許すまじ、黄色Tシャツの船長(怒)! 暁光帝は自分の巫女に迫る脅威に備えます☆
幼女クレメンティーナが悪党どもを成敗していた頃、海水浴場ではエルフのナンシーと博物学者ビョルンが思い悩んでいました。
恐るべき超巨大ドラゴン暁光帝が人化した童女アスタが何やら妙ちきりんなことをしているからです。
何が起きるのか。
何をしようとしているのか。
さっぱりわかりません。
だから心配します。
心配するだけ無駄だけど。
さぁ、一体、何が起きるのでしょうか。
お楽しみください。
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眩しい陽光の下、寄せては返す白波の間で子供達が歓声を上げている。こちらは先ほどと違い、肉がたっぷり付いて肥満気味、裕福な上流階級の子供達だった。キャッキャッと笑いはしゃぐ様子は同じく可愛らしいが、お腹の肉が震えてたゆんたゆんしている。
「あゔぅ……」
見つめる妖精人も顔をしかめる。
常日頃、『自分は断じてデブでない』と主張してきたが、だらしない爆乳の下でお腹の肉も震えている。目の前のデブ子供達と変わらないではないか。揺れ弾むお尻や太腿の肉を考えれば、むしろ、自分の方がデブではなかろうか。
いや、自分には脚線美と爆乳の色気がある。只、歩くだけで誰もが振り返るほどの美貌がある。
ぎりぎりデブではない。
超セクシーなエルフである。
「まだ大丈夫の…はず」
爆乳を持ち上げると乳肉の下は汗びっしょりだった。だいぶ暑くなって来たので、乳房の大きな女性のみが発症する“おっぱい汗疹”になりかけている。
これがセクシーでなくて何なのだろうか。
断じてデブでない。
ナンシーは自信を取り戻す。
「それでアスタさんを籠絡できそうなんで?」
死んだ魚のような目をしてビョルンが尋ねる。
「あぁ、ご心配なく。私が貴女の美貌を見て動揺しないのは……」
「心労と極度の緊張のせいですからね。わかります」
博物学者の努力と根性に配慮してエルフがいたわる。
目の前で人間が発狂したり、訪れてきた童女の正体が超巨大ドラゴンだったり、今日の一日だけでも彼の受けたショックは計り知れない。
彼にまで発狂されては困る。
余り負担を掛けないようにしようと誓うナンシーであった。
「籠絡は試みていません。暁光帝を利用しようとして破滅した輩の仲間入りはしたくありませんからね」
もっともわかりやすい破滅の形である暁の女帝に関わることは自殺に等しいと言われている。実際に関わって利用しようと企み、今は墓の下にいる連中の話は枚挙に暇がない。
では、破滅を避ける方法は何か。
利用しようと思わなければいい。
本物の天変地異を思い通りに動かそうとするから巻き込まれて破滅するのだ。
死にたくなければ、只、観察するに留めるべきだ。
「それでも…わずかな希望を見出すならば、アスタから好かれるよう努めることくらいかしら。それくらいなら許されるでしょうね」
そのための紐ビキニである。
たらしこむまでは行かなくても心に留めてはもらえるかもしれない。
実際、アスタが人類絶滅の決定を覆してくれたのはナンシーの♀×♀キスと乳房のおかげである。
「ふぅむ…話を聞く限り、上手く行ったようですしね。世界の平和を望む者…いや、明日の朝日を拝みたい者として応援しますよ」
ビョルンは目をつむり、祈ろうとして止める。
どの神様を拝むか迷ったのだ。そして、暁光帝に関わることではどの神様も願いを聞き届けてくれそうもなかったのだ。
そこへ何やら難しい顔をした、くだんの童女アスタがやってきた。
「いやはや、何とも、非常に難しい問題が起きてしまったよ。クレミーと相談しなければ」
大変なことである。
先ほど、はっきりと“ウミケムシ未満の神父グアルティエロ”と声に出して言ってしまった。
これは大した根拠もなく、思い込みでウミケムシを悪く言ってしまったことになる…かもしれない。
もしも、自分がそんな言い方をされたらどう感じるだろうか。
例えば、『光明神ブジュッミは天龍アストライアー未満のクズ野郎だ』とか。
「むぅ……」
全く以て事実ではないか。
確かに光明神は私利私欲のために幻獣を傷つけて世界に迷惑をかけたクズ野郎だし、自分に遠く及ばない。あいつの手下どもは女精霊の泉に牛馬の糞尿を投げ込んで穢し、一角獣の森に火を放った。その上、2頭に配下に加わるよう迫った。
『光明神ブジュッミは世界に迷惑を掛けて反省しない、天龍アストライアー未満のゴミカス野郎である』
全く以て恒真式ではないか。
だが、腹立たしい。
あんな光の神ごときが自分と比較されたこと、それ自体がムカつくのだ。
やはり駄目だ。
ウミケムシのように頑張っている生き物を光明神ごときを崇め奉るクズ野郎と比較してしまったことは侮辱である。
この天龍アストライアーが根拠もなく付けてしまった、この汚名は雪いでやらねばならぬ。
「う〜〜ん……」
どうすればかの精錬潔白な生き物の名誉を回復できるのか、思い悩む。
「よし。クレミーに直接、言えばいいか」
よく考えてみればはっきり口に出していってしまった相手はクレメンティーナ、只1人だけだ。
ならば、訂正して、ウミケムシの勇姿を2人で確認すればクレメンティーナも理解してくれることだろう。
貴重な生き物に出会えて幼女も喜ぶだろうし。
これで大成功、間違いなしだ。
うん。それで行こう。
問題が解決したので気持ちを切り替え、楽しいことを考えよう。
自然と先ほどの折檻が思い出される。
「ふんふ♪ ふんふ♪ ふ〜ん♪」
楽しかった。
とても楽しかった。
機嫌よく鼻歌を唄う。
「「えっ!?」」
為政者2人は目を丸くする。
今、『非常に難しい問題が起きてしまった』、『龍の巫女と相談しなければ』と顔をしかめていたではないか。それがどうして突然、童女の機嫌がよくなっているのだろうか。
さっぱりわからない。
「ご機嫌ですね」
恐る恐る、ナンシーが言葉を紡ぐ。
「うん。さっきのお仕置きを思い出してね」
言われた通り、上機嫌の童女だ。
「それはよかった。神の使徒をぶちのめすのは気持ちいいですね」
何が楽しかったのだろうか。神様を嫌いな暁光帝の気持ちを慮って、ナンシーは神父を貶してみた。
「ん〜…ぶちのめすよりも、やっぱり攻撃を避けるのが気持ちよかったね」
何とも楽しげな童女である。
「ボクは攻撃を避けたことがなかったから凄く新鮮だったよ。これからはガンガン避けるとしよう」
嬉しそうに言って上半身をササッと動かして避ける真似をする。
「な…なるほど……」
ビョルンは唖然としながらも納得している。
アスタは超巨大ドラゴン暁光帝が人化した童女なのだ。
敵…いるのか、いないのか、そちらの方が怪しいものの、敵の攻撃を避ける必要がなかったのだろう。否、むしろ、避けた方が周辺への被害が大きくなってしまったはずだ。それで避けるのではなく、そのまま、攻撃を受けることが求められ、習慣になってしまっていたのだろう。
それは何を仕掛けられてもダメージを負わないのだから、ドラゴンの鱗で受けた方が良い。それなら周囲への影響も少なくて、自然環境に優しいと言える。
けれども、それはそれで不満が溜まる…のだろうか。
いや、他のドラゴンが戦う姿を見て自分も敵の攻撃を避けてみたいと思っていたのではなかろうか。
掴み掛かってきた神父グアルティエロを避けて、暁の女帝様は密かに楽しんでいたようだし。
「それはよろしゅうございました」
童女が上機嫌ならそれに越したことはないとうなずく。
「それで龍の巫女にご相談とは何事でしょうか?」
恐れおののきながらもさり気なく話に探査針を混ぜ込ませる。鎌をかけたのだ。さすがは領主の懐刀ビョルンである。
「うむ。緊急事態だね。とにかく早くクレミーに伝えるべき大事件が起きてしまったんだよ」
クレミーが先ほどの言葉を信じて他人にウミケムシの悪口を言ってしまったら大変だ。更にウミケムシの名誉が傷つけられ、汚名を雪げなくなってしまうかもしれない。
そう考えてアスタは難しい顔をする。
「そうだったんですか。いつ頃、龍の巫女は戻られるんで?」
質問しつつ、思った通り、引っ掛かってくれたとほくそ笑む博物学者だ。自分は一言も“クレメンティーナ”の名前を出していない。“龍の巫女”という聞き慣れない単語を用いたのに、童女は『クレミーには』と明確に“クレメンティーナ”の名前を出して答えている。
やはり、あの恐るべき幼女が龍の巫女。
暁光帝によって存在そのものを創り変えられた超人なのだ。
自分が立てた仮説について確証が得られて嬉しい。どうしても口が綻んでしまう。
ところが。
「わかんない……」
先の問いについて童女は困り顔だ。パトリツィオ少年達と神父グアルティエロの始末、要はごみ処理をクレメンティーナに頼んでしまった。
いつ頃、戻ってくるのか、わからないし。
そもそも、戻ってくるように言いつけてもいない。
もしかしたら戻ってこないかもしれない。
探しに行かないともう二度と出会えないかもしれない。
「うむむ……」
正直、クレメンティーナのことは心配していない。幼女には明確な志と合理的に推論する能力がある。唯一、足りなかった力は自分が補ってやった。魔族だろうが、凶暴な幻獣だろうが、人間の軍隊だろうが、何に挑まれようとも今の幼女なら一蹴できるだろう。
だが、しかし。
クレメンティーナの敵はそういう連中だけではないのだ。
場合によっては難題に直面するかもしれない。
例えば、『円周率を最終桁まで計算せよ』なんて無理難題を命令されて、思い悩み、悩み過ぎて死んでしまうとか。
これは賢い素直な良い子であればこそ陥りやすい難問だ。
「ううう……」
黄色いTシャツの白色人種船長に命じられて、大量の計算用紙に囲まれてうずくまる幼女の姿が嫌でも思い浮かべられる。『むぢゅかちぃよぉ』『けいしゃんがおわらないよぉ』と泣きながら鵞ペンを握りしめる幼女の何と健気で、何と哀れなことか。
「駄目だ! それには最大級轟雷放散稲妻じゃ足りない!」
思わず叫んでしまう。
円周率は3.14159265358…と、デタラメな数字が無限に続く。どんなに強力な魔法を以てしても円周率の最終桁は求められない。それには円周率が循環しない無限小数…無理数であることを示して、最終桁が存在しないことを証明しなければならないのだ。
そのためには微分法、すなわち無限小解析の原理を知る必要がある。
「厳しいな……」
思わず唇を噛みしめる。
「ええっ!? 最大級の雷魔法でも対処できないっ!? そんな重大な事態が迫っているんですかっ!?」
悲鳴に近い絶叫が上がる。向こうで博物学者ビョルンが青褪めているが、それどころではない。
「……」
アスタは何も答えずに考え込む。
重大な懸念があるのだ。
無限小解析を理解するには集合論とεーδ論法を伴う近傍の概念と関数論と実数の連続性について知っていなければならない。
ところが、瓦礫街リュッダの教育水準は著しく低いのだ。どうやら算術は四則演算すらまともに教えていないらしい。これでは無限小解析を修めるなど夢のまた夢である。
足りない力を補ってやったつもりだが、まだまだ足りぬ。
許すまじ、黄色Tシャツの船長!
幼いクレメンティーナが無理難題を突きつけられて泣く姿を想像すると目頭が熱くなってしまう。
「そんな時、あの子に任せて捨て置くなんて真似はできないよね……」
やはり、まだ自分が助ける必要があるだろう。
その時。
「……」
ふと何気なく海へ視線を向けた時、視界に違和感を感じる。
「むぅ……」
煌めく虹色の瞳が意外なものを見つけて唸る。
何であんなのが来ているんだろう。
「アスタさん?」
童女の様子を訝しんだビョルンもメガネ越しに海を見つめた。
「…」
同じくナンシーも海に目を向ける。ヒト族よりも視力の高い妖精人族らしく、ヒト族には見えないものを見つけてしまう。
「これは!?」
鮮やかな紺碧に輝く碧中海、その平和な波間に怪しい影がある。
それは沖合からこちら、海岸へゆっくりと近づいているようだ。
「何か奇っ怪なものが近づいてくるわ!」
警告する。
「1つ、2つ、3つ…いえ、4つ、いるわ! あれはもしや……」
白波を介して見える姿は定かでないが、目を凝らすと確かな塊が4つ見える。大きさは様々でヒト族の大人ほどのものから大きなヒグマほどもあるものまでいろいろだ。
「これはまた珍しい連中がやってきたね♪」
アスタの声はどこか嬉しそうだ。
逆に。
「珍しい連中!?」
ビョルンの声は上ずっている。
こうして海の中から上がってくる幻獣に心当たりがある。それは瓦礫街リュッダ領主の懐刀がおののく存在だった。
「あれは……」
海中で揺らぐシルエットには見覚えがある。
どうやら、悪い予感は的中してしまったらしい。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
こちら、拙著『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』はけっこうパロディ入れてるんですよね。
パロディって難しくて刺さるヒトにはめっちゃ刺さって面白がってもらえるんですが、外すと寒い。めっちゃ滑ります。
だから、描く方にも勇気がいるわけですが…まぁ、ノリです。
ネタというか、パロディ元がえらくメジャーなのばかりなんでモロバレですが、さて?
ああ、仮面ライダーでないAmazonアレクサを購入して真っ先にやったこともアレでしたっけ。
初期のアレクサはカスタマイズでコールワード「アレクサ」から「コンピューター」に変えられたんですよね。さすが、本場はよくわかってらっしゃるwww
さて、そういうわけで次回は『海からの来訪者? 突然のことに暁光帝はドギマギしちゃいます。』です。
請う、ご期待!




