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3-30 異種格闘戦のゴングが鳴る


「くまーー!!」


「ウガゴゥ…!?」


 テディベアのような見た目をした【くーまん】が【阿修羅コング】に近づくと、上から押し潰すように両手を向ける。


 【阿修羅コング】も負けじとその6本の腕で応戦するも、やはり体格差からか次第に膝をつく形になった。


「ウゴガァ!!!」


「くま!?」


 力勝負で勝てないと踏んだのか掴んでいた手を放して滑らせるように体を潜り込ませる。そのまま6本の腕を駆使しながらがっちりと背中に張り付いた。


「く、くま~!!!」


「ウガァ!?」


 対する【くーまん】は地面を蹴って仰向けのまま宙に浮かび、背中から地面に着地する。そのままだと踏み潰されると判断した【阿修羅コング】は慌てた様子で背中から退いて距離をとった。


「いいよ【くーまん】!押してる押してる!」


「ファイト」


・見えてるよ!

・相手ばててる!

・右!右!


「ええい、何をしてる!本気を出すんだ!」


 じりじりと距離を保ちながら緊迫した空気を出す二体。彼等への応援にも熱が入り、完全に周りは観客と化す。


「くまー!」


「ウガァ!」


 【くーまん】は再び突撃すると、今度はフライングボディアタックを仕掛ける。それに対して【阿修羅コング】は地べたを這うようにして体を伏せてやり過ごすと、ごろごろと転がる【くーまん】を追いかける。


「ウガァ?」


「く、くまぁ……!」


 そのまま背中を蹴飛ばして【くーまん】を仰向けにすると、【阿修羅コング】は馬乗り状態になり、ニヤリと笑う。


・まずい!

・とりあえずガード!

・顔は守るんだ!


 そのアドバイスが届いたのか、容赦なく6本の腕を振り下ろしてくる【阿修羅コング】に対して、【くーまん】は両手を顔の前に構え耐える動作に入る。


 その対格差は【くーまん】に1m以上分があるものの、あまりにも一方的な状況にレイはもどかしそうに顔を顰める。


「やばい、加勢に入らないと!」


「待って」


 そうしてレイが銃を握り直して駆け出そうとした時、後ろにいたウサが服を掴んで止める。


「大丈夫。ヒーローは負けない」


「……分かった。信じるよ」


 その真っすぐな瞳にレイは銃を下ろして再び傍観者となる。不思議と先ほど感じていた不安はなくなっていた。


「ウガッ!ウガッ!」


 ひたすらに滅多打ちにする【阿修羅コング】にただただ耐える【くーまん】。一方的に見える試合展開だが、いまいち決め手に欠けており、【阿修羅コング】の表情からも余裕がなくなっていく。


「ウガァッ!」


 しびれを切らした【阿修羅コング】は本気と言わんばかりに3対の手をそれぞれ組んで大きく振りかぶる。そのままガードしている腕に向かって思いっきり振り下ろす――そのタイミングで【くーまん】は動いた。


「くまっ!」


「ウガッ!?」


 その時を待っていたかのように【くーまん】は体を縮ませる(・・・・・)。数メートルほどの体格から数十センチへ変化し、乗っていた物が急に無くなったことで【阿修羅コング】は前のめりに倒れ込む。


「くまー……!」


「ウ、ウガァ!?」


 そのまま股の下を潜り抜け、背後を取った【くーまん】の体は再び巨大化し、【阿修羅コング】のお腹に手を回す。


「くま~~~!!!」


「ウガガァ!?!?」


 【くーまん】は雄叫びを上げながら体を仰け反らせる。それに連動して宙に浮いた【阿修羅コング】の体が、頭から地面へと落下する。


 ミシミシッ!と背骨が軋む音を鳴らして世界が停止する。しばらくはぴくぴくと動いていた【阿修羅コング】もやがてこと切れた様に動かなくなると、ポリゴンとなって消えていった。


「――くま~~~!!!」


「うおぉぉぉ!!!くーまーん!!!」


・バックドロップだぁ!!!

・決まったぁぁぁ!!!

・うおぉぉぉぉぉ!【くーまん】!


 ゆっくりと立ち上がった【くーまん】が右手を高々と掲げながら勝鬨を上げると、レイや視聴者から歓声が沸き上がる。


「流石ヒーローだね!」


「当然。【くーまん】は最強」


 レイが隣にいたウサに話しかけると、腰に手を当てて胸を張りながら答える。その顔はどこか誇らしげだった。


「……我が間違っていた。貴様等の実力を見誤っていたようだ」


 そんな歓喜に包まれた様子のレイ達に、ゴウグは静かに、それでいて決意の籠った思いを込めて話し出す。


「本気を出す。もうどうなっても知らないぞ」


 そう他人事のように呟いたゴウグは自身の胸を叩き、ドラミングを開始する。次第に体を仰け反らせていく様子にレイは既視感を覚えて叫ぶ。


「まずい!逃げなきゃ!」


・あの衝撃波だ!

・でも逃げるってどこに?

・落ちるしかなくない?


「それじゃ逃げるのと変わんないし……えっと――」


「オォォォォ!【ドラミング・ハウンド】!」


 明確な作戦が決まらないままタイムリミットが訪れ、ゴウグの口から見えない衝撃波が発射される。


 その圧倒的な空気の塊の前にレイは腕を交差して思わず目を瞑る。だが、その時は一向に訪れなかった。


「あれ――って【くーまん】!?」


「くまぁ……」


・ヒーロー!

・カッコよすぎんだろ!

・くーまーん!!!(´;ω;`)


 レイが再び目を開けた先には二人を庇うように手を広げ、すべての攻撃を受け止めた大きな背中があった。


 レイの驚いた声に一度振り向いた【くーまん】は安心させるように一声鳴くと、すべての力を使い切ったのかぐんぐんと縮んでいき、普段通りの大きさに戻ると動かなくなる。


「【くーまん】が一発で……」


「まずは一体。次はどうする」


 珍しく驚いた様子を隠せていないウサに、容赦なくドラミングを始めるゴウグ。残念ながら次をしのぐ術はなく、絶体絶命の状況の中、状況を打破するためにレイは思考を張り巡らせる。


「くっそ、分が悪くても賭けるしかしかないか!」


 刻一刻と迫る次の攻撃(タイムリミット)にレイは悪態をつきながら銃を両手に持って前に構える。


 そうしてゴウグの咆哮と共に必殺のスキル名を口にした。


「【ドラミング・ハウンド】!」


「【黒月弾(ブラックムーン)】!」


 レイの手から放たれた黒の弾丸はゆっくりと突き進みながらも、見えない衝撃波とぶつかり破裂する。


 突如生み出されたブラックホールは強力な引力を用いてあたりの空気を全て吸い込み、【ドラミング・ハウンド】を相殺することに成功した。


「なんとかまったけど……」


「無駄な足搔きだな」


 ぽつりと呟いたレイの表情は未だ暗いままであり、ゴウグの言う通り一時しのぎでしかないことは明白であった。


 同じ方法は使えないため次の攻撃を防ぐ手段を考えるものの、現状の手札ではかなり厳しく、どうしてもGAMEOVERの文字がちらついていた。


「万事休すかな……」


・ん?なんか来てね?

・レイちゃん後ろ!

・危ない!


「ん?――うぐぁ!?」


「ぎゃうううううううう!!!」


 詰み。その言葉を思い浮かべた時、レイの死角から黒いマスコット(・・・・・・・)が飛来する。それはまっすぐと、弾丸のように彼女に突き刺さり、大きく声を上げた。


[TOPIC]

SKILL【ドラミング・ハウンド】

体全身で奏でる音は威嚇に非ず。聞け、すべてを吹き飛ばす強者の音を。

CT:-

効果①:超絶大な無属性攻撃。(<腕力> * 1000)

※NPC専用技

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― 新着の感想 ―
[一言] 朗報:じゃしん、無事!
[一言] きた!メイン盾きた!これで勝つる! 庇えるってことは座標指定じゃなくて飛び道具性の攻撃なわけだし じゃしんがどうにか全身隠してくれれば…レイちゃんちょっとマスコットサイズに縮んでみよ?
[一言] 更新お疲れ様です! くま強いしカッコいい、、! そして考察合ってましたか。まぁそうなると、この後は、、ですね 、、じゃしんのことすっかり忘れてました!レイちゃんもだろうけど! 、、あ、じゃし…
感想一覧
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