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1-4 視聴者との邂逅


「それじゃ、第1回じゃしん会議を開催します!」


「ぎゃう~!」


・イエ~イ!

・どんどんぱふぱふ

・888888

 

 レイの言葉によってコメント欄が一気に盛り上がる。それを眺めている彼女の横ではじゃしんが嬉しそうに飛び跳ねていた。


「今回の議題は……そうだね。どうやったら戦えるようになるか、かな」

 

 続けると決意したところで、現状の能力で戦う手段に見当はついたわけではない。そこで今後このゲームを続けるためにも至急解決しなければいけない問題について、レイは視聴者の力に頼ることにした。


「とりあえず、私が強くなる以外で何かいい案ある人いる?」


・うーむ

・ってかそもそも選択肢少なすぎてわからん

・効果もいまいち分かってませんしね~

・強い人とパーティー組むのは?


「だよねぇ……あ、誰かとパーティを組むのはとりあえずなしで。今のままだと寄生になっちゃうからね」


 色々なゲームをやってきたレイにとって、頼りきりと言うのはあまり快く思えない。むしろレイ自身がその状況を享受できるほど図太い人間ではなかった。


・神官の俺からすると、信仰振り切るのは悪くないと思う


「ほう、その心は?」


 面白そうなコメントを見つけて続きを促す。するとすぐさま返信コメントがきた。


・神官レベル10の技が信仰依存の攻撃だから。【神の裁き】って技

・あれ、でもレイちゃんって神官とれるんだっけ?

・それは知らんけど、今の職業でもそういう技出てくるんじゃね?って話


「なるほどね……」


 あまり【死霊術師】以外の職業を調べてこなかったレイにとっては新鮮で有意義な情報であった――のだが、その情報は現状を打開できるものではなかった。


「ん〜、結局地道にレベル上げするしかないかなぁ~……」


 なかなか進展しない会議に頭を抱えるレイ。そんな時、とあるコメントに目が止まった。


・私にいい考えかある


「ほんとに?……え~と、黒兎さんだっけ?」


・そう。だから『ToY』の世界で会いたい

・は?

・は?

・は?俺も会いたいんだが?


「えっ?う~んどうしようかな」


 突然の発言にコメント欄が少し荒れ始める。レイもあまり好ましく思わなかったようだが、まぁ所詮ゲームの中だと割り切ることにした。


「ま、いいか。みんなが見てくれてるしよっぽどの事が無い限り大丈夫でしょ」


・え?マジで会うの?

・やめといた方がいいよ

・気をつけてね?


 心配するコメントに対して大丈夫大丈夫と、軽く返答をしてドアへと向かう。


「じゃあ行ってきま――」


「待ってた」


「え?」


 ガチャリと扉を開けた先には身長145cmくらいのゴスロリ少女がクマのぬいぐるみを両手で持ちながら無感情な目でこちらを見ていた。


 不意に現れた彼女に対して動揺するレイ。そんな様子に構わず、目の前のゴスロリ少女は石の様なものを取り出して砕く。


 次の瞬間、石の中から溢れた青白い光がレイ達を包むと、三人の体はソファーと机が置いてある仄暗い個室に移動していた。


「ぎゃう!?ぎゃう!?」


 いきなり視界が変わったことに驚いたのか、じゃしんはおぼれているかのように手足をバタバタさせる。傍から見るととても滑稽な光景だった。


「かわいい」


「神種としてそんなんでいいのって聞きたくなるけどね……ってそうじゃなくて」


 緩みかけた空気に一瞬油断しそうになったレイだったが、慌てて気を引き締める。


「……誰ですか?」


「私はGothUsa。あなたには黒兎っていった方が分かりやすいかも」


「え?あなたが黒兎さん?」


「うん。怖がらせたならごめんなさい。コメントの皆も」


 その言葉に今の今まで完全に忘れていたコメント欄の存在を思い出し、改めてコメントを見る。


・レイちゃん大丈夫!?

・びっくりした〜

・ゴスウサさん?が黒兎さんなの?

・黒兎さんもめちゃ美少女じゃね!?

・わかる

・わかる


 そこにはさっきと同じようにたくさんのコメントが流れていた。その変わらない様子に苦笑し、警戒していた心を緩める。


「うん、私は大丈夫。何ともないみたい」


・ならよかった

・でもなにがあったの?

・ってかそこどこ?


「私が説明する」


「うわ!」


 コメント欄に集中していたレイは、いきなりウィンドウをのぞき込んできた黒兎に気付かず大きな声を上げる。


「これを使った」


 黒兎は気にした様子もなく、先ほど砕いた石をレイに見せる。その石は青色に光っており、よくよく見てみると中に炎のような揺らめきが見えた。


・【ポータルストーン】じゃん

・え?あのバカ高いアイテム?

・あ~あの賢者が作ったってやつか


「そう。砕くと設定した場所に一瞬でワープできる。今回は私のホームに招待した」


「へぇ~」


 そんなものあるんだなとレイは感心したような声を出す。じゃしんはその石に興味があるのか、黒兎の手の中にある【ポータルストーン】を掴もうと飛び跳ねていた。


「ちょっと、レアアイテムらしいからやめなさい」


・なんか親子みたいだな

・レイママ!?

・最高すぎる…


「レイママとりあえず座ったら?」


「いやママじゃないけど!?」


 何故かママキャラにされそうになっていることにかなり不服な気持ちになりながらも、促されるままソファに腰をかける。じゃしんもソファの上に降りると飛び跳ねて遊びはじめた。


「それでえーと、黒兎さん?あ、ゴスウサさんだっけ?なんて呼べばいいの?」


「何でもいい。でも仲のいい人にはウサって呼ばれてる」


「じゃあウサさんで。私に会いたかった理由ってなんなんですか?」


「その前に紅茶でも飲もう」


 ウサがパチンと指を鳴らすと、闇の中からタキシード服を着た犬と猫のぬいぐるみがトレイを運んでくる。その上にはクッキーとカップ3つがおいてあり、それを慣れた手つきでテーブルの上に置いていった。


「これも目的の一つ。あなたとお茶をすること」


「あ、そうなんですね……?」


 そう言って紅茶を飲むウサに倣い、レイも紅茶を口にする。


「ぎゃう~……」


 口に合わなかったのかじゃしんは苦い顔をしていた。


・え?何の時間?

・いや可愛いけども

・可愛いから良くない?

・お、そうだな!


「安心して。後でしっかりと教える」


「アッハイ」


 あまりにもマイペースなうさの様子に何も言えなくなる。コメント欄も助けてくれる見込みは少ないと判断し、レイは考えるのをやめた。


「ぎゃう……」


 横ではじゃしんが紅茶にもう一度挑戦して、同じように渋い顔をしていた。


・え?マジで何この時間?俺がおかしいの?

・気にしたら負けだぞ

・尊いからヨシ!


[TOPIC]

PLAYER【GothUsa】

身長:147cm

体重:46kg

好きなもの:ゴシックファッション、ぬいぐるみ、可愛いモノ


 見た目は金髪ゴスロリ美少女。親しいものからはウサの愛称で呼ばれている。

 レイの初配信からいる最古参メンバーの一人であり、一目見た時からレイの可愛さに目を奪われ、じゃしんを召喚したことで絶対に仲良くなると決心した。

 また、クラン【Gothic Rabbit】のクランリーダーとして週に一度撮影会と称して集会を開いており、ゴシックファッションの良さの布教活動に精を出している。



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