暁光帝の死体蹴り☆ 舐めプじゃありません。残心と追い討ちはバトルの基本ですよ~
***作者から一言ご注意をば***
前々の一章をまるまるすっ飛ばして投稿してしまいました(>_<)
こちらは『暁光帝、苛立つ。ドラゴンを悩ませる人間! 細工は流々。仕上げを御覧じろ☆』の話の後の後になります。
***以上、よろしくおねがいします***
暁光帝vsリュッダ海軍の精鋭部隊はドラゴンの勝利に終わった……
いや、暁の女帝様に人間が勝てるわけないじゃんwww
何? 勝てると思ってたん? ゲラゲラゲラwww
まぁ、とりあえず、悪は斃れた。
このラスボス、生きてるけどw 意外としぶといw
でも、だいじょうぶ。勝って兜の緒を締める、暁光帝は残心を忘れません。
じゃ、追い討ちと行きましょうかねぇ♪
お楽しみ下さい。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
リュッダ海軍の幹部3人組はがっくり肩を落としていた。
アスタが十人隊長を倒したところで絶望していたが、精鋭部隊が上級の精霊魔法を準備して一気に盛り上がったものだ。これで絶対に勝てると思った。ところが、その直後、あっさり負けた。
まさに上げて落とす展開。
おかげで、おっさん3人組は真っ逆さま、今の気分はどん底である。
いや、エルフから紹介されたアスタの能力を測るという当初の目的は達成できた。
うん、底が知れない。
化け物じみて強ぇ!
いや、まんま化け物だわ。
そんな評価が下された。
あ、上限が視えてないから能力、測れてないわ。まったく。
おっさん達、3人の精神はガリゴリ削られて真っ暗である。
当初の予定では、精鋭部隊の4,5人が倒されてもその辺で息の上がった童女が降参して『ああ、よくがんばったね』『子供なのに強いね、キミは』で終わる目論見だったのだ。
あの条件ならさすがに負けることはなかろうと高をくくっていたのだが、予想はあっさり覆されてしまった。
リュッダ海軍の精鋭部隊が年端もいかない童女に負けたのである。
敵に一矢も報いずに。
惨敗である。
衝撃的な状況だ。
角刈り女性の魔道師3人組がファイアボールを撃った時はまさしく勝ったと思ったものだ。
ところが、恐るべき威力で知られる火炎の精霊魔法をまともに食らってもアスタが無傷だったのだ。
その上、四足で猛火の中から飛び出して、味方の魔道師を3人とも討ち取った。
しかも、指一本触れずに敵を倒すと宣言して、そのまま本当にファビオを倒してしまった。
アスタは。
10対1の不利を物ともせずに戦い。
自分は魔法を使えないが、相手は使い放題という劣勢で。
敵には小指でしか触れないという条件を加え。
開戦と同時に10数える間、動かず。
正々堂々、真っ正面から勝負した。
そして、リュッダ海軍の精鋭部隊に勝ったのだ。
精鋭部隊に面々はひとり残らず地面に伏している。
おめでとう。
だけど、こちら、軍幹部の3人組は全っ然おめでたくない。
面子も自尊心も丸つぶれ。
めちゃくちゃ不幸だ。
港湾都市リュッダの正規軍が子供1人に大敗を喫したわけで。
『まるでお話になりません』と突きつけられたに等しい。
軍幹部の立つ瀬は髪の毛一筋も残っていない。
「どーして!?」
「何で!?」
「上級魔道師3人がかりのファイアボール喰らってアスタさんは生きてるんですかっ!?」
軍幹部3人から悲鳴に近い質問が投げかけられる。
これに対して。
「いや、だって、アスタだし」
ナンシーは笑って肩をすくめる。
勝負が始まる前はもしかしたら勝てるかもと希望を抱いていた。全力ならあるいはとの、そんな想いから殺人依頼を出して金貨を配ることまでやってみた。
だが、やはり敵わなかった。
惨敗した。
うん。
当たり前だ。
相手はあの暁光帝なのだ。
よく考えたら、そもそも勝てるわけがない。
「ちゃんと服と下着は燃えてたでしょ」
ファイアボールはちゃんと命中した。
燃えるところは燃えて、アスタは裸に剥かれた。
それでいいではないか。
それ以上の何を望むのかと、エルフは視線を厳しくするのだった。
「む…むぅ……」
「言われてみれば確かに……」
「服を燃やせただけでも大金星なのか…彼我の戦力差はそれほどまでに……」
つぶやいてうつむくおっさん達である。
そんなわけはないのだが、幹部ら3人は納得させられてしまっていた。
アスタは最上級との呼び声も高い冒険者パーティー“紫陽花の鏡”の新メンバーである。それはこのくらいのことだってする……
……かもしれない。
よくわからないが、仕方がない。
もはや、この状況下、幹部3人組はそう考えるしかなかったのである。
しかし。
宣言どおりにチンピラ兵士を最後に倒したアスタであるけれども、その態度は立派とは言いにくい。
負けた兵士の前で踊っている全裸の童女が幹部らの目に映っていた。
「キミ、全っ然、駄目じゃん。ツマグロオオヨコバイよりも駄目じゃん☆」
童女が謎の半翅目を引き合いに出してまでチンピラ兵士ファビオを煽っている。
負かした相手を指差して蔑む姿を見て。
「ああ、何と大人気ない……」
つるつる頭のでっぷり太った副官が嘆く。
「アスタさんは子供なので大人気ある方がまずいだろう」
カイゼル髭のジョルダーノ司令官は子供らしいと肯定する。
「それにしてもファビオのことは言えませんね……」
ノミの心臓を持つ、小心者の百卒長が唸る。
「我々の完敗です。『ヒト族の男である。だから、亜人の女の子よりも優れている』という…我々にはどこか、そんな傲りがあったのかもしれません」
百卒長は素直に反省の弁を述べる。
「男だ、女だ、ヒト族だ、亜人だ、平民だ、貴族だと…生まれにあぐらをかいて、いつの間にやら、努力や研鑽を軽んじていたとしか……」
「むぅ…」
「それは…」
言われた通り、慢心があったのだろうか。敗軍の将である司令官も副官も臍を噛むしかない。
だが、どうすればいい。
相手はアスタだったのだ。
碧中海の覇権を巡って競う、列強の敵兵がアスタと同じことができるとはとても思えない。
軍隊は限られた予算に基づいて戦力を整えて、予想された戦いに対応すべく努める組織だ。予想外の、規格外の戦力に対応する余力はない。目の前で証明されたアスタの強さだが、こうして演習相手になってくれるくらいには味方である以上、それに対応する必要はない。
少なくとも『紫陽花の鏡メンバーのアスタという童女にボロ負けして悔しいからあの娘に勝つための予算をくれ』とは言えないのだ。
つまり、リュッダ海軍は年端もいかない童女に負けっぱなしということになる。
「「「はぁ〜…」」」
軍幹部3人組はため息を合わせる。
そんなところへアスタが帰ってきた。
「終わったよー」
喜色満面、上機嫌だ。気楽に声を掛けてくる。
全裸で。
「お疲れ様です。我がリュッダ海軍の精鋭部隊は如何でしたか?」
ナンシーは童女の活躍を労いつつ、評価が改まることを期待する。
問われて、アスタは少し考え。
「ツマグロオオヨコバイよりは強いけれど、ツマグロオオヨコバイよりは可愛くないね」
きちんと評価を下す。
残念ながら、戦う前と評価は変わっていない。
比較対象が謎の半翅目なのも変わっていない。
「そうですか……」
エルフは少しうつむいて唇を噛みしめる。
できれば、列強の海軍と比べてほしかったが、これは仕方あるまい。暁光帝から見れば百万の大軍も謎の半翅目も大して変わらないのだ。どちらも掠っただけで消し飛ぶ程度の存在なのだから。
それよりも重要なことがある。
「楽しめましたか?」
軍隊を戦力としてではなく、娯楽として測る。ひどい話だが、仕方あるまい。これもアスタから、すなわち暁光帝から見ての話なのだから。
「最っ高☆」
童女は小さな拳を握りしめて、満面の笑顔を浮かべる。
「全力で戦えた♪ 初めての体験だったよー」
金属光沢に輝く紫色のロングヘアーを身体の周囲に踊らせつつ、虹色の瞳を輝かせている。
よほど楽しかったらしい。
「それはよかった。そのうち、またやりましょう」
エルフは再戦の機会を約束する。
こちらも大変、機嫌が良い。
「…」
カイゼル髭のジョルダーノ司令官は悔しさに真っ赤になった。
「…」
つるつる頭のデブ副官はエルフの『またやりましょう』の一言を聞いて真っ青になった。
「…」
小心者の百卒長はアスタに勝てそうな精鋭部隊が思いつかず、真っ白になった。
笑顔のエルフと上機嫌の童女。
赤、青、白と顔色を3色に変えて、面白くも難しい顔をするリュッダ海軍幹部3人組とは対照的だ。
「喜んでいただけたようで私も嬉しい」
ナンシーは手を叩かんばかりに喜んだ。
実際のところ、この勝負はナンシーの勝ちである。
演習では負けたが目的は達した。
実は精鋭部隊がアスタに勝つ必要はなかったのである。勝ってくれれば、アスタを負かせてくれればなお良かったが、それはナンシーにとって勝利の必須条件ではない。
負かせれば童女が悔しがり、より強くリュッダ海軍と瓦礫街リュッダに興味を持ってもらえる。負かせなくてもいい勝負であれば童女の関心は惹けるだろう。
ここまでの行動はアスタ=暁光帝を楽しませられるか、どうか。それを見極めることこそがエルフの目的だったのだ。
今の、あるがままの瓦礫街リュッダを楽しんでもらえれば、ここを破壊するようなことは考えなくなるだろうという目論見であった。
碧中海で随一の繁栄する港湾都市であるが、暁の女帝から見れば吹けば飛ぶような街でもある。彼女の破滅の極光やエーテル颶風を食らったら間違いなく終わる。消滅だ。あとかたもなく消えて失せる。
女精霊や一角獣の曰く、『あの御方がくしゃみするだけで街が消し飛ぶ』、そんな状況を回避したかったわけだ。
エルフの願いは叶ったと言える。
童女はここを気に入ってくれたらしい。
少なくともアスタ=暁光帝はこの街のためにくしゃみを控えてくれるだろう。
「ホッ……」
一息吐いていたら、向こうから声が聞こえてきた。
「ぷぴー…ぷぴぃー…ぢくじょう、おばぇなんか…ぷぴー…でったいにやっづげでやどぅかだな…ぷぴーぷぴぃーぴぃー……」
間抜けな呼吸音に混ざって怨嗟の言葉が発せられている。
「あーはっはっはっ! 定命の者が何を言うかと思えば! 無駄、無駄!」
腰の手を当てて哄笑する童女。
「死すべき定めの人の子が! 何度かかって来ようと同じこと! すべて返り討ちにしてあげよう!」
上機嫌で言い返している。
全裸で。
いい加減、何かしら着るものを見つけてやらねばならないとナンシーは辺りを見回す。
「ん? どうして泣いているの?」
突然、アスタから問われて。
「えっ?」
顔に手を当てると頬に濡れた感触がある。
知らぬうちに涙を流していたようだ。
「ああ……」
理解した。
今、世界で初めて。
悠久の歴史の中で本当に初めて。
人間の恨みが暁光帝に届いたのだ。
貴重な世界初を実現したのがチンピラ兵士のしまらない言葉だというのは何ともはや。
それでも届いたことは間違いない。
ちゃんと暁光帝が返事をしてくれているのだから。
そのおかげで、千年の永きに渡って碧中海を漂っていた言葉が、今、消え失せた。
『おぐうぇっ! ぎおこぉてぇぇっ! うぉのれっ! 末代まで! 子々孫々に至るすべてを恨んで…おぶぐぇっ! 恨み尽くしとぅうぇぇぇっ! ぶぐぐふぉっ!!』
かつて、人類最強の艦隊を率いて暁の女帝に挑んだ男の恨みが、今、彼女に届いた。
「ようやく終わったのね……」
エルフは誰に聞かせるでもなくつぶやく。
大気の中から後ムツズ朝オルジア皇帝が残した呪いが消えてゆく。
それはいにしえの時代、世界の命運を賭けて戦った男達の執念だった。
その恨みは暁光帝に届かず、さまよい、自身の子々孫々を縛って碧中海の覇権をひたすらに争わせた、激情の残滓。
それが晴れたわけではないが、ようやく届いた。
少なくとも無視されたわけではない。
こうしてアスタが返事してくれたのだ。
「んー? 何が終わったの?」
童女は可愛らしく首を傾げている。
「いえ、何でも…まぁ、大昔の恨み言ですわ」
ナンシーは微笑む。
アスタは自分が人類の艦隊を滅ぼしたことに気づいてすらいないのだ。
咎める気にもならない。
オルジア皇帝の艦隊もオークの大軍も暁の女帝には毛の一筋ほどの傷も負わせられなかった。
ところが今、チンピラ兵士のファビオが彼女を苛立たせ、振り向かせている。
「ふふふ……」
口角が緩むのを止められない。
リュッダ海軍はたしかに恐るべき神殺しの怪物に振り向いてもらえたのだ。
人類で初めて存在に気づいてもらえたのだ。
これぞ、大金星と言える。
「ふぅん、恨み言ねぇ…さっさと晴らさせてあげた方がいいよ」
童女はまたしても首を傾げる。
エルフが泣くほど喜んでいる。誰が何を恨んでいたのやら、さっぱりわからないけれども、けっこうなことだ。
輝く虹色の瞳が彼方の瓦礫街を見つめている。
次なる遊びを期待して。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
勝負の決着がつきました。
海軍本部の観光も終わりです(^∇^)
我らが暁光帝も楽しんでいただけたようで♪
小生としては肝心のガールズラブ要素がスッカスカなのだけが心残りですが(ToT)
設定した美少女&美女キャラは1人を除いて全員が女性同性愛者なんですけどね。
肝心の暁光帝が恋愛方面に疎いので全くそっち系にお話が進みません(>_<)
さて、これにて海軍基地訪問編はお終いで、書きためておいた分も一通り公開できました。
また、しばらく執筆に勤しむことにします。
次回は2人が海水浴場に行きます。
暁光帝、全裸ですしねw そのまま泳げますし、おすし☆
いや、さすがに何か着てもらいましょう。
水着回です☆
お楽しみに〜




