瓜の花、隣は何をする龍ぞ。帝国は暁光帝が気になって夜も眠れません。
海水浴場の騒動も一段落して、さぁ、次に進みましょう☆
……ってお話でしたが、さて。
瓦礫街リュッダにこれだけの騒動が起きていて周辺諸国が黙っているでしょうか。
えっ、街のいじめっ子どもが暴れて神父が説教しただけだって?
それだって結構な事件じゃありませんか。
実際、午前中だけで3〜4回は世界が滅びかけていますしwww
そのついでですよ、ついで。
そ〜ゆ〜わけで周辺諸国の事情をご紹介いたします☆
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
初夏の砂漠は暑く乾いている。
照りつける太陽の下でも、負けじと鮮やかな緑の畑が広がっていた。帝都オルゼポリスの人口を支える農業は優れた灌漑技術のおかげで豊かな実りをもたらしてくれる。
農夫達は皆、ヒト族であり、真面目な小人族も力仕事が得意な巨人もいない。勤勉な蟻甲人さえ姿が見えず、この国が亜人を嫌って差別するヒト至上主義を標榜していることが伺える。
ヴェズ朝オルジア帝国。
歴史的にもしばしば滅亡するオルジア人の帝国だが、現在、この王朝の下では政治がしっかりしていて国も繁栄している。
千年前に人類最強の艦隊を率いて獣人戦争を引き起こした後ムツズ朝オルジア帝国に連なるヒト族オルジア人の国家で、広大なエレーウォン大陸の中西部を支配する超大国である。
オルジア人はこの砂漠を主とする広大な地域で暮らす、褐色の肌とはっきりした目鼻立ちの民族だ。歴史上、オルジア帝国はしばしば滅亡しているものの、そのたびに復興して新たに強力な国家を築いて来たしぶとい民族でもある。
そんなオルジア人の帝都は背後の山に守られる、交易の中心地であり、様々な交易品を取引して大いに栄えている。
素朴ながら見上げるほどの彫刻が掘られた壁面。
砂漠の砂に削られる、石造りの壮麗な皇宮。
そこにおわす皇帝陛下は昨夜のパーティーに疲れ切って眠っておられる。貴族や有力者を集めての盛大な夜会であり、様々な問題に対処する、孤独な為政者は忙しく、何とか床に着けたのはほぼ明け方であった。
深酒もあって最後の方はまともに意識を保てていたのか、怪しいものだった。
そんな過労気味の皇帝の寝所に急ぐ男がいる。
白髪混じりの髪をオールバックにまとめた長身の初老だ。目が鋭くて如何にも切れ者といった風体である。
彼こそはヴェズ朝オルジア帝国の宰相。
皇帝の右腕であり、臣下の最高位だ。
そして、臣下の最高位なので特別な権限を持っている。
例えば、皇帝の寝所へ主の許可無く押し入る権限とか。
「皇帝陛下、緊急事態にて失礼つかまつる!」
驚く衛兵達を尻目に豪華な両扉を押し開ける。
バーン!!
それは豪勢な音を立てて壁にぶつかる。
「む…むぅ…宰相か? 何事…ぞ?」
眠い目をこすりつつ、ベッドから上体を起こした皇帝。
すでに昇り切った太陽がわずかに傾く午後だったが、重要な夜会の翌日は公務を休んで夕方まで寝るのが慣例だったのに無理やり起こされてしまった。
オルジア帝国、歴代の皇帝は大柄で髭を蓄えた偉丈夫であることが多い。けれども、この皇帝は髭を剃っていて痩せぎすだ。宰相よりは小さく見えるが、それは宰相が並外れた長身だからだろう。鋭い眼光と尖った鷲鼻が冷たい印象を与え、そして、広い額が高い知性を示している。
「おはようございます。皇帝陛下。そして、緊急事態であります!」
後半、宰相の声が緊張のあまり、上ずっている。しかも、その精悍な顔はわずかに歪みを見せている。
先ほど、聞かされた報告の示す事態があまりに重大であまりに異常だから遠慮する気も起きない。
それでも、扉の外の衛兵に聞かれることははばかられるので。
「暁光帝、降りる」
皇帝の耳元で囁く。はっきりと。
その一言がもたらした結果は甚だ強烈であった。
ズダーン!
飛び起きた皇帝はベッドから滑り落ちて盛大に尻餅をつく。
如何にも有能な男、如何にも独裁者と言った感じの皇帝だが、滑稽なほどあわてふためいている。
「…で…であるか!」
裸足のまま床に降り立つ。
「陛下!?」
ただならぬ気配に扉の側で控える衛兵が声を掛けたほどだ。
「だ…大事ない! 朕は元気であるぞ!」
声を張り上げた皇帝の顔は真っ青であった。
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ヴェズ朝オルジア帝国が皇宮には一際目立つ、背の高い部分がある。壮麗な建築の只中にあってアンバランスな、非常に大きな部屋であった。
何しろ、天井まで続く吹き抜けで、その天井さえも特別に高く設計されているのだ。
それは宝物庫に連なる閲覧場。
“何人にも奪い得ぬ宝”と称される、特別な国宝を収めている場所だ。
だが、神聖な場所ではない。帝国ばかりでなく、他国の宝物庫にも見られる神聖な印や縁起のいい飾りが一片たりとても見つからぬ。
それは神々がこの場所を厭うから。
大神オルゼゥブを始めとして、主神ジーノウ、軍神ガロンゴディヴァー、豊穣神マァルト、そして、光明神ブジュッミばかりか、暗黒神ゲローマーまでも忌み嫌う宝物だ。
呪い。
それも全ての神々から呪われている、ある意味、恐ろしい宝物だが。
帝国の臣民は誰も恐れることがない。むしろ、国家の守り神として崇拝している。
だから、祝福されていると言えなくもないか。
神々の呪いを跳ね返すほどに猛々しく、紫色の金属光沢で燦然と輝く、その国宝は見上げるほどに高く分厚い“壁”。
この世で唯一無二の、大いなる“暁光帝の鱗”である。
「事態が事態であるからな、話し合うにここより他にふさわしい場所はない」
室内からでは“壁”の天辺がわからない、それでも首が痛くなるほど見上げて考える、皇帝、その人だ。
「この巨大な“壁”ですら鱗の1枚に過ぎぬ。暁の女帝様の何と恐ろしいことだろうか……」
皇帝ですら、彼女の名前には敬称を付ける。
個人的には主として豊穣神マァルトを拝んでいるが、暁光帝のことは神々の上に置いて崇めているのだ。
そびえ立つ“壁”は超巨大ドラゴンの恐怖を如実に物語っている。何しろ、この鱗1枚が要塞や砦に匹敵する大きさなのだ。博物学者の間で大型幻獣を分類するための基準となっているくらいである。
「まさか、この歳になって暁の女帝様が降りてくるとは思いませんでした…上手くすれば彼女に遭うことなく往生できるかと夢見ていましたが……」
過ぎた願いではなかったはずと宰相は当惑する。
広大な版図を支配するオルジア帝国だ。任期中に降りてしまった暁光帝に関わる宰相も珍しくはない。だが、幸運に恵まれている自分は免れ得るのではないかと期待していた。
けれども、もう駄目だ。
『暁光帝、降りる』の一方が瓦礫街リュッダより伝えられてしまったのだから。
碧中海の覇権を争う強国の1つとしてかの超巨大ドラゴンは見過ごすわけにはいかない。
否、無視できない。
現在、農業革命による人口の増加とそれに伴って始まった列強の軍事力の拡大、そして、魔法技術の進歩が大きな変革をもたらしつつある。
非常にデリケートな世界情勢と言わざるを得ない。
そんな時、碧中海のど真ん中に暁の女帝様が降り立ったのだ。
暁光帝に国家としてどう対処するのか、今からそれを決めねばならないのだ。
「政治家の仕事は決断し、責任を取ることですからね」
宰相は早々に諦めている。
大帝国の独裁者だろうと、臣下の最高位だろうと、自分の仕事からは決して逃げられない。
「うむ。だが、政治は可能性の芸術であるぞ」
そして、皇帝の発言も青臭い若造の夢ではない。
これもまた事実なのだ。
数多ある可能性の中からたった1つを政治家が選択し、決定する。その結果が現実に反映し、国家国民を動かして新たな世界を創る。
それで、失敗したら責任を取らされるし、成功したら歴史に名が残って称賛される。
それが政治家だ。
だから、せめて選択して決断することは自分でやりたい。
もちろん、通常の業務なら誤魔化すことだってできる。大勢の意見を聞いて玉虫色の結論を下す、何とか時間を稼いで問題を先延ばしにして問題そのものが失せるのを待つ、秘密警察を動員して反対派を粛清する、普通ならそんな手段も取り得よう。
けれども、今回の相手は暁光帝なのだ。
誤魔化しはどれも通じそうにないのでここは政治家らしく仕事をしなければならない。
皇帝と宰相、2人して青褪めるのも無理からぬこと言えよう。
「もっとも、女帝様はたしかに恐ろしゅうございますが……」
「うむ。我が帝国の至宝よ」
2人はしみじみと“壁”を眺める。
それは只、大きくて美しい、見栄えがいいだけの宝物ではない。
戦をすることなく、数多の人々が、数多の国々が帝国に頭を垂れた理由がこれだ。
暁光帝の威光が眩しかったから誰もが控えたのだ。
皇帝は人間の身でありながら暁の女帝様からその鱗を直々に賜ったのだ、と。
だから、帝国には敵わない、と。
神々ですらその名を唱えることをはばかって“彼女”としか呼ばない、超巨大ドラゴン暁光帝が認めた国なのだ、と。
多くが戦わずに従った。
戦争というものは勝ち目があるから始めるものなのだ。
その点、暁光帝の鱗は強烈な説得力を持つ。
恐れ知らずの豪胆な人物も。
強力な軍隊で周辺諸国を圧倒する軍事大国も。
暴力に重きを置く者ほどこの鱗を見てうろたえた。
「我らが国宝は本当に効きますからな」
宝物庫に連なる、この閲覧場に宰相は国賓を招く。そして、好きなように“壁”を攻撃させてやる。武器だろうが、魔法だろうが、道具だろうが、何でもありだ。
やってみれば思い知る。
何をしようと人間では髪の毛一筋の傷も付けられない。自慢の暴力が全く効かず、どれほど自分が無力なのか、国賓達は思い知らされる。
これぞ正真正銘、暁光帝が縁の品である。
心の奥底まで思い知るのだ。
そして、彼女の御前では獣も人間も神も等しく無意味なのだと改めて理解させられ、心胆寒からしめる。
女帝様の鱗を賜ったオルジア皇帝に弓を引いたところで勝ち目がない。そう考えられたおかげで回避された戦争は幾つあるのだろうか。それこそ手足の指をどれだけ折っても数え切れまい。
「あの日、全てが終わった。しかし、その破滅から新しいものが生まれて全てが始まったのだ……」
皇帝は目をつむり、静かに想像を巡らせる。
数百年前、大いなる天変地異が起きた激動の時代へ。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
最近、インターネット小説投稿サイトは賑わしいことで、小生も大変嬉しく思っております(^o^)
数多くの魅力的な作品が多数、拝読できまして。
この間も……
異世界転生した乙女が美少女と出会って。
恋愛の苦手な乙女が恥ずかしがっても!
美少女は強引に乙女を押し倒して無理やり唇を重ね………
木漏れ日の下、柔らかな乙女の唇に水密桃のような美少女の唇が触れて、甘やかな吐息が漏れる………
キャッキャウフフ&百合ん百合ん☆
やったー!
これだよ、これ!
こ〜ゆ〜のが読みたかったんだよ!
これぞ、千載一遇?
意外と小生が好みのシチュエーションって描かれないんですよね〜
もうこれだけでご飯3杯いけます!
さぁ、再読しましょう、飽きるまで。
飽きたら仕方ありません。自作に取り掛かって…………
精悍な皇帝(ピーター・カッシング似のおっさん)と長身で冷酷そうな宰相(クリストファー・リー似のおっさん)が瓦礫街リュッダと暁光帝を巡る国際情勢について密談します。
やがて、迫りくる世界の危機におののきながら!
さぁ、みんな、寄っといで!
かっけぇおっさんと渋いおっさんのお話だよ!
安心して! 絶対、面白いから!!!
…
……
………
うん、まずいわ、これwww
インターネット小説投稿サイト向け作品としていろいろやべぇwwww
終わってる\(^o^)/
そもそも、【ガールズラブ】タグ付きの百合ファンタジー作品…のはず(^_^;)
いえ、本来は海水浴場もお話の続きになる予定だったんですけどね〜
幼女クレメンティーナが活躍して、浜辺に危機が訪れて…どったん、ばったん、大騒ぎ!!…のはずだったんですが、7割方そういうのを描いてから……
「う〜ん…普通のバトルが続くのもなぁ」と心変わり。
以前から温めていた周辺諸国の反応を描写しておきたくなったのです。
美少女は…あまり、いや、ほとんど出てきませんが、何とか面白くしますので(汗)
乞う、ご期待!




