」


 いい笑顔でねぎらうレイに対して、お前正気かと言わんばかりにじゃしんは詰め寄った。


・まぁまぁ鬼畜で草

・召喚獣そんな使い方する奴おる?w

・信仰とは…

・まぁじゃしんくんが呼び寄せたんだから残当だな

・え、どういうこと?


「ぎゃう…」


「いや、私も戦闘扱いになってたなんて気付かなかったからお互い様だよ」


 コメント欄に書いてあることを理解したのか反省するようにうなだれるじゃしんに対し、レイは慰めるようにその頭を撫でる。


 エリアボスのエンカウント方法は大きく3種類に分かれる。


 一つ、一定の場所で常に待ち構えている『固定エンカウント』。


 二つ、その他モンスターと同じように戦闘エリアを徘徊する『ランダムエンカウント』。


 そして三つ、特定の条件を満たすことで出現する『条件エンカウント』。


 【ビッグフット】はこれに該当するエリアボスであり、その条件は『同一個体の【ステップラビット】と30分以上戦闘を行う事』と判明している。


 そういう意味で、今回出現したのはどんな名目であれ、じゃしんが【ステップラビット】と戦ってしまっていたことが原因となっているだろうとレイと視聴者の一部は考えていた。


「ま、気にしても仕方ないって。それにこのままやられっぱなしってのも面白くないしね」


「グルァ!」


「フッ!」


 先ほどと同じようにクラウチングスタートの姿勢をとった【ビッグフット】が突っ込んでくる。


 それをレイは先ほどのように横へ躱さずに斜め前に進むと、すれ違う形で体を滑り込ませて持っていた杖を顔面に叩きこんだ。


「グルァ!?」


 突然の痛みに【ビッグフット】は鼻っ柱を押さえて突っ伏し、何が起こったのか理解していないのか困惑した表情をする。


・当てた!?

・今のやっば…

・俺には無理だな

・でも全然ダメージ入ってなくね?


 驚きのコメントが多く上がる中、その微々たるダメージ量に心配するコメントを見つけてレイは不敵な笑みを浮かべる。


「何言ってるのさ。減っているってことはいつかは倒せる(・・・・・・)って意味だよ?」


「グルル……!!」


 起き上がった【ビッグフット】が再び突撃の姿勢をとり、それに対してレイはその顔を獰猛な笑みに変えて、ぺろりと唇をなめた。


 ◇◆◇◆◇◆


「グガァァァァァ!!!!!」


「お、第2形態かな?」


・え、早くね?

・初めて見るわ

・こっからが本番みたいなとこあるよな

・俺からしたら今までも本番なんよ


 HPバーが3割ほど削られた後、【ビッグフット】は一度距離を開けて一際大きく咆哮する。


 上体を起こしたかと思うと、両手を前に構えファイティングポーズの姿勢をとり、右脚を膝の位置まで上げてトーン、トーンとジャンプを始めた。


「うーん、かっこいいね」


・分かる

・でた、ムエタイモード

・なんかめっちゃ強そう


 一定のリズムで飛び続ける【ビッグフット】を警戒を切らさずに睨みつけるレイ。


 不気味なほどの静寂が場を支配する中、突如として【ビッグフット】がレイの視界から消えた(・・・)


「ッ!?」


 危険を察知したレイが全力でのけぞると、【ビッグフット】の脚が髪を掠める。


 左脚を軸に右脚のみで無数の蹴りを繰り出す【ビッグフット】に対して、ある程度予測を駆使しながらなんとかレイは躱していた。


「なんでっ、さっきよりっ!速いの、さっ!」


 そう言いながらもカウンターの形で杖をうまく当てており、少しずつでも着実に【ビッグフット】の体力を削っていく。


・いけるか!?

・え、こいつソロ討伐できんの!?

・今んとこセブンくらいしか聞いたことない

・レベル1クリアなんて前代未聞だぞ!


 しっかりと読めていないがコメントが過熱しているのが分かる。レイ自身もイケると確信して――そこで緩みが生まれた。


「なっ!?」


 【ビッグフット】が右脚を強く踏み込んで震脚を行うと、文字通り地面が揺れる(・・・・・・)


 思いがけない行動に対応が一瞬遅れたレイはその揺れの影響を強く受けてしまい、その場で硬直して動けなくなってしまった。


 その隙を見逃すはずもなく、【ビッグフット】は震脚をした反動を利用して更に上方向に飛び上がると、空中でかかと落としの体勢をとった。


「クッソ……!」


 動けないレイにそれを避ける方法はなく、あっけなく視界が真っ暗になった。


 ◇◆◇◆◇◆


「まじかぁ~……悔しいなぁ……油断しなきゃよけられたと思うんだよなぁ……」


「ぎゃう~」


 レイたちはデスしたことでいつもの寂れた宿屋に来ていた。隣ではじゃしんが『よく頑張ったよ』と励ますようにレイの肩に手を置いている。


・ナイスファイ!

・惜しかった!

・レベル1でそこまで戦えるなんてすごい!

・惚れ直したよ!


「このまま負けっぱなしで終わるのも……う~ん……」


 コメントには多くの励ましのコメントが流れていたが、レイはそれに一瞥もくれる様子はない。


 むしろ一人でぶつぶつと呟くレイの姿に視聴者は不穏な空気を感じた。


「うん、やっぱり倒そう。ごめん、ちょっと集中したいからコメント見れないかも」


・あ

・この流れは…

・ガチモードキター!!!

・まーた耐久ですかねぇ…


 何かを決意した彼女はそう言うと配信ウィンドウを非表示にする。


 コメント欄には察したようなコメントが溢れたが、自分の世界に入り込んだ彼女に届くことはなかった。


[TOPIC]

MONSTER【ビッグフット】

誇り高き武人は仲間を思い、強者を求める


獣種/跳兎系統。固有スキル【ステップ】。

≪進化経路≫

<★>ステップラビット

<★★>テンプシーラビット

<★★★>ヘビー級ラビット

<★★★★>ラビットマスク

<★★★★★>ビッグフット

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[一言] もはやお家芸
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