4-21 敵を知るにはまず歴史から
「八咫鏡ねぇ」
・三種の神器か、またベタな
・って事は天叢雲剣と八尺瓊勾玉もある感じかな
・どう関係あるんだろう
「可能性は高いけど……まぁいいや説明してもらっていい?」
あまりにも有名な言葉にレイは視聴者と考察を交わしながらも、老烏に向けて続きを促す。
『あぁ。あれは1000年ほど前のことで――』
「あ、なるべく短くしてもらう感じで」
早々に話の腰を折られた老烏はじと目を向けたが、レイはどこ吹く風と言った様子ですまし顔をする。
『……大昔にも、似たようなことがあったのだ。今と同じように世界を滅ぼさんとする意志が動き出したことがな』
「世界を滅ぼす――ってのはハクシ教で間違いないとして……聖獣達がそれを阻止した感じ?」
『大筋は間違っておらん。だがその前に聖獣の生い立ちは知っているか?』
「うん?えっと、なんかゴウグが言っていたような言ってなかったような……」
その問いかけに記憶を引っ張り出そうとするレイだったが中々ヒットするものはなく、見かねた老烏が説明を再開する。
『我々は邪神からこの世界を守るために世界樹より生まれたのだ。聞いておらんか?』
「邪神……聞いてないね。それってさ私の連れとは別の存在ってことでいいの?」
『連れ?あの毛むくじゃらが邪神?何の冗談だ?』
・草
・草
・毛むくじゃらwww
念のため確認を取った言葉に、老烏は心底不思議そうな顔で返す。遠くで相棒のくしゃみする声が聞こえたような気がしたが、レイはそれを無視して続きを尋ねた。
「ごめん、忘れて。えっとそれじゃあ1000年前に邪神が世界を滅ぼそうとして、それを聖獣達が防いだ――っていうストーリー?」
『うむ、その認識であっておる。世界樹から生まれ出た我々十二の聖獣達は各地へと散らばり、それぞれの使命を果たすために侵攻する邪神の軍勢と戦ったのだ』
「使命?」
『そうだ。例えばお主の知るゴウグは根源たる世界樹の護衛。他にも聖域を張ることで安全地帯を作る者、歴史を未来に語り継ぐ役割を負った者もいたな』
・なるほどね
・それぞれ役割があったってことか
・はぇ~
初めて知る情報にコメント欄では考察が増していく――が、レイは少し不安を感じて押し黙る。
『そんな中、我々の使命は共に戦う仲間を見つけ導くことであった。そうして見つけたのがアカツキという男。知っているかもしれんがあの城の初代当主の事だ』
・ほーん
・そんな設定があったんか
・これさ、いろいろすっ飛ばしてね?
「そんな気がする……。これこのまま進めて大丈夫か……?」
その理由は出てくる情報に何一つぴんと来ていなかったからだった。レイは全くついていけてない状態に、どうしようかと腕を組み唸り始めるも、最後は面倒臭くなったのか半ば諦めの気持ちで思考を放棄する。
「まぁいいや、詰まってから考えよっと。それで三種の神器ってのは?」
『三種の神器は邪神との決戦の際に使用されたアイテムのことを指している。それぞれ【天叢雲剣】、【八尺瓊勾玉】、【八咫鏡】という名だ』
・やっぱりか
・まぁそうよね
・ってか邪神ってまた別の存在なんだよね?混乱してきた
予想出来た3つの単語に納得のコメントが流れる中、レイはちらりと一瞥しながら言葉を挟むことなく相槌を打つ。
『【天叢雲剣】を用いてアカツキが邪神をうち倒し、【八尺瓊勾玉】でその身を封印した。そして【八咫鏡】を通してコウテイ様の力を注ぎこみ、汚染されたこの地を浄化する――。これが1000年前の出来事の真実であり、『三種の神器』と呼ばれる所以になっている』
「なるほど……って事は3つとも取って来いって話?」
『それなのだが……』
レイの疑問に言葉を濁した老烏は深刻そうに苦い声をだす。
『あくまでも儂の推測であるが、両方とも敵の手に渡っている可能性が高い』
「……マジ?」
『うむ。山頂の祠にあった【天叢雲剣】がなくなっておるのだ。【八尺瓊勾玉】も溶岩に沈めた筈で、到底とれるはずがないのだが……最近不穏な気配が日に日に強まっている気がしてな』
・まさか邪神復活してる?
・なるほど、ハクシ教の狙いはそれか
・盛大なフラグ…
・じゃあ八咫鏡も危うくない?
老烏の言葉に先の展開が予想できそうなレイは厄介だなと少し考え込み、コメントで見つけた疑問をそのまま老烏に問いかける。
「確かに、八咫鏡は大丈夫なの?」
『それはない。確認したからな』
「確認した――ってことは自分で取ってくればいいんじゃない?」
『それが出来ないからお主に頼んでおるのだ』
「まぁ、ですよね~」
ご都合主義的な内容にレイは肩をすくめる。
『とにかく、時間はそこまで残されていないかもしれん。八咫鏡に込められた聖獣の力が敵に渡るのを阻止した上でコウテイ様の力を取り戻すためにも、協力してくれんか』
「そういうことなら任せてよ。場所は教えてくれるんだよね?」
『勿論。そうだ、先にこれを』
頷いたレイに感謝するように頭を下げた老烏がバサバサと翼を振ると、違う部屋から別の烏がやってくる。そのままレイの前で止まると口で咥えていた石の様なものをレイに手渡した。
「これは?」
『【火口の転移石】だ。これを使えば洞窟の入口とここを自由に行き来できる』
・便利アイテムやん
・場所限定のポータルストーンみたいなものか
・道中ショトカアイテムは神
「へ~ありがと。これで楽になるね」
全体的に黒く透明なガラスのような石に、中には赤い炎が揺らめいているそれを様々な角度で眺めたレイはお礼を言いながらアイテムポーチへとしまう。
「話は終わりでいいんだよね?じゃあもう行っていい?」
『うむ?まぁ……ではさっそく――』
そのまま話は終わっただろと言わんばかりに切り上げようとするレイに、老烏は少し不信がりながらも激励の言葉を贈ろうとして――。
『ではレイよ!気を付け――』
「宝探し再開だぁ!」
『あれぇ!?』
・草
・ヒャッハー!
・当たり前だよなぁ!?
・すごい声が出たなwww
残念ながらその言葉は当の本人に響かず――というよりそもそも最後まで言い切る事すらできずに、レイはアイテムの精査作業に没頭していく。
『い、いや……ま、まぁ好きにやってくれて構わんが……出来るだけ急いでほしいぞ……』
張り上げた声の出し所を失った老烏は困ったようにひとり呟く。だが当然夢中になった彼女の耳に届くはずもなく、結局レイが満足するのに3時間要したのだった。
[TOPIC]
ITEM【火口の転移石】
コウテイの棲む場所へと続く魔力の籠った石。特定の場所でのみしか使えない。
効果①:特定区間を転移する
 




