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3-【公式ストーリー】

モンハンにうつつを抜かしていたらいつの間にやらとっても素敵なレビューが……!ありがとうございます!


「あ……がっ……!」


 街から外れた暗闇の中、苦しげに呻きながら這いずる黒い影があった。


「ク、クソが……!なん、で……こんな目にッ!」


 全身を自身の血で真っ赤に染めながらも、ギラギラと野心を隠さない男――クリアは誰も聞いていない荒野で一人、怨嗟の声をあげる。


 全身の骨は折れ、動いている事すら奇跡的にも感じる様だったが、必死で生にしがみつくように街に向かって身体を動かしていた。


「獣、風情が……私の邪、魔をする、など……!ふざけ、やがって……」


 普段のどこか掴み辛い飄々とした雰囲気は面影すらなく、ひたすらに己の感情のままに言葉を吐き捨てるクリア。一目見て分かるほど余裕のない状況に追い込まれている中、彼はふと笑みを浮かべる。


「だが、実験は成功だ……!この力、があれ、ば。何度でもやり直、せる……!」


 不気味に顔を歪めながら含み笑いをしたクリアは懐に隠し持った注射器をスーツ越しに触る。


「一度立て、直して、新し、いモンスターさえ、手に入れば。今度こ、そ邪神様の願いを――」


「おや、こんな所で会うなんて。奇遇ですね」


 今後の展望を夢見るクリアは部下たちが待っているであろう街の方面へと必死で向かう。そんな時、彼の目の前にどこからか一人の男が現れた。


「その声は……ッ!クラール、ハイトッ!!!」


「えぇ、久しいですね。お元気でしたか?」


 クリアが顔を上げると、そこには修道服を着た男の姿があった。手には大事そうに真っ白の背表紙の本を持ち、柔和な笑顔でふざけたことを宣う男に、クリアは射殺さんばかりの視線を向ける。


「この姿を見、てそう思うなら、よっぽどめでた、い頭をし、ているな」


「そうですか?素敵な姿だと思いますよ?――とても良い、終末の姿です」


 皮肉交じりのクリアの言葉を意にも介さずにニコニコと笑うクラールの様子に、クリアは内心で舌打ちをする。


「この狂人が……」


「同じ穴の狢でしょう。少なくとも邪神様を崇拝している以上は」


 その言葉にクリアは押し黙る。それはある意味での正論であり、逆の立場であれば彼もそうするだろうと判断したからだった。


「……そんなことより、一体、ここには何し、に来た」


「あぁ、それですか。少し小耳に挟みまして」


 分が悪いと悟ったクリアが分かりやすく話題を変えると、クラールはぱんと手を鳴らしながら返答する。


「どうやら聖獣を鹵獲した上に【世界樹の実】からとっても素晴らしい薬が出来たらしいんですよ。ですので一度お目にかからせて貰えればと」


「ッ!?」


 ニコニコと笑いながら告げられる言葉にクリアの体は強張り息を呑む。それだけでクラールの真意が嫌になるほど伝わってくる――いや伝わってしまった。


「お、おまえ、まさか……!俺の成果を、奪うつもりかッ!」


「いえ、そんなつもりは。一目拝まして貰えればいいんです」


 そう言って表情を崩さずにゆっくり近づいてくるクラールにクリアは恐れ慄きながら、力の限り声を張り上げる。


「くるなッ!これは私の物だ!私が作ったんだ!」


「いいえ、それは違いますよ」


 取り乱すクリアに嘆息したクラールは聞き分けのない子供を諭すように優しい口調で言葉をかける。


「それは邪神様の物です。あの御方に加護を授かった時から我々に所有権などありません。枢機卿ともあろう貴方がそんなことも分からない筈ないでしょう?」


「ぐ、ぐぅぅぅぅ……!!!」


 明らかに馬鹿にするようなその口調にクリアは肩を震わせながら唇を噛む。必死で反論の言葉を探すが、脳に血が足りていないのかいつものように冷静な判断が出来ず、口も回らなかった。


「話は終わりでしょうか。では早く渡してくださいね」


「……来るなァ!来るんじゃないッ!」


 これ以上は無駄だと言わんばかりに話を切り上げたクラールに対して、クリアは亀のように体を丸めて懐にしまった注射器を守る。だが満身創痍の体ではそれすらも叶わず、腹を蹴り上げられて仰向けに寝かされるといとも簡単に奪われてしまう。


「がはッ……」


「おぉ、これが。きれいな色をしていますね」


 くぐもった呻き声をあげるクリアを他所に、手にした注射器の中身を興味深げに見つめるクラール。


「な、なぜ……何故なんだ」


「ん?何故とは?」


「貴様はもう既、に十分なほど、邪神様の寵愛、を受けているじゃ、ないか。何故そうまでして他者を蹴落、とすんだ」


「あぁ、そういうことですか。簡単な事ですよ、私の理想に不要だからです」


 なんてことはない、至極当然のことを口にするかのように言葉を放つクラールにクリアは驚愕のあまり、思わず目を見開く。


「私の理想は無色透明の『何も存在しない世界』です。その実現に一番近かったから邪神様の元を訪れたに過ぎないんですよ」


「それなら、お前自身も、それこそ邪神様だって――」


「えぇ、勿論。すべて不要なものです。まぁ私利私欲の強い貴方とは見ている景色から違いますので。ですから、たとえ同じ枢機卿であろうと理解はできないかと」


「……狂ってる」


「お褒めに預かり光栄です」


 酷く気味の悪いものを見るかのような怯えた表情を浮かべるクリアに対してニコリと微笑みを浮かべながらお礼を言ったクラールはくるりと身を翻してその場を立ち去ろうとする。――その時、地鳴りのような足音が殺到した。


「来たか!!!」


「おやおやこれは……」


「グゴァ!!!」


 2人を取り囲むように周囲に現れたのは数十体はくだらない【ハイオーガ】の群れだった。それを眼にしたクリアは発した言葉とは裏腹に余裕そうな表情を崩さないクラールの様子に気付かず、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。


「は、ははは!形勢逆転だな!諦めて【R:evolve】を返して――」


「くだらない」


 クラールは容赦なく冷めた言葉で遮ると、クリアを一瞥して笑みを崩す。そのまま手に持った本のとあるページを開くと、右手を掲げてパチンと中指と親指を使って音を鳴らした。


「は?」


 呆けた声を出すクリアの視界に広がったのは、【ハイオーガ】の群れがボロボロとくずれるように塵に代わっていく姿であった。苦しんだ様子もなく、ただただ淡々と崩壊していく様がクリアの頭を余計に混乱させる。


「し、知らない!こんなの聞いてない!」


「そうですか。それは残念ですね」


 喚き散らすクリアをどうでも良さそうにあしらったクラール。そのまま近づいて頭に手を触れると、先ほどの【ハイオーガ】と同じようにクリアの体も分解されていった。


「あ、あ」


「さようなら。素晴らしい最期でした」


「クラー――」


 絞りだした声は最後まで続くことなく。


 かつてクリアだった砂のような塵の山は風に乗ってあたりへと吹き飛んでいき、それを見ながらクラールは眼を瞑る。


「邪神の加護があらんことを」


 呟いた後、右左下上と腕を動かして十字架を切ると、クラールはどこかへと向かって歩き出す。


 やがて彼が去った荒野には夜空から星の光が零れ落ち、先ほどの喧騒がまるで嘘かのように何てことはない平和な世界が広がっていた。


[TOPIC]

QUEST【愛しき人にその手を伸ばして】

[攻略チャート]

1.カジノのにてゲームを行う

・100万G獲得⇒αルート

・100万G借金⇒βルート

2.「クリア」と会話する

・α⇒VIP認定。『セントラルタワー』の出入りが可能に

・β⇒『監獄フォーゲルケーフィッヒ』に収監

3.リラと邂逅する

・α⇒観客として遭遇

 条件:『ハクシ教関連アイテムの所持』

・β⇒剣闘士として遭遇

 条件:『闘技場イベントを5勝』

4.クリアよりクエストを受諾

 ※分岐がここで収束

5.世界樹に訪れ、ゴウグと邂逅する

6.【世界樹の実】を入手する

 ※イベント戦のためゴウグの撃破は不可(世界樹の加護有)

7.入手した【世界樹の実】をクリアに渡す

8.再度ゴウグの元に訪れることで会話可能

 (ここでワールドクエストが発生)

9.セントラルタワーに訪れると黒服との戦闘が開始

 (『監獄フォーゲルケーフィッヒ』に訪れることでクリアと会話になるが、必須ではない)

10.最上階に向かい、クリアとリラを発見する

11.イベント『リラの暴走』

12.街に向かったリラを追って、戦闘開始

13.ゴウグが世界樹の麓に状態異常を回復する【精霊樹の実】が生っていることを思い出す。

14.ゴウグ離脱。帰還まで持ちこたえる

15.ゴウグ帰還。精霊樹の実を食べさせ、リラが正気に戻る。

16.追ってくるオーガ達を対処しながら世界樹に帰還。クエストクリア

 ⇒本来であればフィールドに出た瞬間発生する(今回は飛行船を使用したため発生せず)


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― 新着の感想 ―
[一言] 闘技場5章でフラグ立つならレイの前に変態従兄弟がフラグ立ててたんじゃないの? そっちにも邪神案件必要?
[気になる点] 「喚き散らすクリアをどうでも良さそうにあしらったクラール。そのまま近づいて頭に手を触れると、先ほどのオーガと同じようにクラールの体も分解されていった。」と本文に書かれていますが分解され…
[一言] このジョブならではの荒業だね♪(誉め言葉)
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