暁光帝、商港区を見物する。たくましい巨人族がいっぱい…これは期待できそうですね♪
今日も観光、楽しいな。
超巨大ドラゴンが人化した童女アスタと豊満なエルフのナンシーは軍港区から桟橋を渡って商港区へ入りました。
貿易港では大勢の荷運び人夫が働いています。
今度は何が起きるのでしょうか。
お楽しみ下さい。
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軍港区を出たものの、自分達を監視していた怪しい男は見当たらず。放って置いてもいずれ後で見つかるからいいかという話になり、ナンシーとアスタの2人は東に向かい、港湾の施設が集中する埠頭にたどり着いた。
商港区である。
“瓦礫街リュッダ”の正式名称は“港湾都市リュッダ”だ。名前の通り、埠頭は立派である。とりわけ、この商港区はしっかりした岸壁が設えられ、喫水の深い帆船が並ぶ。広い臨港道路にはロバの牽く荷馬車が列を成し、貨物を運ぶ商人達の声がかまびすしい。
背後には見上げるような倉庫の群れが立ち並ぶ。
ここは貿易港。
ヴェズ朝オルジア帝国、ポイニクス連合ら、列強と碧中海の覇権を争いながらも、リュッダの街はそれら列強を含めた国々との交易によって莫大な利益を上げているのだ。
臨港道路が運河の内陸水運と連絡し、入って来た物資はペッリャ半島の中心部へ運ばれる。また、各地の交易品が同じく運河で運ばれ来て、この港から碧中海の各国に向かう。港は海運の位置的にも地政学的にも極めて重要な場所と言える。
海運の要衝であるリュッダ港が生み出す富を求めて数多の英雄が血を流した歴史があるからこそ、平和と繁栄を求めてリュッダ軍港区も大いに発展したものだ。
アスタが充実した戦いを楽しめたのもこの商港区が栄えたおかげとも言える。
自慢の施設である岸壁は海底を掘削して水深を確保している。おかげで喫水の深い交易用の大型帆船が直に接岸できるのだ。海中での掘削作業という、オーパーツじみた土木技術は瓦礫街リュッダの魔法工学の粋を極めたものであり、どれだけの資金と人材が投入されたのか、想像もつかない。
ここでは巨人族の人夫らが荷物の上げ下ろしをしている。巨人達は男女の別なく大柄でたくましい。ヒト族の男では胸元くらいしかないだろう。
中にはあのエルッキ十人隊長よりも大きな者もいる。もっとも、強化魔法は使えないようで、肉体の能力を魔法で底上げしている者はいない。
素の体力だけで大型帆船の貨物を運んでいる。
巨人達はいずれ劣らぬ、見事な肉体だ。長時間の労働に耐えるスタミナを支える脂肪と大量の荷物を抱えて運ぶ筋肉がバランスよく育まれている。戦う兵士とも、大地を耕す農夫とも違う、荷運び人夫の肉体である。
とりわけ、広背筋と大胸筋の発達具合が素晴らしい。
しかし、そのせいで。
「そんな……」
童女は膝を屈し、両手を地に着けていた。金属光沢に輝く紫色のロングヘアーが力なく大地に垂れている。
「えっ? えっ? アスタさん? どうしたんですか?」
ここまで落ち込んだ姿を見たことがない妖精人は驚いて駆け寄る。
「お…」
アスタは唇を噛みしめていた。小さな指が大地をえぐるほどに悔しがっている。
「おっぱいがない!!」
この世の終わりであるかのように、絶望の色を湛えて虹色の瞳が巨人労働者を見つめている。本来なら目を皿のようにして見入るであろう、リュッダ港の土木技術も無視して。
「あっ!」
ようやく理解したナンシーである。
巨人達は体力について性差に乏しい。ヒト族は男が身長や体重で女に勝ることが多いけれど、巨人族は大きな差が無い。むしろ、出産や授乳のために脂肪が着く分、体重は女性の方が重いくらいだ。もちろん、乳房の発達は著しく、ヒト族の女性よりも大きくなる傾向にある。
その彼らが荷運び人夫として存分に鍛えた結果が目の前の肉体である。とりわけ、よく発達した背筋と大胸筋は巨人女性の胸乳を引き締め、乳房を収縮させていた。
初夏だから薄手の布地だ。服の上からでもわかる、わずかな膨らみが大胸筋の上にちょこんと乗っている感じである。
「ないわぁー!」
血の叫び。
あまりにも耐え難い悲しみに胸が張り裂けそうだ。童女は滂沱の血涙を流して絶叫を上げる。
「あっ、その、えーっと……」
あわてるエルフ。
いや、瞬きや呼吸すら忘れているのに血涙は流しちゃうんだと当惑している。
それだけアスタの心理的な衝撃が大きかったと言うことだろう。
おそらく、大柄な巨人女性に会えると言うことで胸乳のサイズについても期待していたのだろう。
それが筋肉に搾り取られて縮んだ乳房を見て強烈なショックを受けたと思われる。
街の最高権力者と謁見しても、屈強な兵士達の殺気を浴びても、平然としていた童女がこれほどまでに動揺するとは。
いや、驚いている場合ではない。
目の前で落ち込んでいるのは世界を破滅させるほどに危険な超巨大ドラゴン、暁光帝が人化した童女だ。
この失望、否、絶望か。これに心を打ちのめされた暁の女帝様が暴れ出したら瓦礫街リュッダはお終いである。
何としても立ち直ってもらわねばならない。
「おっぱいの価値は大きさにあらず!」
ナンシーが叫んだ。
「真のオッパイマイスターがそんなことに一喜一憂するべきでしょうか!?」
あえて、声を荒げてみる。
我ながら『オッパイマイスターって何だよ?』との想いはあるが、今はこの、世界の危機を防がねばならぬ。
何としてでも。
だから、叫んだ。
全力で。
新たに文言も作った。
全ての知識と思考を搾りきって。
必死の努力の甲斐あってか。
「う…うん…そうだね…おっぱいに貴賤はない。ボクとしたことが忘れていたよ…そうだよ…大きさじゃないんだ……」
アスタは何とか立ち上がる。
しかし、何を見たのか。
「ふぉっぶ!」
ふらつき、再び、膝を屈してしまう。
「アスタさん!」
ナンシーは童女に肩を貸して何とか地に手を着かせないように踏ん張る。
今、目の前にいる、荷運び人夫の巨人女性は上半身裸だった。大柄だ。エルフ女性としては極ふつうの身長であるナンシーが彼女の臍くらいまでしかない。
その背中に担いだ荷物は大きく、ヒト族の男では運ぶことはおろか、その半分ですら持ち上げられないだろう。ロバの牽く荷車に乗せて運ぶほどの量だ。それを魔法なしの、自前の筋力だけで担いで運んでいるのだ。
凄まじい怪力である。
若く美しい女性だが、そこにあるべきはずの乳房はたくましく発達した大胸筋に搾り取られてわずかな突起に成り果てていた。
鍛錬の結果、彼女の乳房は萎み、歩くたびにピョコンピョコン寂しく揺れるだけの、しょんぼり小さな肉塊になってしまっていたのだ。
「はわぶふっ!」
余りにショッキングな映像に目を覆ってくずおれるアスタ。
今、負ってしまった心的ダメージは計り知れない。
これは酷い。酷すぎる。何たる仕打ちか。
リュッダ海軍の女性魔道師達が頭を角刈りにして戦っていたが、あれよりも酷い。
乙女の美しさも恥じらいも喪失してしまっている状態だ。
女性の尊厳そのものが奪われている。
これが人間のやることか。
せめて、上に何か着て欲しい。
胸を隠していれば目に入らない。その程度の配慮は当然、あってしかるべきであろう。
「あー…その…えーっと……」
ナンシーは絶句している。
港湾労働者などこんなものだ。とりわけ、怪力が売りの屈強な巨人達は肉体を鍛えすぎて男女の区別がつかなくなってしまっている。だから、女性が上半身裸でも気にしないのだ。
「許すまじ、大胸筋!」
アスタが怒りを露わにする。
豊満に実るはずだった乳房から脂肪を奪い取った筋肉に対して。
「えっ、その、えーっと、えーっと……」
怒りのポイントはわかったものの、何を言えばいいのかわからず、ナンシーは当惑する。
冒険者の中でも肉体派が唱える文言、『筋肉は裏切らない』を述べようかと思ったが、今、大胸筋に怒りを向ける童女に言っても仕方ないとあきらめる。
さて、何を語ろうかとためらっていたら。
「ん? お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
大柄な豚人が心配してくれている。
こちらも上半身は裸で赤銅色に日焼けした肌が健康的だ。筋骨隆々のたくましい逆三角形の肉体を披露してくれている。突き出た鼻面と下あごから伸びる立派な牙がいかにもという感じだ。輝く大きなハシバミ色の瞳が印象的で、オークとしてはさわやかな美形なのだろう。
「うぅん…お嬢ちゃん、目が真っ赤だぞ」
本気で心配してくれる。
いたいけな童女が目から血涙を流しているのだから、それは驚くのも当然であろう。
「う…うん…おっぱいがないんだよ。こんなに立派な女の人がたくさんいるのに……」
振り絞るように語るアスタ。ショックが大きすぎてまともに頭が回転しない。親切なオークに心中を吐露するだけである。
「そうか。まぁ、仕方ないなぁ。こういう仕事だから。オレ達に必要なのは乳じゃなくて筋肉だぜ」
困ったように語るオーク。
「かくいう俺も女だけど乳はないしなぁ」
キランと牙を煌めかせる。
「ええっ!?」
童女は目を見開く。
「ん?」
さわやかオークさんは童女の当惑を笑顔で迎えてくれる。
その声もさわやかだが、低音で、明らかに男の声だ。港湾労働者らしく、手もごつい。身体に余計な脂肪は付いておらず、たくましい巨人女性よりも更にゴツゴツしている。
そして、その胸は真っ平らでヒト族の男性のようだ。しかも、乳首がない。完全にツルツルである。
「あぁ…そっか」
アスタは静かに目を閉じる。
博物学の知識を動員すればすぐにわかるのだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
(・人・)マイスターだったり、(・人・)ソムリエールだったり、忙しい暁光帝です。
地名の固有名詞が増えてきてしまいました。
碧中海のほぼ中央に瓦礫街リュッダがあり、北東の荒れ地に広大なヴェズ朝オルジア帝国が、南東のダヴァノハウ大陸の沿岸にポイニクス連合があります。
書紀プロットでは余り出番がありませんけれど、歴史的にしばしば滅びるオルジア帝国は暁光帝とも浅からぬ縁があるので、ちょっと描いてみたいところですね。
今回は残念なパタゴン族の女性を眺めてから、オークと出会いました。
日本のファンタジー作品ではしばしばエロい展開、いや、エロい危機ですね。その辺に絡んでいんぐりもんぐりいやらしくもロマンティック(?)な展開に導入してくれる敵役のオーク族ですが、うちは残念ながらそういう展開になりません。
野蛮で暴力的なのは変わりませんが、じゃあ、そういう文化の中で違う気風を持って生まれてしまったらどうなるか。
ちょっと面白くありませんか(^o^)
さて、次はオークさんとの話です。
異なる文化、異なる境遇に暁光帝が挑みます。
お楽しみに〜




