暁光帝のお友達を紹介しましょう。みんな、とても個性的なので一緒に遊ぶのも大変です(^_^;)
お城での凶事も起きてしまったことは仕方がありません。
博物学者ビョルンはエルフのナンシーに請われて孤高の八龍について説明をはじめました。
それはあまりに特殊なので冒険者からもほとんど知られていない、どマニアックなドラゴンなのです。
さぁ、どんなドラゴンが語られるのでしょう……
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
孤高の八龍は山よりも巨大なドラゴンである。
そのとてつもない巨体を見れば一目で他の竜種と区別できる。また、8頭の全てが金属光沢に輝く美しい鱗を持つ。もっとも、鱗については他の竜種もそういう鱗を持つことがあるので必ずしも固有の特徴とは言えない。
孤高の八龍の魔力は余裕で神々をも圧倒し、その怪力は少し暴れるだけでもたやすく地形を変えてしまう。
大変幸福なことに、暁光帝を除く7頭は皆、決まった縄張りを持ち、外に関心を持たず、そこから出て来ることもめったにない。
非常に知能が高く、それぞれが魔法や学問の研究を嗜むらしい。
その高い知能から人語を解すると思われるものの、人間との交流は稀。人間の呼びかけに応えたこともほとんどない。
その威容から“この世の真の支配者”と恐れられるが、人間も他の幻獣も統治した例はない。
また、全てのドラゴンの頂点に立つとも言われ、実際にドラゴン達から崇拝されてはいるようだ。しかし、竜種を率いて何がしかの行動に出たこともない。
“神殺し”の偉業により、神々からも非常に恐れられ、いずれの神からも近づかぬよう神託が降りている。
破滅の禁忌として恐れられる孤高の八龍だが、崇め奉る邪な集団の存在が確認されている。彼らは世界の破滅を願う、狂気に満ちたおぞましい邪教の集団でしばしば彼らの縄張りへ接近を試みている。
もっとも、相手にされたことはなく、孤高の八龍を呼ぶという教団の召喚魔法が成功したこともない。
彼らもまた拒まれたのである。
ことほど左様に孤高の八龍は孤高である。
とにかく孤高である。
何者にも関わらず、超然として、自分の縄張りにだけ関心を持つ。
しかし、一度、縄張りから出て来てしまえば甚大な災害をもたらすことは歴史が証明している。
暁光帝を除いても、孤高の八龍は途方もなく強大で、どうしようもない、恐るべき存在なのだ。
<<赤龍ルブルム>>
“猛きルブルム”。
殺戮と破壊の化身たる赤龍は暁光帝を除けば最も大きい。2対の足と1対の翼、曲がりくねった角を生やす、大きさ以外は典型的なドラゴンらしいドラゴンである。山よりも巨大で、金属光沢に輝く鱗は真紅、超高温の火炎ブレスを吐く。
また、金銀財宝を集めて隠し、溜め込む習性が確認されている。
人間には扱えない、特殊な“空間魔法”の研究に勤しんでいるようだ。
戦いを好み、同じ孤高の八龍の1頭である黒龍テネブリスをはじめ、巨人などと大規模な戦争を繰り返している。
溶岩のあふれる火山地帯に棲み、日々、戦いに明け暮れている、非常に危険で凶暴なドラゴンだ。
しかし、それだけ危険だとわかっているので近づく者がなく、人的な被害を出すことが少ない。自殺志願者は訪れる前に溶岩で焼け死んでしまうし。
縄張りを出ることもないから、周辺諸国から見て戦争の抑止力になっている面もある。
黒龍が攻めて来て龍の戦に勃発すると轟音が鳴り響き、周辺諸国が祭りを催す風習がある。
少なくとも、暁光帝よりはよほど人間の役に立つドラゴンなのだ。
<<黒龍テネブリス>>
“悪夢のテネブリス”。
悪夢の化身と恐れられる黒龍テネブリスは捻じくれた1対の角と単眼の異様な姿で知られる。漆黒の翼に足が生えたような身体からはドラゴンらしからぬ触手が伸びて蠢く。
黒く泡立つ酸性湖に棲み、腐食性ガスのドラゴンブレスを吐く。
しかも忌まわしい死霊魔法と闇の精霊魔法を研究しており、酸性湖の周囲には黒龍を慕う屍導師や吸血鬼など、高位のアンデッドモンスターがたむろしている。
周辺諸国がご機嫌伺いに罪人を檻に入れて差し出すので、彼らを実験材料にして精神を蝕む魔法も研究しているらしい。
夜な夜な、人間の心に侵入しておぞましい悪夢を見せると恐れられている。
また、ドラゴンらしく争いを好み、しばしば、赤龍ルブルムの縄張りに攻め込んでいる。
<<青龍カエルレア>>
“いと貴きカエルレア”。
敬われ崇められる青龍は2対の青く透き通った翼で飛ぶ超巨大な多頭龍である。
ダヴァノハウ大陸の西の海上、積乱雲の中に棲み、雲とともに飛ぶ。2対の丈夫な足を持つが、地上に降りることは稀で、人間との交流はさらに稀。
雷雲を好み、カエルレアが活動しているときは雲から雷が盛んに落ちる。
自由自在に天候を操り、地上に豪雨を降らせる。青龍が雷を落とした土地は肥えて作物が元気に育つので豊穣が約束される。
縄張りは海上だが、年に数回、定期的に巨大な積乱雲を運び、広大な砂漠地帯に雨季をもたらす。おかげで砂漠の真ん中に肥沃な草原が生まれ、闇妖精人族が暮らすようになった。そして、生まれた国家が“エーリュシオン”であり、彼らから“いと貴きカエルレア”と崇められるようになった。
ダークエルフの信仰対象なので研究が進んでおらず、謎も多い。
近年の研究では青龍のもたらす積乱雲にしばしば暁光帝が付き添う様子が確認されて周辺諸国に衝撃を与えた。
青龍とともに暁光帝も祀るべきかについてはエーリュシオン国内で現在も議論が続いている。
雷撃のドラゴンブレスを吐くと言われているが、地上に降りないので確認されたことない。
<<白龍ノヴァニクス>>
“麗しきノヴァニクス”。
二つ名の通り、白龍は美しい。孤高の八龍の中で最も小さく、行動も比較的おとなしめで、顔も可愛らしく見える。
山よりは大きいが。
鱗が輝く純白の羽毛に変化している特殊な龍である。角の代わりに美麗な羽根が3対、白鳥のような翼が1対ある。自由に動かせる尾はなく、長く優美な尾羽になっている。見る者を感動させる、非常に麗しいドラゴンだ。
北の大地、吹雪の吹き荒れる雪原に棲む。
聖魔法の研鑽に勤しみ、寒冷地の過酷な環境に棲む生物への影響を研究していると言われており、慈愛にあふれる聖なる竜として崇める宗教団体がある。
また、実際に遭難した人間を助けた例もしばしば報告されている。
強力な冷凍ブレスで縄張りの周辺に吹雪を引き起こして寒冷地を広げていたらしい。その結果、冷害が広がって多くの国家が滅びたという。
北方の大国が大軍を派遣したものの、吹雪で近寄ることも出来なかったが、それ以来、吹雪が弱まって寒冷地の拡大が止まった。人間の意向を酌んで、多少は対応してくれるようだ。
<<銀龍アージェンタ>>
“恐るべきアージェンタ”。
足のない、大蛇を思わせる巨大な龍で2対の翼を持ち、角はない。銀色の鱗が煌めき、非常に麗しい。
孤高の八龍としては珍しく社交的で金龍オーラムと暮らしている。アスタの口から銀龍の名が出なくても博物学者ビョルンから『実質的に8頭全部』と言われた理由である。
番なのか、番であればどちらが雌でどちらが雄なのか、それとも単に仲がいいだけなのか、いずれも不明。
金龍とともに高山の山脈を縄張りとし、これまた孤高の八龍としては珍しく、麓の国々を庇護下に置いている。もっとも、人間との交流はほとんどなく、国王らに何かを命じることもない。
銀龍のドラゴンブレスは病や傷を治す奇蹟をもたらすが、縄張りが広大であることもあり、探すことは難しい。
強化&弱化魔法の研究に勤しむ。銀龍の祝福を受けた冒険者が驚くべき腕力と頑丈さを授けられて英雄になったことがある。
金龍の失敗を案じて、尻拭いのため、稀に人間と関わることがある。
<<金龍オーラム>>
“遊び人の金龍さん”。
孤高の八龍としてもドラゴンとしても異色の中の異色。“歩く瑞兆”とありがたがられている。
曲がった角が1対あり、対の翼を広げる。金色に輝く巨大な龍であり、その豪華な威容は息を呑むほどに強烈だが、人好きのする表情を浮かべていて、どことなくおめでたい。
魔法の道具製作を嗜み、世界を揺るがすほどの強力なマジックアイテム、神器を数多く持つ。
孤高の八龍としては珍しく、人間とも積極的に関わる。人語こそ話さないものの、しばしば冒険者の前に現れるのだ。
そして、金龍は孤高の八龍の中では唯一、人間が勝てるドラゴンでもある。
常識的に考えて、人間が山よりも大きな超巨大ドラゴンに勝てるわけがない。
勝機は勝負の方法にある。
金龍オーラムは賭博師なのだ。しかも、あまり強くない。
時々、冒険者の前に現れては危機から救ったり、負傷を癒やしたり、そのついでに賭け事の勝負を挑んで来るのだ。多くの場合、サイコロ賭博や単純なカード遊びだが、負けると気前よく両手いっぱいの金貨をくれる。
その上、頭に血が上りやすいようで、勝負が乗ってくると賞品がグレードアップする。
金龍はありがたくて親しみやすい、大人気のドラゴン。冒険者にとって幸運そのものなのだ。
だが、縄張りが広大なので冒険者が探して出会うことは難しい。
だから、酒場や冒険者ギルドでその話が盛り上がり、金龍オーラムは暁光帝に次いで有名な幻獣になった。
そして、そのことが暁の女帝とは異なる、全く別の重大な問題を生じた。
強力なマジックアイテムを数多く所有し、博打が大好きで、しかも、あまり強くないドラゴンということは。
博打で負けて冒険者にその宝物を巻き上げられることもあるということなのだ。
世界をひっくり返すほどの強力なマジックアイテムを手に入れた人間が何をするのか。それが野心を持つ者の手に渡れば大変なことになる。
実際、神器が大陸各地を巻き込む大戦争の引き金になったことがある。
世界史に刻まれる大事件であった。
暁光帝に次いで有名なドラゴンは暁光帝に次いで甚大な被害をもたらす、非常に迷惑なドラゴンなのである。
ドラゴンブレスまでありがたい。金気ブレスは吹きかけた対象を黄金に変えてしまう。ギャンブルでイカサマを働いた詐欺師は黄金の像に変えられて国庫に納められるのが定番だ。
瑞兆を象徴するドラゴンらしく、人間に使えない運命魔法を研究しているようだ。金龍に祝福された冒険者はその後、思いがけない幸運に恵まれると噂されている。
また、あまりに強力なマジックアイテムが人間の手に渡って、地上を混乱させると番の銀龍アージェンタが現われて回収するらしい。
世界史に刻まれる大戦争の原因ともなった神器はいずれも没収されている。
<<金龍オーラム:備考/オニザク連盟>>
高山の山脈のふもとに点在する小国の集合体で、銀龍アージェンタと金龍の庇護下にある。おかげで、小国ながら千年以上の歴史があり、古来より独立を保っている。
軍隊を持たず、国王が血統で継がれない、人身売買が禁止されている、老若男女の権利が平等であるなど、独特の文化を多く持つ。
金龍の威光が強く、争いごとの多くが博打の勝敗で決着されるため、このような文化が発達した。
盟主は血統で継がれない。驚くべきことに23年に一度の盟主選定ギャンブル大会で決定される。
対外戦争、侵略戦争ですら、勝敗は将軍同士の博打で決まるので軍隊が存在しない。
勝負が博打で決まるため、古来より体力も武芸も意味を持たず、博打の度胸と運が尊ばれてきた。老若男女の平等もこの風習による。
人身売買の禁止はギャンブラーが生命や肉体を賭けることを止めさせたことから。これは死んだり、他人に隷属したりして博打ができなくなることを金龍が嫌ったことに由来する。
大きな勝負には金龍が現われて見届けることもある。その場合、イカサマや暴力の介入には厳しい罰が下され、詐欺師や乱暴者は金龍の金気ブレスで黄金像に変えられて国庫に納められる。
奇妙な風習や独特の文化が国際的な批判を受けるも、平和であり、腐敗していながらそれなりに政治がきちんと執り行われていることで国情が安定している。そのため、貿易の中継地としても、学術都市としても栄えている。
孤高の八龍の2頭が庇護下に置いているので、周辺諸国にとってオニザク連盟そのものが戦争の抑止力にもなっている。
もっとも、そのせいでそれらの反政府勢力が根城にすることも多く、国際的な非難を浴びている。
<<緑龍テアル>>
“おぞましきテアル”、または“緑の病魔大帝”。
アスタから“親友”と慕われる緑龍だが、ドラゴンの専門家の間では声を潜めて語られる。神々の託宣でも強く警戒を呼びかけられ、非常に忌避されている。
3対の足で泳ぎ、1対の翼で飛ぶ巨大な龍である。膨れた胴体と大きな口、一本角と並んで突き出す牙は凶相を示す。翼のある肥満のワニといったところか。
ダヴァノハウ大陸の東に浮かぶ孤島メスリエール、藻が繁茂するの緑瘴湖に棲み、普段は湖底に潜んでいる。
時々、緑龍は飛ぶ。そして、近づいた街でしばしば疫病が発生した。
やがて、テアルを呪う託宣に釣られて、人々も不吉と感じるようになった。
今や、緑龍がネズミの群れを率いる絵が広く知られるようになり、恐れられるようになっている。
何が好きなのか、何をしているのか、ドラゴンブレスはどうなのか、全てが謎。
メスリエールに暁光帝が訪れるので関わりが深いようだが、両者ともあまりに危険なので近づく者はいない。
<<天龍アストライアー>>
“暁光帝”、または“暁の女帝”。
いつの日にか、世界を喰らい滅ぼし尽くすであろう、最強にして最大のドラゴン。
とにかく二つ名が多く、“唯一無二の、大いなるアストライアー”とも呼ばれているが、これは光明教団と暗黒教団だけの尊称である。
孤高の八龍の中で唯一、独自の縄張りを持たず、世界中の空を放浪している。たまに地上に降りては偶然、そこにあった不幸な街や国を踏み潰して、何万、何十万人もの甚大な被害をもたらす。
地上に降りる理由は不明。
予測不能の天変地異であり、人間と交流することは稀である。
人魚や海魔女からわずかにもたらされる知見によれば、博物学の研究に勤しんでいるらしい。他には重力魔法や時間魔法などという、人間に使えない理不尽極まりない魔法を研究しているようだ。
エーテル颶風やドラゴンブレスの破滅の極光など、恐ろしい力を次々と振るい、神々を殺めて、地上から追い払った“神殺し”の偉業は有名。
他にも“暁光帝のマラソン”、“デティヨン海の悲劇”、“ドゥンキルヒンの悲劇”など、被害は枚挙に暇がない。
関わることそのものが破滅と同義。
それなのに今、現在、彼女はこの瓦礫街リュッダにいる。“アスタ”と名乗る、可愛らしい童女に人化して。
この現状は悪夢以外の何物でもない。
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説明を聞き終わってナンシーはため息が尽きない。
「はぁ……」
聞けば聞くほど、とんでもない化け物だと実感できた。
暁光帝だけでも世界を滅ぼせるのに、それに準じるか、同格の怪物が他に7頭もいるのだ。しかも、8頭は互いに仲が良く、交流を欠かさないらしい。
世界の脅威と恐れられる魔王よりも遥かに危険ではないか。
各地に配下の魔族を送り込んで動乱を引き起こしたり、陰謀を巡らせているものの、魔王の目的は只の世界征服に過ぎない。何代もかけて世界を脅かしてはいるが、逆に言えば何代かけても野望は果たせていないのである。
そもそも魔王の野望は世界を征服して暗黒教団の支配下に置くことであって、人類絶滅ではない。
ところが、孤高の八龍は世界から人類を駆除できるのだ。今すぐにでも。
やっていないのは人間に関心がないからに過ぎない。
隣のおっさんが庭木にはびこる地衣類に毛ほども興味がないのと同じ。関心がないから駆除しようとも思わない。おかげでウメノキゴケもモジゴケも庭木に張り付いて生きられるし、コケ類と間違われたままでいられる。
「ああ…あの娘に変なことを言われたわ。これについても博物学者に聞いてみたかったの」
ここまで考えて重要なことを思い出す。アスタがさり気なく語っていた友人同士の会話だ。
「アスタは『おまいの気持ちはルブルムとテネブリスがノヴァニクスを奪い合う気持ちに等しい』ってオーラムから注意されたんだって」
記憶している限り、もっとも正確な言い方を再現してみる。
この何ということもない会話の文言がビョルンに与えた影響は強烈だった。
「うぅぅぅ…あな、口惜しや……」
博物学者は天を仰いで滂沱の涙を流している。血の気の引いた顔は真っ白でどれだけ衝撃を受けたのかを如実に物語っている。
「えっ!? えっ!?」
ナンシーは唖然としてしまう。
どうして、たかが会話の文言を聞いてここまで博物学者が嘆くのか。
「あぁ…その一言でいろいろなことがわかったのですよ。孤高の八龍の関係…白龍の愛を取り合って赤龍と黒龍が争っていること、暁光帝が何者かに恋い焦がれていたこと、それを金龍が咎めたこと……ああ!」
ビョルンは噛み締めた唇から血を流している。
「これだけでも博物学の論文が10本は書ける! 学会の定説をひっくり返す大論文が! しかも、暁の女帝様ご本人の証言だ! 誰にも文句をつけようのない、完全無欠の論文だ! でもっ!!」
握りしめすぎて出血する拳を砂地に押し付けながら歯噛みする。
どうしようもない哀しみに駆られている。
「ああ、なるほどね」
ようやくナンシーにも理解できた。
自分がもたらした会話文には深い意味が込められていた。しかも、証言者が暁光帝である。疑いようのない事実として受け入れられる、物凄く重要な情報だ。
だが、公表できない。
公表するならば情報源も明かさねばならないから。
情報源は暁光帝。
今、暁の女帝様は可愛らしい童女に変化して瓦礫街リュッダを闊歩している。大地震や火山の大噴火を凌ぐ天変地異が地上にあって、いつ炸裂するのか、さっぱりわからないのだと告げねばならない。
できるわけがない。
碧中海の覇権を揺るがす情報であるし、当然、国際情勢も大混乱する。
何よりも。
暁の女帝を怒らせるだろう。
秘密を暴露されたのだから、当然だ。この瓦礫街リュッダが消し飛ばされるばかりか、それこそペッリャ半島そのものが消えて失くなってもおかしくない。
だから、これほどの情報を得ても発表できないのだ。
「それで…暁光帝が恋慕する相手はどなただったんで?」
ビョルンの疑問は当然だろう。
「わかんない。本人も忘れてたわ」
そして、答えられないナンシーである。
こればかりはどうしようもない。
自分が恋した相手を忘れるかものだろうか。しかし、相手はアスタ=暁光帝である。何十年前、何百年前かのことか、わからない。そもそも、彼女は人間と価値観を共有しない。恋愛の意味も大切さも違うのかもしれない。
「暁の女帝様が恋に目覚める…そんなことがまた起こるのか、未来永劫、恋しないのか、そんなことはわからないわ。それこそ神のみぞ知る、いや、龍のみぞ知る、よ。私達が考えるべきことは他にある」
エルフはあっさり諦める。
暁光帝の恋のお相手、ろくなものじゃないだろう。
わかってもどうしようもないし。
それより、今は目の前の童女だ。超巨大ドラゴン暁光帝が人化した童女がどう動くのか、それを見極めるべきだ。
「うん、まぁ、何はともあれ、今はこちらにおわす暁の女帝様ですね」
博物学者ビョルンは海岸で女の子にマッサージを施している童女アスタを見つめる。
これもマッサージの一環なのだろうか。自分の背丈よりも長い紫の金属線、煌めくロングヘアーが舞い踊って女の子の身体を弄っている。
暁光帝は常識で測れない。
今のこの様子だけでも『マッサージは指で身体を押すもの』という常識を覆している。時と場合によっては意思力で自由自在に動かせる髪の毛で患者の身体を刺したり突いたりするものなのだ。
意味不明である。
意味不明であるが、暁の女帝様がやっておられることなのだから何かしら理由があるのだろう。
それは計り知れないことである。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
ようやく8頭の話を掲載できました。
退屈でしたでしょうか(^_^;)
今回、小生の好みばかりです。
去年、物語を描こうと思った時、最初にキャラクター設定したのがこの8頭でした。
物書きの皆様方はそれぞれいろいろな、独自の描き方があるのでしょう。
小生の描き方は先ず、キャラクター設定です。
キャラを決めれば世界観が決まる、キャラと世界観が決まれば物語が動き出す……そんな感じです。
そして、キャラクター設定は先ず特所能力から!!
性格? 容姿? そんなモン、後々ww
小生がいつもの世界観“怪物楽土”は封印したので若干、変えました。
“魔法”には属性を設定しました。
あれれ? 違いはそれだけだったかな?
ああ、そうですね。他はほぼ同じです(^_^;)
けれども、“魔法”に属性を追加しただけでだいぶやりやすくなった…かな。
元の世界観“怪物楽土”では“特殊能力”って名称でしたっけ。
キャラクターも基本的に“幻獣”ではなく“怪物”でしたね。
“怪物”はわかりづらかったかもしれません。ドラゴンとか、キマイラとか、ミーノータウロスとか、わかりやすくて想像しやすいものではなく、全部、オリジナルでしたからね。
暁光帝は最初、今の設定よりも小さかったんですがいろいろプロットを積み上げていくと「やべぇ!小さすぎて事件が起きねー!」ってことで今の大きさになりました。
主人公、我らが暁光帝♀の設定が棲んだら次はヒロイン♀です。
こちらはけっこう簡単に決まりました。
後は他の仲間達を考えて。
ようやく孤高の八龍が決まりました(^o^)
しかし、出番がありません。
実は前の章<<暁光帝も木の芽時? 百合♀×♀強化キャンペーンです!>>の最終エピソードで金龍オーラムを出そうかなとも思ったのですが。
確実に面白くはなりそうでしたが、初期プロットからかけ離れてしまい物語が暴走しそうなので泣く泣く。
オーラムが出てくれば銀龍アージェンタも出番が得られて一気に物語の百合度が上がるってゆーメリットもありましたが。
肝心の暁光帝♀がいつまで経っても朴念仁ですしね〜
さて、そういうわけで次回は再び、悪党が登場して暁光帝に挑みます。
悪党…かな?
ええ、まぁ、大して悪いことを何もしなくても主人公を苛立たせたら悪党と言えるのではないでしょうか。
乞う、ご期待!




