表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/399

4-5 目覚めと決意



「んぎゃ……?」


「で、一回アイテムの確認を――っと、おはよう、ようやく目を覚ました?」


 現実で1時間程だろうか、暫くの間話し込んでいたレイの元に布団から起き上がったじゃしんが枕を引きずりながらやってくる。


 それに対して挨拶を返すと、未だに眠そうな眼を擦りながらも、まるでそこが居場所だと言わんばかりにレイの足の上に陣取った。


「え、なんで?まぁいいけど」


「ぎゃう~…」


・まだ寝ぼけてんのか

・可愛いからヨシ!

・それより話の続きをだな


「あぁ、そうだね」


 膝の上でぽけぽけしているじゃしんの頭を撫でつつ、視聴者のコメントに反応するレイ。そのままウィンドウのアイテム欄を選択すると、所有しているアイテムを1つずつ取り出していく。


「ええっと、【ポーション】10個、【ハイポーション】5個、【MPポーション】が5個に【毒薬】痺れ薬が少々――まぁ悪くないラインナップだね」


・意外と潤沢だね

・ってかなんでそんなにあるの?

・ヒント→闇商人

・あっ


「まぁまぁ、ちゃんとお金は払ってるから。後はワールドクエストで手に入れた奴かな」


 そう言いつつカラフルな液体の入った丸い瓶を脇に寄せると、レイはそれ以外のアイテムに目を向ける。


「【月の石】は使える、【DDD-448】は怖いから封印する、【スライムの魂】と【ハクシの教典】はそのうち使うかもしれない――」


 ぽつぽつと呟きながらどんどんと整理していくレイだったが、動物を形どった銀色のエンブレムを見ると、その手を止めて視聴者に話しかける。


「そういえばこの紋章シリーズってさ、やっぱり干支確定なのかな?」


・じゃない?

・名前からそうだしね

・掲示板でもその説が有力だよ


「やっぱりか。じゃあ後9つ集めない限りは効果が分かんないのかな?街の数も12だしこりゃ確定臭いか……?」


 現在ある情報で軽く考察するレイ。ただ、当然確証なんてものは得ることが出来ないため、早々に切り上げて話題を変えた。


「まいっか。とりあえず今は聖獣召喚用アイテムってことだけ分かっとけば」


・簡易召喚だっけ?

・いいなぁ、羨ましい

・見てみたい


「まぁそのうちね。後は新しいアイテムの確認っと」


ITEM【世界樹の実】

世界に1つしか存在しない樹から取れる果実。それは凝縮された力の象徴であり、食べた者へと進化を与えん

効果①:レベルを1上昇

効果②:HPとMPを全回複

効果③:HP及びMPリジェネ効果付与(1/1sec)


ITEM【創造の種】

無色透明の透き通る種。それは何色にでも染まり、無限の可能性を秘めている。

効果①:アイテムと合成可能(合成したアイテムは消費される)

※一部アイテムには適用不可

効果②:合成したアイテムと同等の効果の実を作成


・創造の種おもろいな

・色々考えられそう

・世界樹の実は単純に強いね


「ね、ただ滅茶苦茶使いどころ難しくない?」


 その2つのアイテムに目を通したレイは視聴者と同様に好意的な感想をもつ。ただ、あまりにも有用すぎるせいか、扱いに困るのもまた事実であった。


「う~ん、種はあとで考えるとして、世界樹の実は保険で持っておこうかな。あとは余ってる【SKILLチケット】と【祝福のクラッカー】の使い時だけど……」


 そうして2つのアイテムの分別を終えたレイは最後に残ったアイテムを見つめながら腕を組んで唸る。


・これも使いどころ困る系の奴ね

・前に次、レベル上がったらって言ってなかった?

・欲しいスキルあるの?


「しいて言うなら【ダッシュ】、かな。でもどうしてもって訳じゃないからこれは後回しにするとして――」


 そこまで言って言葉を区切ったレイは考え込むように俯く。そこから30秒ほどを使ってたっぷり考えると、意を決したように顔を上げる。


「実はもう一個考えてることがあってさ。サブ職業の方を【神官】にしようと思うんだ」


・ほう

・その心は?

・死霊術師はもういいの?


「うん、未練がないと言ったら嘘になるんだけどね。でも【召喚の石板】もないし、いつまでも意地張るのは違うかなって」


 レイは落ち着かせるようにゆっくりと息を吐きながら言葉を紡ぐ。だがその表情は諦めの表情ではなく、前を見据えた迷いを断ち切った清々しい表情であった。


「だから、伸びに伸びてる信仰の値と一番相性のいい【神官】を選ぼうと思ってる。これなら火力不足も補えそうなスキルがちらほらあるし……どうかな?」


・めっちゃいいと思う

・了解。応援しますよ~

・レイちゃんの好きにやったらいいよ


 だがそれでも不安が残る彼女はおずおずと一番の理解者(視聴者)達に確認を取る。そして彼らからお墨付きを得たことで、ようやくほっとしたように笑顔に戻った。


「そっか、ありがとね。それと死霊術師になるのを待っててくれた人はごめんなさい」


・全然いい

・むしろゾンビとか骨が嫌いだからちょっと助かる

・分かる。このまま可愛いで行ってほしい


 謝罪の言葉を口にするレイに、それを紛らわすようにおどける視聴者の声。そのやり取りに嬉しくなったレイは声を張り上げて明るく振舞う。


「じゃあ、そういうことで!この後職業変えて、レベルが追い付いたら使おうと思います!」


・おけ

・またレベル上げが捗るな

・更なる力を手に入れるのか…


 そう宣言したレイは満足げに笑顔を向けると、ワイワイとコメント欄の勢いが過熱する。それを眺めていると、懐にいるじゃしんが短く一鳴きした。


「ぎゃう!」


「ん、どうしたの――って何それ?」


 その手に握られていたのは何の変哲もなさそうな木の棒だった。長さ20cm程の小さなもので、先端近くが枝分かれしており、分かれた先には黄緑色の葉っぱが一枚くっついている。


「ええっと……あぁ、これが【世界樹の杖】か」


 一瞬戸惑ったレイだったが、その木の枝を注視すると詳細情報が出現し、それも戦利品の一つであることを理解した。


WEAPON【世界樹の杖】

原初の樹のその末端を杖にしたもの。生命の根源とも呼べる力に全ての植物は傅くだろう。

上昇値:-

要求値:<知性>500 <技量>500 <信仰>500

効果①:環境によって異なる効果を得る

効果②:立ち止まることでHP及びMP回復(5/1sec)

効果③:SKILL【声無き者のタクト】


SKILL【声無き者のタクト】

その指揮は彼らの心を掴み、彼らの代わりに意思を伝える声となる。

CT:300sec

効果①:敵対している植物系統のMOBを非アクティブ化

効果②:非アクティブ化状態の植物系統のMOBを操作可能


「へぇ、面白いスキルだね、要求値とんでもないけど」


・植物特攻ってやつか

・どっかで使えそう

・ヘティス大森林に確か植物系のモンスターがいた筈


「ぎゃうぎゃう!」


「ちょっと危ないな!」


 視聴者の言葉にレイが頷いていると、手に持った木の棒をじゃしんが嬉しそうに振り回す。それに対して注意しながら右手を差し出す。


「はい、もういいでしょ返して」


「ぎゃう」


 そうレイが告げると、じゃしんは後生大事そうに【世界樹の杖】を抱きかかえ、フルフルと首を振る。


「……!」


「ぎゃ、ぎゃう…!」


・何やってるんだw

・謎の戦いが始まってるw

・これが聖戦……ッ!


 その様子を見てレイが無理やり奪おうとしたものの、じゃしんは小さい体に全力で力を込めてそれを阻む。その頑なな態度に先に折れたのはレイだった。


「……ま、いっか。減るもんじゃないし。その代わりなくさないでね?」


「ぎゃう!」


 突然力を抜いて手を離すと、じゃしんが勢いよくこてんと倒れる。その様子に呆れながらも声をかけると一際元気な返事が返ってきた。


「よし、じゃそろそろ出かけよっか。団子食べに行こ」


「ぎゃう~!」


 レイが立ち上がりながらニッと笑うと、じゃしんは大喜びで宙に浮く。そのまま扉を開くと、がやがやと喧騒が渦巻く町へと向かっていった。


SKILL【ダッシュ】

前方へと勢いよく飛び出す。探索者の基礎中の基礎ともいえる技

CT:10sec

効果①:前方に一定距離移動

※敏捷は考慮しない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >ITEM【創造の種】 例えば世界樹の実と合成した場合、 効果①により世界樹の実は消費される 効果②により世界樹の実と同等の効果の実を作成 複数生成してくれないとこれ合成に使った創造…
[一言] 更新お疲れ様です! 結構癖のあるアイテムたちが多いですね、、、 、、、大丈夫?じゃしんに持たせてると過去の二の舞にならない、、? 更新お待ちしています!
[一言] あっ、杖の要求値ってこれじゃしん満たしてるんだな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ